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振り込め詐欺で大手行も 高齢者のATM出金を制限

2018/6/26

写真はイメージ=PIXTA

 80歳代の親が先日、銀行のATMでまとまったお金を引き出そうとしたのに、できなかったと言っています。なぜこのようなことが起きているのですか。

◇  ◇  ◇

 大手銀行や地銀、信用金庫が相次ぎ、高齢者のATMの利用に制限を加えている。「振り込め詐欺」対策として、ATMの振込額の上限を低く設定する動きは数年前からあったが、昨年からは1日あたりの出金額にも制限を設ける動きが広がりつつある。

 三菱UFJ信託銀行は7月30日から、一部の高齢者の利用額を制限する。3月末時点で80歳以上の人でかつ、過去1年間にATMでキャッシュカードを使って引き出しや振り込みをしていない人が対象だ。

 1日あたりの利用限度額を引き下げ、振り込みだけでなく出金額も制限する。同行は防犯を理由に利用限度額を明らかにしていない。対象顧客は10万人弱。制限を望まない利用者は別途、申し出る必要がある。

 ATMの出金制限に最初に乗り出したのは信金だ。青木信用金庫(埼玉県川口市)は2017年9月、1年間利用のない70歳以上の利用者に対し、他の金融機関のATMでは出金できないようにした。

 巣鴨信用金庫(東京・豊島)も17年10月、過去3年間、ATMで現金を引き出していない70歳以上の利用者の1日あたりの出金額を10万円に引き下げた。それぞれ、必要な場合は本人確認書を持参して窓口を利用するよう促している。

 大手行はATMでの振込額の抑制はほぼ対応済みだが、引き出し額の制限には慎重姿勢だった。普通預金は本来、預金者が求めれば直ちに払い戻さなくてはいけないし、振り込みや出金で窓口業務を増やすことはコスト削減に逆行するとの声も根強いからだ。

 それでも乗り出す背景には、高齢者を狙った金融犯罪の傾向の変化がある。

 警察庁の調べによると、17年の「振込型」詐欺の被害額は前年比22%減の70億円だったのに対し、金融機関の職員などを装った第三者にキャッシュカードを渡してしまう「手交型」は3倍強の62億円に増加した。

 犯人の手口は巧妙化しており、カードを奪われた直後にコンビニATMなどで出金される例もあるという。「1回の出金額を抑えれば、被害額を減らせるし犯罪抑止にもつながる」(金融庁)との期待がある。

 高齢者はどのように対応すれば良いのか。「何度もATMに通うのが手間ならば、手元に現金を多めに持っておくしかない」とファイナンシャルプランナーの深野康彦氏。子供など信頼できる家族とともに窓口に行き、まとまった額の出金を依頼する手もある。

 また、銀行の窓口に申し出て事情を説明しておけば、出金額の上限を自由に設定できる場合もある。日常的にATMを使って一定額を出金をしたいというなら、検討してもいいだろう。

[日本経済新聞朝刊2018年6月23日付]

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