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東京湾に巨大ホテル林立 五輪中、豪華客船で数千室

2018/7/2 日本経済新聞 朝刊

東京五輪の「ホテルシップ」とほぼ同型船として公開された「ダイヤモンド・プリンセス」(6月25日、横浜市)

JTBは2020年の東京五輪期間中、横浜港に停泊する大型クルーズ船をホテルとして活用すると発表した。約1000室で延べ3万6000人の宿泊を見込む。五輪に向けホテル不足が予想されるなか、東京や千葉などでも客船を活用する「ホテルシップ」の誘致が進む。大型イベントで一時的に膨らむ宿泊需要を取り込む狙いだが、五輪特需後のホテルの供給過剰を防ぐ手法としても注目される。

「五輪期間中の宿泊施設不足の解消につながる。ホテルシップ自身もユニークな施設として活用が期待できる」。6月25日に開いた記者会見で、JTBの高橋広行社長はこう述べた。

米クルーズ会社プリンセス・クルーズの客船「サン・プリンセス」が東京五輪の開会式前日の2020年7月23日から8月9日までの間、横浜市内の山下ふ頭に停泊する。全長261メートルと横浜ランドマークタワーに迫る大きさで、約1000の客室数は帝国ホテル東京と同規模。レストランやプール、劇場などを備えるクルーズ船が「期間限定の高級ホテル」となる。

ホテルシップに活用するクルーズ船の客室

2泊3日から予約が可能で1室2人利用の場合、1人1泊3万~30万円程度。利用者は船内で食事をとれ、ショーの観覧など手軽にクルーズが体験できる。

東京五輪でサッカーや野球などの競技会場となる横浜では、観客や関係者の受け皿が課題だ。16年のリオデジャネイロ五輪などでも選手や観客の宿泊地として使われたホテルシップを誘致し、ホテルを建設せず宿泊客を呼び込める。

17年の訪日クルーズ旅客数は前年比27%増の253万人、クルーズ船の寄港回数は前年比37%増の2765回といずれも過去最高を記録した。クルーズ船は寄港地を中心に一度に多くの観光客が訪れるため、経済波及効果が大きく誘致合戦が熱を帯びる。林文子・横浜市長は記者会見で「クルーズ人気を押し広げる絶好の機会。ホテルシップを利用して客船の魅力に触れてもらいたい」と期待を寄せた。

クルーズ船寄港地として世界にアピールできるホテルシップは横浜のほか東京や千葉、川崎などが誘致の準備を進める。東京都はスイスに本社を置く欧州最大手の船会社を運営事業者に選定。約1000室の客室を持つ大型客船を東京港に停泊させる計画だ。千葉と川崎でも実現すれば、五輪期間中の海上ホテルは合計3000~4000室にのぼる可能性がある。

ホテルシップの解禁に向け国も規制緩和を進める。旅館業法では客室に窓を設置するよう規定する。クルーズ船には窓がない客室が一定数あり、ホテルシップとしては従来すべての部屋を使えなかった。厚生労働省は5月、イベントの開催期間に限って各自治体の判断で窓がない部屋も営業を認める通知を出した。

ホテルシップは五輪に向けたホテル不足を解消する「特効薬」としての期待も集まる。政府は20年に17年比で約4割増となる4000万人の訪日外国人客数を見込む。さらに五輪期間中は観客や関係者など1000万人の来場者が予想されている。不動産サービス大手のCBRE(東京・千代田)は20年時点で東京の宿泊施設が約3500室不足すると予測する。

足元はビジネスホテルの建設ラッシュが相次ぎ、高級ホテルも外資を中心に進出が続く。

ホテル業界の懸念は五輪後だ。五輪特需がなくなると供給過剰に陥る恐れがある。すでに競争の激化はホテル経営に影響を及ぼし始めている。強気な値付けで知られるアパグループの直営ホテルの17年度の平均客室単価が9400円と16年度を100円下回り「競争激化の影響が出た」。

地方では供給過剰が首都圏より早い段階で訪れる見込み。CBREの調査では、20年に東京では客室が不足するが、大阪や京都では1万室以上余る見通し。ホテルシップは地方の港への停泊も検討され、課題解決につながりそうだ。

五輪での活用を機に、大規模なスポーツ大会や国際会議での新たな手法として定着する可能性もある。

(長尾里穂、大林広樹)

[日本経済新聞朝刊6月26日付を再構成]

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