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10年後理想の自分になる 藤原和博流モードチェンジ

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日経ウーマンオンライン

オフ時間を上手に使って人生を充実させるためには、「今」をどのように変えていけばいいのでしょうか。戦略的な「モードチェンジ」を提唱している教育改革実践家の藤原和博さんに、「自分の人生」を生き抜くための三つの方法を伺いました。

視点を「世間」ではなく「自分」に定めることが大切

 理想の自分になるためには、人生の流れを変える戦略的な「モードチェンジ」が必要だと説く、教育改革実践家の藤原和博さん。じっくりと自分と向き合える『オフ時間』にこそ、モードチェンジのためのアクションを起こそうと話します。

「現状から脱却して『なりたい私』になるためには、これまでとは違う時間の使い方をする必要があります。今と同じ過ごし方をしていては、人生の流れは変わりません。戦略的にモードチェンジしたいのであれば、方法は大きく分けて三つ。

一つ目は、『自分の思いや悩みをノートや紙に書き出す』こと。まずは、ここから始めてみるのがいいでしょう。

悩みを書き出すと、頭の中にある漠然とした思いが可視化されます。すると思考がクリアになり、現状を冷静に分析できるようになるのです。また、自分の内面と向き合うことで、物事を考えるときの基準や視点を、『世間』ではなく『自分』に向けられるようにもなります」

このときに重要なのは、正直な思いを、交流サイト(SNS)ではなく「ノート」や「紙」に書くことだと藤原さんは言います。なぜ、SNSではダメなのでしょうか。

「SNSに書くと、嫌でも視点が『世間』に向いてしまいます。他人の私生活を気軽にのぞける半面、自分ものぞかれる立場になるため、知らず知らずのうちに、自分と他者を比較してしまうからです。

人に読まれることを意識して書き、他者からの評価を気にして生きている限り、モードチェンジはできません。オフ時間を使って自分と向き合い、これまでとは違う生き方を決断するためには、視点を『世間』ではなく『自分』に定めることが大切なのです」

まずは書くことで「独自の幸福論」の追求を

 では、なぜ私たちは、視点が「自分」ではなく「世間」に向きがちなのでしょうか。その理由は、私たちが生きてきた時代の流れとも関係があるそうです。

「1997年を境に、時代は大きく変化しました。この年に、バブルの象徴でもある山一証券が倒産。北海道拓殖銀行などの大手金融機関の経営破綻もあかるみになり、時代は『成長社会』から『成熟社会』へと移り変わりました。

これらは、今から約20年前。現在30歳の方なら10歳、35歳なら15歳、39歳なら19歳の頃の出来事です。あまり意識したことはないかもしれませんが、多感な10代の頃に、社会のあり方が大きく変わったのです。

97年までの『成長社会』の特徴を一言で言えば、『みんな一緒』の社会。良い学校に入り、良い会社に勤め、良い人と結婚して寿退社すれば、幸せになれる。『幸せの形』がハッキリと決められていて、その『正解』を追い求めて努力さえすれば、経済的な豊かさや人生の満足を手に入れられる。多くの人がそう思い、それに疑いを持たなかった時代です。

しかし、現代の『成熟社会』では、その『正解』が通用しません。価値観の多様化が進み、『みんな一緒』ではなく、『それぞれ一人ひとり』の社会に突入したからです。『成熟社会』においては、『正解の幸せ』などありません。『それぞれ一人ひとり』が自分の頭で考え、『独自の幸福論』を追求していかなければいけない時代です」

今の30代は、「みんな一緒の正解」に、「早く」「ちゃんと」到達できるような「いい子」に育つ教育を、家庭でも学校でも受けてきた人が多いのではないでしょうか。そのため、どうしても視点が「世間」に向きがちで、自分と向き合うことに苦手意識を持つ人も多いように思います。

