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キャリア

「おもてなし」起業、知恵絞る女性たち 異文化体験も

2018/6/26 日本経済新聞 朝刊

岡本二美さんが開いた料理教室Sakura cookでは和食の作り方から歴史まで教える

■日本食の世界を伝える 岡本二美代さん

海外からの観光客で沸く大阪。インバウンドグループ社長の岡本二美代さん(56)は大企業でのキャリアを捨て、起業に踏み切った。17年から、外国人向けの日本食教室Sakura cook(大阪市)を運営している。

専属の講師らがすしや天ぷらの作り方、食の歴史までを教える。参加者は欧米人が7割。講師は英語と中国語のいずれかで対応する。生徒6人に講師がほぼ1人の割合でつき、手厚く指導している。

岡本さんは経営コンサルタントなどを経て、LIXILグループでマーケティング部の部長職を務めた。きっかけは16年に見たテレビ番組。外国人旅行者に日本食の作り方を教える女性を取り上げていた。調べるとインバウンド需要、なかでも「日本食を食べたい」という需要が多いと気づいた。どうせなら食べるだけでなく作る方が楽しいのではないかと経営者の知人らに相談しビジネスモデルを組み立てた。

「若い頃なら、絶対に挑戦できなかった」。起業に踏み切れた理由は会社員を続け、開業に十分な資金があったからだと振り返る。培った人脈も生きている。コンサルをしていたホテルに連絡を取り、コンシェルジュを紹介してもらうなどし、営業に生かしている。

最近は「外国人社員と日本人社員の交流を深めたい」といった理由で、法人からの予約を受けることもある。「インバウンドなど外国人市場は国内にある数少ない成長市場だ。チャンスを生かしたい」と話す。

◇   ◇   ◇

華ひらく社長の内木美樹さん

■接客英会話をレッスン 内木美樹さん

一方、「もてなす」人の教育に着目する起業家も。「アレルギーがありますか」「何人での来店ですか」。飲食店で必須の英会話フレーズを教えるのは、英語学校の華ひらく(東京・新宿)社長の内木美樹さん(35)だ。高校卒業後に渡米、ホテルのレストランでの勤務経験を生かせる飲食店の接客用会話に絞った。

国内外のレストランの習慣の違いを教えるのも特徴だ。例えば欧米では、客は大声で注文するために呼びつけることはあまりしない。そのため日本でなかなか店員が来ず「仕方なくビールを1杯頼んだだけで帰った」という話や勘定伝票を最初の注文で渡され「これ以上何も頼んではいけないのかと思った」など。

旅行の楽しみの一つは異文化体験。違いを楽しんだり、違いを埋めたりと日本人と外国人の「隙間」にいち早く気づき、心からのもてなしを提供しようと知恵を出す女性が増えそうだ。

◇   ◇   ◇

■生活目線、コト消費を刺激 ~取材を終えて~

数少ない成長市場だけに、インバウンドの注目度は高い。大都市だけでなく、地方にも裾野は広まりつつある。取材中「お金を使いたい人が、お金を必要としている地域に、お金を落とす。誰もに魅力的なマーケット」という橋口さんの言葉が印象に残った。

アジア各地の所得水準も上がり、消費は体験型の「コト消費」へとシフトしつつある。ただ一方、2017年の訪日外国人の1人当たり旅行消費額は15万3921円(観光庁調べ)と2年連続の減少。日本に来たのに「お金を使う対象がない」ではもったいない。

衣食住など日本の普段の暮らしを生活者目線でとらえ、コト消費を刺激する策はありそうだ。無料の通信環境や交通・宿泊サービスなど、諸外国の方が旅行者に便利なことも多く「日本は旅がしにくい」といった声も。こんな分野にも女性起業家たちの斬新な発想が生きるに違いない。

(菊地悠祐)

[日本経済新聞朝刊2018年6月25日付]

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