山田孝之さん 多彩な企画実現へ貪欲な「仲間力」
シリアスな作品からコメディーまで幅広い作品に参加し、変幻自在な演技を見せてくれる山田孝之さん。その一方で、芸能人などのライブ動画を通じて商品を販売する電子商取引(EC)サイトの運営会社「ミーアンドスターズ」をトランスコスモスと共同で設立するなど、俳優としての枠にとどまらない活躍を見せており、仕事に取り組む姿勢や自発的な行動力は学ぶところがとても多いように思います。
俳優としての枠にとどまらない活躍
山田さんといえば、TVドラマ「WATER BOYS」(フジテレビ系)をはじめ、デビュー当初から正統派イケメン俳優として人気を得たのち、映画「クローズZERO」シリーズでは過激なアクションも披露する一方、TVドラマ「勇者ヨシヒコシリーズ」「山田孝之の東京都北区赤羽」(テレビ東京系)などではとぼけた三枚目になりきっており、多様な役柄を演じ分ける俳優として、今や引っ張りだこの存在です。
最近では長澤まさみさんと共演したラブストーリー映画『50回目のファーストキス』も話題を呼び、改めて正統派のかっこよさが注目されました。様々な人気作品で存在感を示す山田さんは、今の時代を代表する俳優さんと言っても過言ではありません。
山田さんは現在、34歳。一般社会で言えば、若手から中堅に移ってきた時期と言えます。自身の実力を蓄えるためにまい進してきた若手時代を経て、中堅になると、会社全体、業種や職種全体、社会に与える影響に至るまで、広い視野を持ちながら日々の業務に取り組む姿勢が問われ始めます。
若手ビジネスパーソンのころは、発想や企画を立案したらそれを上司に報告し、指示を仰ぐなかでプロジェクトや事業が実現していくケースが多いことでしょう。
ですが、中堅になると違ってきます。企画を立案したら関係各所への協力を仰ぎつつ、自発的に取り組む実行力が必要となってくるのです。言ってみれば、仕事に最もやりがいを感じ始める時期かもしれません。山田さんは今まさに、その過程にあるのですが、自身の企画力や実行力は群を抜いています。
自ら企画し、製作にも働きかける
例えば、山田さんの企画力や実行力で実現した作品の一つに、TVドラマ「山田孝之の東京都北区赤羽」が挙げられます。このドラマは、山田さんが清野とおる氏の漫画「東京都北区赤羽」を読んで赤羽に魅力を感じ、山下敦宏監督に「自身の赤羽での風景を撮影してほしい」と自ら志願して映像化にこぎつけました。
またTVドラマ「山田孝之のカンヌ国際映画祭」では、「カンヌ国際映画祭出品を目指す」という意気込みのもと、自主製作映画の製作を企画し、この記録をドキュメンタリ―ドラマへと完成させました。
どちらもコメディーのくくりに入ると思いますが、シニカルなユーモアがマニアックなファンに絶賛されています。
どちらも山田さんの「今こそ!」と思い立ったら、すぐに実行に移して形にする自発的な行動力を体現した企画です。また、自らが働きかけて、面白い仕事を一緒にしてくれる仲間をつくっていく力を感じる事例でもあります。
仲間をつくるために会社を共同設立
冒頭でも紹介したように、山田さんの行動力は俳優の世界にとどまらず、ビジネスの世界においても発揮されています。2017年9月、ECプラットフォーム「me&stars」を運営するミーアンドスターズを設立、取締役CIO(Chief Innovation Officer)に就任しました。同社は芸能人などのライブ動画を通じて商品などを販売するECサイトを運営し、著名人がライブ動画に出演して商品を紹介、販売する「ライブコマース」と呼ぶサービス事業を展開しています。タレントやインフルエンサー(ネットで影響を持つ人)がライブ動画を配信し、視聴者はリアルタイムで質問やコメントをしながら商品を購入できます。
山田さんは設立発表の記者会見で、自身が事業に携わることについて、俳優としてつながった関わりを生かしつつ、自身の経験からマネジャー的な役割を果たし、その上で出演してくれる俳優たちのセルフプロデュース能力をアップさせたいという考えを明かしています。
また、山田さんは役者を目指す人を支援するプラットフォーム「mirroRliar(ミラーライアー)」の展開にも参画しています。「mirroRliar」は、役者を志望する人に対し、監督・脚本家などの連載コラムや演技のワークショップ、役者になる前に知っておくべき情報の配信、短編映画やすでに公開が終わってしまった映画の視聴など、演じる上で不可欠な「学び」に関するサービスを提供する事業です。
山田さんは「mirroRliar」について、「日本の映画界、俳優界は人材が不足しております。皆様、気軽な気持ちで俳優を目指してもらえたらうれしいなと思います。仲間が非常に少ない!もっと仲間が欲しい!寂しい!『役者やってみるか、山田と』というくらい気楽な感じで役者は初めていいものです。きっと楽しめると思いますよ。」と公式サイトでコメントしています。
常に新しい自分を仲間とつくり上げる
面白い仕事をするために仲間を増やしたい、山田さんはそんな強い思いで「mirroRliar」や「me&stars」の事業に関わっているようです。テレビドラマ、映画、舞台と幅広く活動する山田さんにとって、ライバルが増えることに対する不安よりも、面白い仕事に一緒に取り組む仲間を増やしていくことへの期待の方が高いのでしょう。
私自身、多くのビジネスパーソンを取材してきましたが、常にアンテナをはりながら進化を目指して30代を努力し続けてきた人たちは、40代でより充実した仕事人生を送っているように見受けられます。そして、そういう方は社内外に面白い仕事仲間を多数つくっているものです。面白い仕事をするには面白い仲間が必要。そのためには、芸能界でもビジネスの世界でも同様で、自発的に働きかけていくことが重要です。
山田さんの次回出演作はミュージカル。9月1日から東京・静岡・大阪で上演される『シティ・オブ・エンジェルズ』に出演されます。山田さんは歌がとてもうまいですし、『フル・モンティ』という作品で既にミュージカルデビューもしていますが、今回はどんなミュージカル俳優ぶりを発揮してくれるのか、今からとても楽しみです。「勇者ヨシヒコ」シリーズと同じく福田雄一さんが演出、共演者には玉木宏さんとの結婚でも話題となった、ムラサキこと木南晴香さんもいます。きっと山田さんにとって、面白い仲間との仕事になることでしょう。
常に自発的に作品を選び、多様な力を発揮する山田さんのことですから、きっと新生・山田孝之の新鮮な魅力を仲間と共に披露してくれることと思います。
また7月27日からスタートするTVドラマ『dele(ディーリー)』(テレビ朝日系)では、人気俳優の菅田将暉さんとタッグを組むとのこと。人気と実力を兼ね備えた俳優2人のW主演、こちらも見逃せません。
ミュージカルやドラマを通して、自身の個性を生かしつつ仲間と融和する山田さんの姿から、ビジネスシーンにおいても大切な「個」と「和」の相乗効果を感じ取ることができそうで、今からとても楽しみです。
経済キャスター、ファイナンシャル・プランナー。日本記者クラブ会員。多様性キャリア研究所副所長。TV、ラジオ、各種シンポジウムへの出演の他、雑誌やWeb(ニュースサイト)にてコラムを連載。主な著書に『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)。株式市況番組『東京マーケットワイド』(東京MX・三重TV・ストックボイス)キャスターとしても活動中。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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