水しぶきは覚悟 涼やか「裏見の滝」10選

NIKKEIプラス1

2018/7/1

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「裏」があるならのぞいてみたい。怒とうの滝の向こうも同じ。
水しぶきなんてなんのその、目の前に神秘の景色が広がる。
目利きが推す「裏見の滝」10選。夏の暑さもはじけ飛ぶ。

地殻変動が生む 荘厳な信仰の地

断崖の上から流れ落ちる滝を前にすると、地殻変動が生んだ地球のドラマを想起せずにはいられない。上位に入った九州の滝はいずれも、阿蘇山の大爆発など強大な地殻変動が生み出した。1位の鍋ケ滝の裏側には、大きな空間がぽっかりと口を開けている。約9万年前にさかのぼる地層の重なりが、今もはっきりと見て取れる。

滝はその荘厳な姿ゆえ、昔から信仰の対象にもなってきた。4位の阿弥陀ケ滝は、白山信仰の修験道の地。7月には一般参加者による「みそぎ祭り」が行われる。3位の慈恩の滝には竜の伝説が残り、安産や開運の祈りの対象だった月待の滝(7位)は今、パワースポットとして人気を集める。

裏見の滝を訪れるなら、水しぶきを浴びるのは覚悟の上でのぞみたい。とはいえ、雨の後などは、滝裏の空間にも水が滴り落ちるので、雨具を着用した方が無難。足元は雨やコケで滑りやすくなるので、細心の注意を。集中豪雨などで遊歩道が通行止めになることもあるので、出かける前には、最新情報を確認したい。

1位 鍋ケ滝 890ポイント
幻想的な水のカーテン(熊本県小国町)

阿蘇山の外縁の森の中に、静かにたたずむ姿は幻想的。優しく落ちる滝に木漏れ日がきらめき、苔(こけ)むす岩が鮮やかさを増す。まるで不思議の国に迷い込んだかのようだ。高さは10メートルと小ぶりだが、滝の落ち口は水平に20メートル広がっている。「幅広に落ちる姿はまさに水のカーテン」(大塚貴之さん)だ。お茶のテレビCMにも登場し、一気に知名度が上がった。

優雅な姿と対照的に、成り立ちは荒々しい。約9万年前、阿蘇の巨大噴火の火砕流がこの地にも達し、川が流れていた砂礫(されき)の層を覆いつくした。熱と圧力で固まった岩盤に断層ができ、滝が誕生した。その後長い時間をかけて、岩盤下の柔らかい地層が水で削られ、裏側に大きな空間が生まれたという。

「深く大きくえぐられていて、軽く40~50人は入れそうなスペースがある。裏側からみる景観は幻想的」(佐竹敦さん)。「フォトジェニック度満点の美しい滝。滝裏に入ると白いレースカーテンがかかったような空間が広がる」(坂崎絢子さん)。そのカーテン越しに、周囲の森が四季折々の姿を見せる。大人300円、小中学生150円。

(1)JR阿蘇駅などから車(2)小国町商工観光係(電話0967・46・2113)

2位 雷滝 740ポイント
轟音とどろく豪快な風景(長野県高山村)

長野と群馬の県境に近い山中で、「その名のとおり、雷鳴のような轟(ごう)音をとどろかせている」(森本さん)。松川渓谷に注ぐ水を集めた滝は水量が豊富で豪快そのものだ。「春は新緑、夏は清涼、秋は紅葉が楽しめる」(富本一幸さん)

この滝は裏見から始まる。遊歩道を進むと側面から裏側に回り込む。岩壁が屋根の庇(ひさし)のようにえぐられ、「川水が飛び出してくるさまや、落下していく水の粒、滝つぼから上がる水煙などの様子が位置を変えながら見られる」(加藤庸二さん)。

遊歩道には「滑落防止の柵も設けられているが、ぬれるので雨がっぱか傘を持って行くのがお薦め」(枝沢茂樹さん)。さらに進めば、落差30メートルの滝が全貌を現す。冬期閉鎖。

(1)長野電鉄須坂駅から車(2)信州高山温泉郷観光協会(電話026・242・1122)

3位 慈恩の滝 570ポイント
昇り竜の伝説に思いはせ(大分県日田市、玖珠町)

圧倒的な水量で突き刺さる怒とうの滝。滝つぼに近づくと、ひんやりした風が巻き上がってくる。「2段の滝は男性的で爽快」(森本泰弘さん)。上下段を合わせ落差約30メートルの滝には昇り竜の伝説が残る。滝に住む竜の命を旅の僧が助けた恩返しに、天に昇り土地を潤す雨水を降らせたという。

裏見も迫力満点。「遊歩道が整備され、滝の魅力を知るにはうってつけ」(鈴木厳朗さん)。地元の人によれば「夏の午後4時ごろ、滝つぼに虹がかかることがある」。日没から2時間は緑色のライトで浮かび上がる。

(1)JR杉河内駅から徒歩(2)玖珠町観光協会(電話0973・72・1313)

4位 阿弥陀ケ滝 530ポイント
北斎も絵にした歴史ある滝(岐阜県郡上市)

落差60メートル。滝つぼの周囲は開けた空間になっていて、「滝を中心にグルッと一周して、滝をすべての角度から眺められる」(佐竹さん)。遊歩道も整備され、安心して楽しめる。

「葛飾北斎が浮世絵で描いたこともある歴史ある滝」(富本さん)。滝裏には洞窟があり、阿弥陀さまが現れたという伝説が残る。「参道から1歩踏み入れると、俗世間から隔離された落ち着いた環境となる。滝周辺は、日も射さず非常に幻想的な雰囲気を醸し出す」(鈴木さん)

(1)長良川鉄道北濃駅から車(2)白鳥観光協会(電話0575・82・5900)

5位 龍頭が滝 460ポイント
異世界に迷い込んだような洞窟(島根県雲南市)

中国地方を代表する名瀑。落差40メートルの雄滝と、同30メートルの雌滝からなり、激しく流れ落ちる様は、まるで昇天する竜のように見える。「岩盤の表情や水量など全体的に勇ましい雰囲気。雲南の濃い自然が味わえる」(坂崎さん)

裏見ができるのは雄滝。大きな洞窟があり、滝観音がまつられている。「まるで霊場であるかのような独特で厳かな雰囲気」(佐竹さん)。「大きく開いた竜の口内に入り込んだ錯覚に陥る。裏見はどこか異世界に迷い込んだかのようで神秘的である」(林俊宏さん)

(1)JR木次駅から車(2)雲南市観光協会(電話0854・42・9770)

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