水曜日のカンパネラ・コムアイ 心動く太陽の塔ポーチ
鋭い視点をユーモアの淡い幕で包んだ独特の歌詞を、スタイリッシュなトラックで彩る男女の音楽ユニット・水曜日のカンパネラ(愛称、水カン)。主演(ボーカル)のコムアイは「ヤフオク!」CMやワイドショーなどにも出演。楽曲の世界観をユーモラスに表現したMUSIC VIDEOは国内外で人気を博し、海外の音楽フェスにも度々招かれている。
そんな水カンが新作『ガラパゴス』をリリース。海外に行く機会も多いコムアイが、日本の特異性、独自性を強く感じたこと=ガラパゴス化が作品のテーマだという。今回持参してくれた岡本太郎「太陽の塔」をモチーフにしたポーチも、そんな鋭敏かつユニークな彼女のお眼鏡にかなった品のようだ。
作り手の心意気を感じる
この「太陽の塔」ポーチはわりと最近、GINZA SIX(東京・中央)「銀座 蔦屋書店」で購入しました。毎日使っています。
おしゃれでかわいいバッグも持ち歩きますが、小さくてものが入らないことも多いんです。その点、このポーチはスマートフォン(スマホ)や財布など、必要なものがすべて入ります。背中(太陽の塔の背面)にファスナーがついていて、そこからモノが入れられるんですが、内部が赤いのもいいですよね。そこまで工夫する必要はないんだけど、あえてこだわる。作り手の心意気を感じます。
手触りもぬいぐるみみたいでふわふわしていて、すごく心地いい。毎日使っていることで、汚れてしまうことが目下の心配事です(笑)。
岡本太郎さんって、日本人ならみんな知っているし、好きですよね。
売り場には、村上隆さんや草間彌生さん、横尾忠則さんなどのアイテムも並んでいました。それらの現代アーティストの方々は世界的にも知られているなと感じます。奈良美智さんもそうですよね。それに比べると私が見た限りでは、岡本太郎さんは海外での認知度がちょっと低いのかなって感じて。それこそ「ガラパゴス」だなと思うんです。
うんざりしてほれぼれする日本語の繊細さ
去年は仕事とプライベートで10回以上も海外に行きました。現地のフェスに遊びに行ったりすると、たくさんの人に接します。そのたびに、いい意味でも悪い意味でも「すごい特殊なところで育ったんだな」と思うようになりました。
まず、基本的に同じ民族で言語も日本語をしゃべるけど、それってとても珍しいこと。同じ言語を話すから、表現も多彩で繊細だなって思います。それこそ、うんざりするくらい、または、ほれぼれするくらいに(笑)。
ささいなことで言えば、横丁の飲み屋さんとかに、魚の名前や別名にすごく詳しかったり、切り身を見ただけで何の魚かわかるおじさんっていますよね。でも、海外ではそういうことって経験したことがないんです。ギャル語やギャル文字みたいなことが、若い世代だけでなく、他の世代でも、実は日本全体でも起きているんでしょうね。
今回の新作タイトルは『ガラパゴス』。海外に出て、日本の特異性、独自性を強く感じたことがきっかけとなりました。
「日本が世界の中でどう見えるか」という発想自体が、俯瞰(ふかん)的な感覚だとは思うんですが、私たちが作品に雅楽を入れたりするのは違うなと。そういうのはむしろ、日本が好きな外国人がやるべきことだと思うんです。私たちは自分たちがやりたいことを突き詰めれば、おのずと「らしさ」が出てくると思います。
興味があること、やりたいことをコーヒーフィルターに一緒くたに入れ、ろ過されて出てきたものが私たちの音楽。そうやって生み出されたものは、どんな形になろうが自分からは選べないと思っています。にじみ出てきたものを、聴いてくださる人がどう感じるかだと。
「余剰」だからこそ
作品をリリースしてる側から言うのもなんですが、いつまでもCDが売れるのも日本ならではの「ガラパゴス」ですよね。レーベルの偉い人に怒られちゃうかもしれないけど(笑)、個人的には「要らないモノ」かなって感じてます。
世代もあるんでしょうが、効率がいいモノが好きです。楽しくなくて、ダブついてるモノはなくてもいいなと思ってしまう。誰でも、だらだらと長いだけの会議とかって無意味だな、非効率的だなって思いますよね。「誰が得するの?」って。そういうものは無くなってもいいのになって。
でも、無駄なモノがすべてダメってわけじゃないんです。何かしら心が動けばいい。「太陽の塔」ポーチは、無駄なものかもしれないけど、楽しい気持ちにしてくれる。
私たちミュージシャンが作り出すものって、そもそもが余剰のモノばかりなんですよね。だからこそ、作り手の思いやこだわりがとても大切なんだと思います。「太陽の塔」ポーチも作り手の思いが感じられたから引かれた。「素晴らしいな」「すてきだな」と思えば、対価を払いたいと思うし、寄付することもあるはず。それはモノであっても、モノでなくても同じじゃないかと。
音楽ユニット、水曜日のカンパネラの主演と歌唱を担当するほか、作詞も手がける。日ごろからストリーミング音楽配信サービスを利用し、中米やタイのポップス、グレゴリオ聖歌など、世代も地域も区別なく音楽を聴いているそう。6月27日には、映画「猫は抱くもの」の劇中歌「キイロのうた」など8曲を収録した新作『ガラパゴス』を発売。6月30日と7月1日に、河口湖ステラシアター(山梨県)にて「水曜日のカンパネラ 円形劇場公演」を開催する。
(文 橘川有子、写真 藤本和史)
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