ただ、今の自分を変え、「なりたい私」を実現したいと思うなら、まずは一歩踏み出すことが大切です。

「立ち止まっていても、答えは出ません。失敗したら、その都度『修正』すればいいのです。人生は長いのですから、『正解』にこだわることなく『修正』を繰り返して、『世間』ではなく『自分』が納得する答え――『納得解』を導き出していきましょう。

ノートや紙に自分の思いや悩みを書くと、どれだけ自分が『世間』に縛られているのか。『早く・ちゃんと・いい子』でいようとするあまり、どれほど身動きが取れなくなっているのか。自分を呪縛するものの正体が、少しずつ見えてくるようになります。八方美人のままでは分からなかった『自分の持ち味』が見えてくるはずなので、まずは『自分時間』を利用して、書くことを習慣化することをオススメします」

「病気」もモードチェンジのチャンス

 そして二つ目のモードチェンジの方法は、「病気を武器にする」こと。現代は、ストレス社会。不調やモヤモヤを抱えて苦しんでいるときこそ、人生の流れを変えるチャンスなんだそう。

「懸命に働いている皆さんの中には、もしかするとストレス性の病気を患っている人がいるかもしれません。もしくは、ある日突然、それまで張りつめていた糸がプツンと切れ、抑うつ症状に悩まされている人も少なくないと思います。私自身が、そうでした。30歳の時に、心身症の一種である『メニエール病』を発症したのです」

メニエール病は、耳の奥にある三半規管の異常によって、バランス障害が出る病気。ストレス過多によって引き起こされるといわれていて、激しい回転性のめまいや難聴、耳鳴りなどの症状に見舞われます。

「リクルートに入社してからの8年間、私は無我夢中で働き、トップ営業マンとなり、出世の階段を駆け上がっていました。新規事業を手掛ける営業部門で責任のある仕事を任され、結果も出し、全社のMVPまでもらっていた――。病気になったのは、そんな矢先の出来事でした。

症状はひとまず注射で抑えたものの、発症してからの5年間は、後遺症に悩まされる日々。午後になると集中力がなくなり、どうしても頭がボーッとしてしまう。思考がまとまらなくなり、そうなると当然、仕事にも影響が出てきます。しかし、努力や根性ではどうしようもない。

この病気をきっかけに、私は出世コースから降りる決断をしました。つまり、『みんな』が『正解』とする『幸せ』から、大きく外れる道を選んだのです」

藤原さんが病気になるまで働き続けていた理由の一つには、『早く・ちゃんと・いい子に』を求める「成長社会」の影響があったと言います。

「勉強していい大学に入り、いい成績や結果を出して昇進すれば、幸せになれる。そう教育されて生きてきて、その価値観に合う人間になろうと、私自身が望んで必死で働いてきました。

しかし、今にして思うと、病気は自分に対する警告だったのです。あのまま走り続けていたら、おそらく取り返しのつかないことになっていたでしょう」

「メニエール病によって、私は『早く・ちゃんと・いい子に』を実践できなくなりました。でも、病気になり出世コースから降りたことで、私は『自分の人生』を生きる道を選べた。心身の不調が、私にモードチェンジのチャンスを与えてくれたのです。

もしも今、『早く・ちゃんと・いい子に』ができなくなってしまっている人は、それが合図。今まで通りのやり方が通用しなくなったときにこそモードを変えて、『自分の人生』を生きる道を選びましょう。

誤解のないように言っておくと、私は『早く・ちゃんと・いい子に』を守っている人生を、否定したいわけではありません。ただ、あまりにもそれにとらわれて苦しいなら、少しだけ緩めてみてはどうでしょう。

例えば、『正解』を求める割合を減らして、自分が納得する『納得解』の割合を増やしてみるのです。今が正解9割・納得解1割なら、正解7割・納得解3割くらいまでに調整してみる。そうすると、カサカサになった人生に、少しずつ潤いが生まれてくると思います」

