マネー研究所

REIT投資の勘所

高値続く不動産 REIT、物件売却で分配金安定へ

日経マネー

2018/7/6

写真はイメージ=123RF
日経マネー

J-REIT価格は安定的な推移を続けている。株式市場では日経平均株価が2018年5月下旬に急落する局面もあったが、東証REIT指数への影響は少なかった。4月18日から5月末までの東証REIT指数は1700ポイントから1750ポイントのレンジで推移している。

安定的にJ-REIT価格が推移している中で、J-REITは長期的に分配金の安定性を高める施策を次々と打ち出している。合併で規模を拡大しポートフォリオの分散効果を高める動きが広がっていることや、財務面では借入金の長期化と固定金利化を進めていることは、これまでの連載で記載してきた。

さらに不動産価格の高騰を受けて、保有物件を売却してポートフォリオの構成を見直したり、物件売却益の一部を内部留保に回したりすることで分配金の安定性をより高める動きも盛んになっている。

例えば5月には、平和不動産リート投資法人(HFR)が名古屋に保有するオフィスビルを55億円強で売却した。当該物件の簿価は26億円程度であり売却益は28億円を超えるが、当期(2018年5月期)に売却益のうち25億円を内部留保するとしている。

J-REITは利益を原則内部留保できない仕組みになっているが、税制上の特例などを活用することで売却益の内部留保が可能になっている銘柄も多い。

注:投資口価格は2018年6月6日時点

HFRの場合は、税制特例以外に合併に伴う欠損金の発生も大きい。10年10月の合併時に被合併銘柄であったジャパン・シングルレジデンス投資法人が税務上の欠損金を抱えており、その欠損金を前期末(17年11月期)時点で44億円強承継しているため、この金額の範囲内で売却益の内部留保が可能となっている。

この物件はHFRのポートフォリオでは物件の収益性を示すNOI利回りが最も高い物件であった。しかしHFRが売却を選択した背景には、前述の税務上の欠損金を活用できる期限が20年5月期までとなっていることがあった。さらに売却価格が前期末の鑑定評価額49億円弱を大幅に上回っていることも大きかった。言い換えれば、不動産価格の高騰により鑑定価格以上の買値を提示する買い主が存在したため、HFRは分配金の安定性を高める内部留保が可能となったのだ。

■単純な規模拡大には注意を

不動産価格が高騰している今、単純な規模拡大ではなく長期的な分配金の安定性の観点から物件売買に動くJ-REITが増えている。この背景には、08年のリーマン・ショック前に規模拡大を追求した銘柄が、リーマン時の不動産市況悪化を受けて含み損失を抱えてしまい、運用が難しくなったという「歴史」がある。

J-REITは物件を長期保有する主体であり、単純な規模拡大を目指す銘柄には注意を払う必要がある。その意味で、HFRの売却事例は売却を通じて安定運用を目指す好例といえよう。

関大介
不動産証券化コンサルティング及び情報提供を行うアイビー総研代表。REIT情報に特化した「JAPAN-REIT.COM」(http://www.japan-reit.com/)を運営する。

[日経マネー2018年8月号の記事を再構成]

日経マネー 2018年 8 月号

著者 : 日経マネー編集部
出版 : 日経BP社
価格 : 750円 (税込み)


「住宅マネー」を知ることからはじめよう――東京レジデンスマーケット

マンション売却を成功に導く新時代のWeb査定
あなたは自宅の「現在価値」を知っていますか?

>> カンタンWeb査定を試す(無料)

「東京レジデンスマーケット」は日本経済新聞社が株式会社マンションマーケットと共同で運営する不動産メディアです

マネー研究所新着記事

ALL CHANNEL