冨山 このクルマに何が付いていて、どういう機能だったかを追いかけるのが大変。特に難しいのがディーラーオプションで、そこはしっかり管理しなけばいけません。

小沢 でもある意味、クルマを小まめにアップデートするっていう手法は現代的なのかもしれません。やるほうは大変ですけど、スマートフォン(スマホ)だってそうじゃないですか。iPhoneなんて1年ぐらいで7とか8とか新しいのが出るし、そうでなくとも頻繁にアプリがアップデートされて進化していく。

冨山 そうなんです。商品力は通常時間と共に相対的に落ちていき、そこでたいてい「値引き」が始まります。

小沢 そうか。そういう意味では今のマツダのやり過ぎアップデート戦略は狙いにあってるんですね。最近マツダが取っている「値引きをしない」という戦略に。

冨山 値引きをしないで売るので、お客様が手放されるときの下取り価格も高いまま。定価ビジネスのほうがいいことも多いんです。

小沢 頻繁改良作戦は自動車価値の安定にもつながるわけだ。

冨山 下取り価格が高いということは安心して買い替えられることにもつながるわけで、例えば3年ずつ3回乗り換えるのと、1台を9年間使うのだと3年で乗り換えるほうが少ない負担で済むことにもなります。部品交換と車検代がかからないので。

小沢 そんなおいしい話があるんですか。でもそうしたら買い替えた後の中古車が困るじゃないですか。

富山 それはそれで適正価格で回っていけばいいんです。みんなハッピーですよ。

小沢 でも考えればこれを押し進めたものがサブスクリプションビジネス、つまり自動車定額サービスになるのかもしれないですね。保険代込み込みで月数万円を払ってれば、常にある程度新しいクルマに乗れて気持ちもいいという。

冨山 しかも、それができるメーカーは今のマツダだけなんです。

小沢 そうか。規模が小さいメーカーでしかこんな頻繁アップデートはできない。つまり定価販売ビジネスもできないと。

冨山 あとは頑張るだけです(笑)。

とみやま・みちお マツダ 商品本部 CX-3担当主査。1986年入社。開発管理部に配属された後、商品企画開発推進本部に移り、2011年にプログラム開発推進本部に異動。デミオの担当主査を担当。2013年からCX-3担当に
小沢コージ
 自動車からスクーターから時計まで斬るバラエティー自動車ジャーナリスト。連載は日経トレンディネット「ビューティフルカー」のほか、『ベストカー』『時計Begin』『MonoMax』『夕刊フジ』『週刊プレイボーイ』、不定期で『carview!』『VividCar』などに寄稿。著書に『クルマ界のすごい12人』(新潮新書)『車の運転が怖い人のためのドライブ上達読本』(宝島社)など。愛車はロールスロイス・コーニッシュクーペ、シティ・カブリオレなど。