心身の不調に苦しんでいる人は、体をいたわりながら、まずは「自分時間」を大切にすることから。体のサインをしっかりと受けとめて、人生の流れを変えるチャンスをつかみましょう。

「環境」を変えることで人生の流れを変えよう

「30歳でメニエール病を発症し、出世レースから降りるという経験をしてから、私はずっと考えていました。自分は40歳以降、何をテーマに生きていくのか。出世を捨て、新規事業を担う専門職に移行したこの先の人生で、どんな生き方をしていくのか。ハッキリとしたビジョンを描けず、自分が進むべき道を模索していたのです。

そして37歳の時に、私は会社にヨーロッパ行きを直訴しました。新規事業のヒントを見つけるという名目でヨーロッパに渡り、自分の環境をガラリと変えようと思ったのです。

これまでと同じ環境にいては、人はなかなか変われません。変わりたいといくら頭で願ったとしても、いつもと同じ家、同じ会社、同じ仕事、同じコミュニティー、同じカルチャーの中では、ほとんどの人が現状維持で安全なほうを選んでしまうからです」

英語がすらすらと話せたわけでもなく、新規事業の手掛かりが現地にあったわけでもなかったという藤原さん。環境をガラリと変えて、自ら危機を演出することで、戦略的にモードチェンジをしてきました。これが三つ目のモードチェンジの方法です。

「ヨーロッパに移住したことは、見方を変えれば、海外に『逃げた』という捉え方もできます。でも、私は時には逃げることも大切だと思っています。自分を困らせる人や、もめ事を持ち込んでくる人からは、逃げる。自分を人として尊重してくれない会社や組織からは、逃げる。防御が最大の攻撃になることがあるように、逃げることで得られることや、発見できることもあるからです。

『逃げる』ことができない場合には、『断る』ことや『やめる』ことも大切です。付き合いで出席していた飲み会を断る。何となくつけていたテレビの視聴習慣をやめる、など。これまでの生活習慣で不要と思うものをリストラしていくと、新たな『自分時間』を確保できます」

環境を変え、ヨーロッパの「成熟社会」から学んだ人生哲学

 家族を連れた海外赴任の期間は、約2年半。ロンドンで1年1カ月、パリで1年3カ月暮らしながら、藤原さんはヨーロッパの「成熟社会」から多くのものを吸収したといいます。

「印象的だったのは、『Art de Vivre』(アール・ド・ヴィーブル)という、パリの人々の生活信条。直訳すると『生活術』という意味ですが、パリで生活していた私の感覚で翻訳すると、『人間と人間の間を取り持つ、コミュニケーション手段としての芸術的生活術』という意味になります。

この『アール・ド・ヴィーブル』は、まさに『成熟社会』の生き方。パリの人々は、食事や住まいを大切にし、会話を楽しみ、コミュニケーションを大事にして生きています。彼らの多くは、食事中にワインの銘柄を自慢したり、会社の肩書や役職をひけらかしたりはしません。食事を共にする時間は、お互いがどういう考えを持った人間なのかを知るための時間として、自分の言葉で語り合い、会話を楽しんでいるのです」

「みんな一緒に」ではなく、「それぞれ一人ひとり」が、多様な価値観を持って生きているというパリの人々。彼らは、「人間は生を受け、死を迎えるまで、他人と完全に分かり合えることはない」という人生観を持っているからこそ、お互いを知るために会話でコミュニケーションを図りながら、多様な価値観を認め合って生きているのだそう。

「日本もフランスと同じように、今や『成熟社会』に突入しています。仕事を離れたところで、自分がどんな価値観を持ち、どんな幸せを追求して生きていくのか。肩書を外した自分は何者なのか。30代からの『オフ時間』は、独自の価値観や幸福論を磨く訓練をする時期。そのために、環境をガラリと変えてモードチェンジすることは、『成熟社会』を生き抜く力を養うきっかけになるでしょう」

