墓まで持って行けないお金、どうすれば?
脚本家、中園ミホさん
墓場まで持っていけないお金の使い道に悩んでいます。共働きで子なし。介護もほぼなし。物欲がないし、節約はゲーム感覚で楽しい。知人にはバーンとごちそうするのでケチではないと思います。夫婦とも運動が趣味なので毎日ジムに通え、おいしいものを食べられるだけで幸せです。兄弟仲もいいしおいっ子、めいっ子たちは皆いい子だけど、棚ぼたで相続というのは違う気がします。ここぞという寄付先も思い浮かびません。(東京都・40代・女性)
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本当にまさしくぜいたくな悩みですね。でもきっと、ご夫婦で一生懸命働いてきたから、こういう豊かな暮らしがあるのでしょう。ここぞという寄付先とか、援助したい人たちを、一生かけてぜひ見つけてほしいと思います。誰か自分たちの豊かな財産を託したい人はいないかな、というように探してみる。そうやって人生のテーマとして世の中を見ると、違って見えるのではないでしょうか。慈善事業じゃなくてもいいですし。
科学的なDNAではなく、経済的支援を通じて未来に遺伝子を残す方法は「あり」と思います。たまたまこのご夫婦は子供というDNAは残さなかったけれど、2人が残したお金によって誰かが教育を受けられたり、たとえばピアニストを育てられたりするかもしれません。
おいっ子やめいっ子がいい子だけれど相続は違う、というのはその通り。意志をもって残したほうがいいですね。そんな気持ちで次世代に目を向けたら、これからの2人の人生は豊かになっていくのではないでしょうか。
どこに寄付するか考えるのは難儀かもしれませんが、夢のあるすてきなことですよね。今の生活も楽しそうですが、その先の世代につなげる何かができれば、さらに楽しいでしょう。
もし私だったら、とまじめに答えるならば、脚本家になりたいけれど、地方在住でなかなかその勉強ができない人を支援するでしょう。今、国立国会図書館で昔の脚本が全部読めるんですけれど、維持費がかかっているはずです。何かそういう役に立てればと思います。まあ、脚本家は稼ぎが悪いですから、ほとんど残せないですけれど。
向田邦子賞をいただいた時、ある方に冗談で「次は中園ミホ賞ですね」と言われましたが、それはもうあり得ない話です。私も仕事仲間にバーンとごちそうばかりしていないで、次世代の後輩たちに何か残すことはできないかと、反省をこめて考えさせられました。
[NIKKEIプラス1 2018年6月30日付]
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