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無残に傷つくアホウドリのひな、ハツカネズミに無抵抗

日経ナショナル ジオグラフィック社

2018/7/1

ナショナルジオグラフィック日本版

アホウドリ、ペンギン、パフィンなど、私たちがよく知る海鳥の個体数は7割近く減少している。生物学者の推定によると、はえ縄漁で年間30万羽もの海鳥が命を落とす。外来種による被害も深刻だ。上の写真のアホウドリのひなは、人がもたらしたハツカネズミにかじられ傷ついた。ナショナル ジオグラフィックでは、海鳥たちの現在と、個体数回復のために活動する人々を7月号で取り上げている。ここでは、外来種が海鳥に与える影響を紹介しよう。

◇  ◇  ◇

南大西洋に浮かぶ英領ゴフ島。ズキンミズナギドリの世界でただ一つの繁殖地であり、絶滅寸前のゴウワタリアホウドリも、ほぼすべてのつがいがこの島で繁殖している。何百万羽もの海鳥の繁殖地であり、かつては「楽園」だった。ロス・ワンレスがゴフ島を初めて訪れたのは2003年のことだ。ほかの研究者たちの調査で、ミズナギドリとアホウドリのひなの死亡率が危機的なまでに高いとわかったからだ。ワンレスは、鳥類保護団体「バードライフ南アフリカ」の海鳥保護プログラムを率いる生物学者だ。

世界各地の島々に人間が持ち込んだ大型のネズミやネコが海鳥を捕食することは知られている。だが、ゴフ島にいるのは小さなハツカネズミだった。ワンレスはビデオカメラと赤外線ライトを使って、ハツカネズミがミズナギドリのひなを襲う様子を記録した。「日が沈むと、1匹のハツカネズミが現れてミズナギドリの巣穴に入り、少し様子をうかがってから、ひなを食べ始めました」とワンレスは話す。「ほかのネズミたちもやって来て、残酷極まりない襲撃を目撃することになったんです。時には4、5匹が競い合うようにひなを傷つけ、血をなめつくし、体の中に潜り込んで内臓まで貪っていました」

■ネズミを警戒することを知らない無防備な海鳥

海鳥は、陸地では天敵を知らずに進化してきた。そのため、海鳥はハツカネズミにまったく無防備だ。真っ暗な巣穴にいる親鳥には、ひなの身に何が起きているかもわからない。アホウドリも、ハツカネズミを警戒する本能をもち合わせていない。ワンレスが2004年に行った調査では、ゴフ島のゴウワタリアホウドリの繁殖失敗例は1353にのぼる。大半は天敵によるもので、成功例は500ほどにすぎなかった。その後の調査では、失敗率が90%に達したこともある。

ゴフ島の海鳥全体では、今では年間200万羽のひながハツカネズミに殺され、しかも、これらの種の多くは、成鳥が漁業の犠牲になっている。ゴウワタリアホウドリが海で1年間に死亡する確率は10%にのぼる。これは自然に死亡する確率の3倍以上だ。成鳥の死亡率が10%で、繁殖に失敗する確率が90%となると、絶滅するのは時間の問題だ。

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