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合戦地の市、明治のそば店、ウナギの洗い 中京食三昧

ふるさと 食の横道(1) 東三河編

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NIKKEI STYLE

宮崎県川南町、岩手県雫石町、愛知県新城市のものが「日本三大軽トラ市」と呼ばれている。市場好き。朝市好き。そして軽トラ市好き。ちょうど5月の第4日曜日に新城市で「しんしろ軽トラ市 のんほいルロット」が開かれる。行くべし。

新城市は歴史愛好家にとっては外せない場所だ。この地で天正3(1575)年、織田・徳川連合軍と武田勝頼軍合わせて5万を超す将兵が激突し、戦国の雄、武田氏滅亡のきっかけとなった戦いが繰り広げられたからだ。

2016年5月21日の午後に豊橋から飯田線に乗って新城に着く。駅からタクシーで設楽原(したらがはら)に直行した。細い川が流れていて一方の岸に馬防柵が復元されている。対岸から武田の騎馬軍団が突撃する。柵が騎馬の突進を阻み、織田・徳川連合軍の大量の鉄砲が火を噴く。「長篠合戦図屏風」に描かれたような戦闘が6時間も続いたという。

決戦の前哨戦となったのが長篠城の攻防。天守閣は失われたが、城跡は深い緑に包まれて残っている。武田勝頼が本陣を構えた寺院の先に小高い山があって、長篠城を見張った櫓(やぐら)が復元されている。そこまで登ったキッチンミノルさんは、戻って来て「山と山の間に長篠城がはっきり見えます」と言った。

死者を葬った場所には慰霊の塔が立ち、いまも住民によってお盆の時期に供養のための「火おんどり」という火祭りが営まれている。長篠・設楽原の戦いは遠い昔のことではあるけれど、新城の人々にとっては先祖が直接巻き込まれた戦であって、その記憶は消えずに引き継がれている。

翌朝、軽トラ市の会場に行く。長さ500メートルの商店街を通行止めにして、軽トラックや軽自動車を使った77店が思い思いの品を並べている。トマトが赤い。メロンが黄金のように輝いている。五平餅が香ばしい。茶葉は「しんしろ茶」。浜名湖産のうなぎ白焼きが2匹パックで2500円から2700円。夏ミカンは3個100円。特大シフォンケーキには900円の値札がついている。

中に精米を売る店があった。「龍の瞳」という銘柄の米が目に付いた。「コシヒカリの突然変異種です。米粒が大きいのが特徴です」。500円で小袋に入った龍の瞳を買う。「洗いすぎないように。漬け置きは不要。炊けたらすぐに炊飯器のスイッチを切ってください」と店の人が教えてくれた。どんなご飯が炊けるのだろう。楽しみだ。

名古屋から来た80歳だという店主は話が面白い。リンゴジュースを試飲させ、メロンを切ってくれ、2種類の蜂蜜をなめさせてくれた。トークに負けて国産蜂蜜を買う。

自家焙煎のコーヒーを売るキッチンカーがあったので、アイスコーヒーを買って日陰で飲む。苦みと酸味のバランスがいい。

江戸時代の新城は伊那街道の主要な町で、信州から馬による様々な荷が集まった。その荷を豊川の水運で豊橋へと運び、反対のルートをたどって塩などが信州へと向かった。水運と陸運の結節点であった新城は山間にある川の港として発展し、大店が立ち並んで繁栄した。

しかし気がつけば多くの地方都市と同じく、中心商店街はシャッターばかりが目立つようになり、少しでも活気を取り戻そうと、市と商工会の共催で7年前に始まったのが軽トラ市だ。今回が75回目。平均すると2000人ほどの来場者がある。月に1度だけだが、商店街に人があふれ笑顔が広がる。

お昼近くになって南の豊川に向かった。折から市民祭りの「おいでん祭」が開かれていて、こちらも街中に人があふれていた。そのにぎわいを聞きながら、豊川稲荷の山門前にある「門前そば 山彦」で豊川名物のいなり寿司とうどんでお昼にする。ここのいなり寿司の皮がいい色をしている。明治33年の開店以来、特注の醤油(しょうゆ)を使い続けている。多少の変化はあったが、ほぼ明治の味だ。中の五目ご飯と助け合って、家庭では作れない味わいになっている。

店で食べる人、お土産に買って帰る人が引きも切らない。いなり寿司は注文を受けてからその都度詰める。社長の山本芳世(ふさよ)さんは「帰省した人がよく買いに来ます。出かけるとき、先方へのお土産にする人が増えました」と話してくれた。

食後、豊川稲荷の境内に入る。ここはお稲荷さんを祭る神社だと思っている人がいるかも知れないが、歴とした「妙厳寺」という曹洞宗のお寺だ。しかも不思議なお寺なのだ。

山門を入ると大きな鳥居がある。寺院なのに鳥居だから「あれっ」と思う。2つ目の鳥居の先に本殿があって、これが寺院の本殿そのものなので、また「あれっ」。しめ縄も鈴もない。だから参拝するときかしわ手は打たない。

境内の奥に「霊狐塚(れいこづか)」がある。石でできた狐の置物が800体も並べてある。願をかけた人が満願成就のお礼に安置したものという。そろって赤い布を首からさげているが、よく見ると同じ顔をしたものはない。思い思いの方角を向いた大小様々な狐が、木々の緑の下に無言で鎮座している。時とともに木漏れ日が動き、情景が微妙に変化する。パワースポットとして知られる場所だ。

夕方になった。参道の入り口近くにあるうなぎの店「京楽軒」に入った。東京のうなぎもいいが、最近は中京圏のうなぎを見直している。腹開きで蒸さない。たれは濃口ではなくたまり醤油を使う。ざらめを加えるから、焼くと皮目が薄い飴で覆われたようになってぱりっとする。これでないと「ひつまぶし」やうなぎ茶漬けができない。

京楽軒では3代目の松山浩久さんが、うなぎをさばいている。「うなぎを先に切ってから串に刺すんです」と言った。骨せんべいと食前酒。続いてたっぷりの肝焼きが登場した。これは日本酒でなきゃ。冷えた純米酒を頼む。

次が「うなぎの洗い」。湯通ししたうなぎをからし味噌でいただく。珍しいが、大いに「あり」の一品だ。続いて白焼き。噛めば「ぱりっ」と音がするのではないかというほどぱりぱりの皮。その後に柔らかな身の味。冷酒がすすむ。

「うざく」が出て来た。キュウリと並んだうなぎは、ざっくりと切られていて、ここまでで「うなぎを食った」という感じになる。そこにだめ押しのかば焼きとご飯だ。肝吸い、お新香を援軍にして頑張って食べる。最後にデザートのメロンが出て「うなぎづくしコース」が終わるのだが、これで4400円だ。うなぎ2匹、あるいはそれ以上使っていそうなのにこの値段。東京だといくらになるのだろう。

うなぎは同じ産地でも季節によって味が変わるが、その夜のうなぎは脂っこくなくて助かった。とはいえコクは十分で、店の実力を物語っていた。

「うなぎは東京のものに限る」とお思いの方、そう言わずに一度、愛知や岐阜、三重のうなぎもご賞味あれ。

文=野瀬泰申 写真=キッチンミノル

[日経回廊 2016年6月発行号の記事を再構成]

*価格などは取材当時のものです

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