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私のリーダー論

現場一筋「俺はごまかせない」 日揮鍛える出戻り社長 日揮の石塚忠社長(上)

2018/6/28

日揮の石塚忠社長

 国内プラント最大手、日揮の石塚忠社長は副社長のとき一度退社し、「三顧の礼」で呼び戻された異例のトップだ。19年ぶりの最終赤字に転落した業績の立て直しを託された。高等専門学校を出て入社以来、ほぼ現場一筋。プロジェクト管理のプロを自任するたたき上げのリーダー論とは。(次回の記事は「過酷な現場で磨いた胆力 リスクは心の中にある」)

■就任会見で「緩んだタガを締め直す」

 ――日揮は2017年3月期に220億円の最終赤字に転落。佐藤雅之会長らが自宅まで訪れて復帰を依頼したそうですね。

 「最初はずっと断っていました。一度辞めた人間が戻って周囲の人がどう思うか、自分自身がもう一回燃えるような気持ちを持てるか。世代は替わったわけですから、本来は残った経営陣がやらないといけない。会社を辞めてから時々飲み会に誘われても一切断っていたほどです。技術資料も全部捨てて、残ったのは名刺2000枚だけ。最後は妻から『43年間お世話になった会社なんだから、恩返ししたら』と言われ、決心しました」

 ――社長就任発表後の記者会見で「緩んだタガを締め直す」と宣言しました。戻った後の会社の状況をどう感じましたか。

 「赤字の原因は2つのプロジェクトでした。米国の石油化学プラントでは100年に1度の大雨で工事が進まなくなった。もう1つ、クウェートでは現場で働いてもらう予定だったインド人らのビザ(査証)発給が遅れた。原因は仕方のないことですが、私からみると分かった後の対応が遅すぎました」

 「現場の実情が経営幹部にきちんと伝わっていないとも感じました。ある案件で責任者から進捗を聞いたところ、僕の計算ではあと10カ月はかかると思いましたが、経営陣の理解では4カ月ぐらいだろうという感覚。どこかで完全にコミュニケーションの分断がある。これはまずい、会社にとってのリスクだと思いましたね。当時の会長と社長は事務畑。『今まで2人の目はごまかせたかもしれないが、今後一切ごまかせないからな』と現場にくぎを刺しました」

 「日揮は大規模プラントを設計から工事まで一括で請け負うEPCと呼ぶ事業が主力です。これはリスク管理がすべてといってもいい。固定価格契約ですから、約束した期限で、予算内に仕上げないといけません。赤字が出たということは、リスクが顕在化したということです。リスク管理って一言でいうと簡単に聞こえますが、関係者の気持ちなんかも含めて、色々な要素が複合しています。昔から『リスクの中心に身を置け』と社内で言ってきましたが、もう一度そのカルチャーを根付かせる必要がありました」

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