実際、アクティブ型の投信を顧客に提供することを業界は怠ってきた。弊社のコモンズ30ファンドがつみたてNISAの対象として選定されたとき、当面はインデックス型しか取り扱わないと採用を見送った販売会社もあった。
独立系運用会社も運用成績上位
しかし、肝心な運用成績はどうであろう。6月19日付の日経電子版の「つみたてNISA対象ファンドの成績(投信ランキング)」によると、5月末時点のつみたてNISAの対象投信の5カ月の運用成績は、鎌倉投信の結い2101とコモンズ30ファンドという独立系投信会社のアクティブ型投信がしっかりと上位5位内にランクインした。
おのおのの運用会社には独自の投資スタイルがあり、同じアクティブ型であっても、同じ相場環境であっても運用戦略は異なる。今回のランキングではあまり芳しくない相場環境の中、アクティブ型の強みを発揮できたのではないかと思われる。
例えば、コモンズ30ファンドは投資先企業を忙しく入れ替えることはしない。あくまでも持続的な価値創造の可能性がある企業を厳選して投資する。そして、投資先企業とは対話を通じてウィンウィンの関係を見いだす。一度投資したらじっくりと待つことより、短期的な相場動向に左右されず、安定した収益の確保をめざしている。
運用の世界では市場全体との連動性をβ(ベータ)、超過リターンをα(アルファ)と呼んだりする。その観点ではインデックス投信はβ型、アクティブ投信はα型といえる。
「α」と「β」で投信を選別する
αとβという側面から投信を選別するという考えは日本の運用業界ではあまり聞かないが、私が以前仕事として携わっていたヘッジファンド業界では基本中の基本である。
無論、ずっと相場が右上がりが続くという確信を持っているのであれば、β型のインデックス投信でいいかもしれない。しかし、つみたてNISAは期間20年の非課税制度だ。右上がりの展開を前提としない方が賢明だろう。
とりわけ、今年の不透明な相場展開ではインデックス投信のようなβ型では相場の変動をもろに受けてしまう。こうしたときはむしろ保有銘柄に特徴があるアクティブ投信のようなα型が重要だと考える。つまり、今年こそアクティブ投信の「出番」であり、それだけに真価が問われる年になるであろう。
前述したように、運用会社によって戦略が異なるのですべてのアクティブ型投信が成績を残せるとは限らないが、投資のひとつの選択肢としては十分検討に値すると思う。だからこそ、より多くのアクティブ投信をつみたてNISAのラインアップに入れてほしいのだ。
コモンズ投信会長。1961年生まれ。83年米テキサス大工学部卒。87年カリフォルニア大学ロサンゼルス校MBA経営大学院卒。JPモルガンなどを経て、2001年に独立し、07年コモンズ株式会社(現コモンズ投信)を創業、08年会長就任。著書に「渋沢栄一 100の金言」(日経ビジネス人文庫、2016年)など。