ただし、短期間の旅行では、人生の流れは変わらないそうです。

「滞在期間が短いと、現地の人から『お客さん』として扱われてしまうので、人生のモードを変えるのは難しい。私のように移住が無理なら、留学という手もあります。留学する場合も、1年だと『お客さん』のままで終わる可能性があるので、やはり2年くらい。腰を据えてその土地で暮らすことで、自分の価値観が磨かれていきます。

環境を変え、意気投合する仲間がいる場所や、価値観を共有し合える相手がいる場所から離れると、緊張感が生まれます。もちろん壁にぶつかることもありますが、その分多くのことを学べるので、自分自身が鍛えられるのです。

海外移住や留学のハードルが高ければ、日本の中で住んだことのない土地に引っ越し、環境をガラリと変えるという方法もあります。その他には、結婚したり子どもを産んだりすることも、モードチェンジにつながります」

「自分探し」という苦行はやめて、体験至上主義者へ

そして最後に。10年後の「なりたい私」を追求する上で、一つだけ注意してほしいことがあると、藤原さん。

「皆さんには、『自分探し』をしないでほしい。『本当の自分』などというものは、探しても見つからないということを、知っておいてほしいのです。

おそらく、皆さんが10代20代の頃には、『自分探しブーム』が巻き起こったと思います。『本当の自分』を探して一人旅をしたり、合う仕事を探して転職を繰り返したり……。これは、自分というものが、自分の中に『原石』としてある、という考え方です。

しかし、自分というものは『自分の中』にはありません。掘り出すべき『原石』も存在しません。あるとすれば、それは他者との間にあります。自分と他者とが関わり、コミュニケーションをしていく中で、両者の間に生まれるものなのです。

もっと正確に言うならば、他者との間に生まれる『自分』は、自分のカケラであり、一部分でしかありません。関わる人全員との間に生まれるカケラをすべて集めれば、『自分』というものの全体像が見えてくるかもしれませんが、いずれにせよ、『自分』は『自分の中』に『原石』として存在するものではないのです。

ですから、『ない』ものを探し求めても、決して見つかりません。『ない』ものを永遠に探し続ける人生は苦行でしかないので、もしも『自分探し』をしている人がいるなら、今日からそんなツライ修行は卒業してほしい」

同様に、「素の自分」というものも存在しないと藤原さんは言います。シチュエーションに応じて、「演じている自分」がいるだけだ――と。

「でも、だからこそ私たちは、環境によっていくらでも変われるのです。普段から『働く自分』『家族と過ごす自分』『友人と接する自分』など、シーンに応じて柔軟に対応しているのだから、たとえ勤めている会社が倒産したとしても、その環境に合わせて、しなやかに生きていけるはず。

『本当の自分』や『素の自分』という幻想に惑わされず、普段から『演じている自分』を意識していれば、ピンチのときにも演出家としての自分が現れて、『これからどんな人生を歩んでやろうか』と開き直り、自分で自分の人生の脚本を書いていける。

『正解』は、待っていてもやって来ません。大切なのは、立ち止まらないこと。どんどん行動して、『体験至上主義者』になることです。そうして築いた30代の歩みが、10年後の豊かな人生の礎になってくれることでしょう」

自分探しや正解探しはやめて、「体験至上主義者」へ。「オフ時間」には、行動することでしか味わえない体験を重ねて、自分の人生を変えていきましょう。

藤原和博
 教育改革実践家。1955年生まれ。リクルート入社後、20代は営業としての手腕を発揮。しかし30歳でメニエール病を発症し、37歳でヨーロッパへ移住。40歳で独立。47歳から5年間、義務教育では東京都初の民間校長として、杉並区立和田中学校校長を務める。2016年から2年間、奈良市立一条高校の校長に就任。「45歳の教科書」(PHP研究所)、「人生の教科書[おかねとしあわせ]」(筑摩書房)など著書多数。

(ライター 青野梢)

[nikkei WOMAN Online 2018年5月17・18日付記事を再構成]

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