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私のリーダー論

過酷な現場で磨いた胆力 リスクは心の中にある 日揮の石塚忠社長(下)

2018/7/5

「現場時代にふと気付いたことがあるんです。私は一体何を守っているんだろうかと。顧客と交渉しているときに、こんなこと言ったらまずいかなと思うことがあったけど、よく考えてみたら失うものはない、徹底的に話し合おうと腹が据わったのを覚えています。リスクは自分の心の中にあるのです」

■心の問題を見抜けるか 交渉は勝ち負けではない

――リーダーの仕事を学んだ師匠はいますか。

元社長の森本省治さんにリーダーのあるべき姿を学んだという

「元社長の森本省治さんは伝説のプロジェクトマネジャーで、とにかく明るくて交渉力もずば抜けていました。あるとき顧客と交渉で話が全然まとまらないことがありました。森本さんが先方の担当者を指さして『おまえがボスに正確な報告をしていないから話にならないじゃないか、おまえは一体何をしていたんだ!』と大声を出して、そしたら担当者が机の下で足が震えちゃって。森本さんは主張するところは主張する。でも最後はまた笑って、風呂敷に包むように相手を納得させてハッピーにして帰すんですよね」

「タイで一緒に仕事をしたときはとにかくお金がなかったので、森本さんと一緒に取引先の前で芝居を打ったこともあります。顧客の前でわざとけんかするんです。『森本さん、こういうふうにしてお金かけないと工事終わりませんよ』『いや、そうは言っても金がないから仕方ないじゃないか』とかね。顧客の偉い人が部下にその場で『何とかしてやれ』と言って、本当にお金を出してもらえたこともありました」

――後継者の条件は何でしょう。

「エンジニアリングの会社の経営者としてはまず、リスクの中心に身を置くのをいとわない人。そして緻密さと大胆な部分の両面を持ち合わせていなければならないと思います。会社を運営していくという意味では、経営数値にも敏感でなければならない。プロジェクトや技術ばかり見ていると会社全体のコストに目が行かない。CFO(最高財務責任者)になれとは言いませんが、CFOに質問ができるぐらいの感覚は必要です」

――タフな交渉が必要な場面も多そうですが、交渉のコツは。

「私がいつも交渉相手に言うのは、契約書を超えて、あるいは契約書の解釈を変えて、お互いうまく実になるような話をしましょうということです。契約で解決するんだったら対面する必要はない、契約書通りやればいい。つまり交渉は落としどころを決める場であって、こちらが勝って相手を負かせればそれでいいというわけではありません」

「けんかもしますけど、やはり誠実に、こいつは本当のことを言っているな、仕事のことを考えて真剣に戦っているんだなと伝わるようでないといけない。この業界は狭いから、必ずまたどこかで会うんです。厳しい交渉であるほどこちらの印象は相手に強く残ります。そのときのことを思い出して、逆に『また一緒にやれてうれしい』と言ってもらえる関係になります」

石塚忠
1972年宮城工業高等専門学校(現仙台高専)卒、日揮入社。東南アジアのプラント工事などで頭角を現す。2008年常務取締役、11年取締役副社長。15年に一時退社。17年2月に復帰し、上席副社長執行役員。同年6月から現職。趣味は家庭菜園。

(安田亜紀代)

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