御子ちゃんは友達もいないし、彼氏もできたことがなくて、お化けに『あなた、化粧っけないわね!』なんて言われちゃう女の子。でも、だからってひねくれているわけじゃなくて、こじらせてるんです(笑)。私も3日休みがあれば、3日家にいられるタイプ。でも御子ちゃんほど内弁慶ではないし、育ってきた環境も違うので、どうやって御子ちゃんに近づいていこうかな、寄り添っていこうかな、と常に考えながら演じました」

ちなみに幽霊は信じる?「ビビリなので信じないようにしてたんですけど、『ルームロンダリング』を撮ってからは、その人がエライザに話を聞いてほしくて、そばに来たのだとするなら、寄り添いたいなと初めて思いました。でも、そこでヘンな出方はしてほしくない。『わっ!』とか、むやみやたらとびっくりさせるのはやめてほしいです(笑)」

印象に残っている小道具は、御子が常に持ち歩いているアヒルのランプだという。子供の頃、御子の父親がプレゼントしてくれたという形見の品だ。

御子とジョセフィーヌ(C)2018「ルームロンダリング」製作委員会

「アヒルには名前がありまして、ジョセフィーヌと申します(笑)。ジョセフィーヌは、お化けが近づくと、光って教えてくれる。御子ちゃんにとっては唯一の仲間、家族みたいな存在です。

このジョセフィーヌが、かなり大きくてですね。衣装合わせのときも、『すごいサイズだなあ』とびっくりしてたんです。でも撮影が始まって、肌身離さず持つようになってからは、違和感がなくなって。現場でスチール(場面写真)を見せてもらったときに、『ずいぶん違和感なくアヒルを持ってるな』と自分でも驚きました(笑)。ハタから見るとヘンな子に見えるかもしれないですけど、持ってると安心しましたね。

そんな御子ちゃんが、幽霊と触れあい、外の世界の人たちとも関わるようになって。そこで見えてきた新しい世界の中で、新しい感情を知って、新しいものをつかんでいく。『ルームロンダリング』には、こじらせて悩んでいる女性や、もしかしたら男性も共感できるところがあると思っております。ぜひたくさんの方に見ていただきたいので、このコメントを、記事のどこかに入れ込んでいただけるとうれしいです(笑)」

「映画で着ている衣装は、衣装部の方々が色を染めて用意してくれました。部屋も、『御子ちゃんはここに住んでるんだな』と思える部屋を美術さんがつくってくださって。私はひたすら御子ちゃんのことを考えていればいいという環境を与えてくださって、すごく幸せでした」

本とギターに囲まれて、日々幸せです

ジョセフィーヌのように、エライザさんにも捨てられず、引っ越しのたびに次の部屋へ持っていくものはあるのだろうか。

「次がどんな物件であろうと、本棚はまるごと持っていきますね。長方形や正方形の枠がバランス良く組み合わさっているような木製の本棚なんですけど、そこに本を収めるのが好きなんです。だから家に帰って時間があるときは、本を並び替えたり、断捨離したり。けっこうな時間、本棚の前にいますね。ほかにも壁一面に四角い枠があって、そこにも全部本が並んでいる。部屋は、本だらけです(笑)」

雑誌『ダ・ヴィンチ』で書評の連載を行うなど、無類の本好きとして知られる。『ルームロンダリング』の主人公は、エライザさんの愛読書の一つ、ジョルジュ・サンドの『愛の妖精』のヒロイン・ファデットに通じるものがある(注・ファデットはフランスの農村地帯に育ったこじらせ系の野生少女で、双子の兄弟との出会いをきっかけに、女性として変貌を遂げていく)。

「ファデットのように、心を開いて、知らない世界に足を踏み入れる。その勇気を持った者が、本当の幸せをつかむことができると思いますし、そうであってほしいなと思います。

私自身も、そこは一番努力しているところですね。知らない世界に対して偏見を持ちがちな世の中だけれど、そこで足を止めることほど、もったいないことはないと思っていて。ファデットの生きざまが、自分の教科書になっているなと感じます。

最近、ありがたいことに、毎月、いろんな新刊が届くようになったんですよ。作家さんから手紙もいただいたりして、『キャー! この作家さんから手紙がっ!』って、もう、泣きそうなくらい喜んでます。

読書は私にとって大事な息抜きなので、忙しくても、毎日、何か読んでますね。本が好きだから、あふれても捨てたくないし売りたくない。それで後輩に配ったりしてるんですけど……そろそろ嫌われちゃうかな(笑)。

日々、本とギターに囲まれて、幸せです」

御子の部屋の本棚に並んだ本にも、映画の世界観が表れている。「悪夢みたいなんだけど、メルヘンの匂いもするような、『ルームロンダリング』に通じる小説が置かれています。ぜひみなさんに読んでみてほしいです」
池田エライザ
 1996年生まれ、福岡県出身。2009年、雑誌「ニコラ」のモデルオーディションでグランプリを獲得してモデルデビュー。15年、園子温監督の映画「みんな!エスパーだよ!」のヒロインに抜てきされ、女優の仕事が急増。17年に「一礼して、キス」で映画初主演、「ぼくは麻里のなか」でドラマ初主演を飾った。主な映画に「トリガール!」(17年)、「伊藤くんA to E」(18年)、「となりの怪物くん」(18年)など。「SUNNY 強い気持ち・強い愛」が8月31日、「億男」が10月19日に公開予定。リリー・フランキー氏と共に音楽番組のMCとしても活躍中。

『ルームロンダリング』

(C)2018「ルームロンダリング」製作委員会

18歳で天涯孤独になってしまった御子のもとに、母親の弟である悟郎が現れ、住居とアルバイトを用意してくれる。しかしそのバイトとは、他殺や自殺があった「事故物件」に住み、次の借り手にその事実を伝える報告義務を帳消しにするというもの。事故物件を転々とするなかで、御子は部屋に居座る幽霊が見えるようになり、やがて彼らの無念を晴らそうと奔走し始める。監督・片桐健滋 脚本・片桐健滋、梅本竜矢 出演・池田エライザ、オダギリジョー、渋川清彦、健太郎、光宗薫、木下隆行、つみきみほ、田口トモロヲ、渡辺えり 7月7日(土)全国ロードショー

(文 泊貴洋、写真 藤本和史)

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