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炒める油で油慣らしもやってしまう

さて、中華鍋の使い方についても、少しだけ留意点を書いておきたい。

煙がたつまで鍋を熱したあと、油を入れるべきか。それとも、鍋に油を入れたあと、火をつけるべきか。試してみたところ、どちらのやり方で作っても、チャーハンの出来に区別がつけられなかった。

ただ、いずれの場合も、鉄製の中華鍋を使う場合は「油慣らし」という作業が必要になる。

フッ素樹脂加工のフライパンには必要のない工程なので、初耳の人がいるかもしれない。あらかじめ鍋に大量の油をそそいで、鍋肌に油の被膜を作っておくのだ。これをやらないと具材が鍋肌にくっついてしまう可能性がある。

プロの料理人の仕事を見ていると、油ポットから使用済みの油を大量に鍋へ流し込み、鍋肌になじませ、それをすべて油ポットに戻したあと、新たに調理用の油を入れて、炒めに入っている。

料理人のように毎日、大量の油を使う人なら、そういうことができるのだが、一般家庭ではまず無理だろう。そこで本書では最初から規定量23ミリリットルの油を入れ、温度が上がってサラサラになってきたところで、中華ヘラでかきまぜて直径30センチぐらいの範囲に広げ、鍋肌になじませる方法をとることにする。

要は、炒めるのに使う油で、油慣らしもすませてしまうということだ。

さて、ここで最大の課題に取り組むことにしよう。「具材を入れても230~250度以上をたもてるなら、パラパラにできる可能性がある」という考えをもつも、いまだ実現できていない。

事前に材料の温度を上げておけば、鍋に投入したときの温度低下は改善するはずだ。冷やご飯よりも、炊きたてのご飯や、保温しておいたご飯を使うほうが、温度低下は少なかった。

炊きたてご飯と保温ご飯を比べると、水分が飛んでいるぶん、保温ご飯のほうがパラリと仕上がる。悩ましいのは、保温ご飯の温度は70度、炊きたてご飯の温度は100度近くと、かなり差があることである。そのぶん鍋は温度低下するのだから。

だとすれば、保温ご飯の温度を、炊きたてご飯の温度ぐらいまで上げてやればいいのではないか? 電子レンジを使うのである。周富徳は「冷や飯がほぐれやすくなるよう」電子レンジを使えといっていたが、本論では、保温ご飯の温度をさらに上げるために電子レンジを使うわけだ。

電子レンジにかければ、温度が上がるだけではない。水分もさらに飛ぶから、一石二鳥である

5時間保温したご飯230グラムを皿に広げ、600ワットの電子レンジにかけた。いろいろな時間で試したが、炊きたてのご飯と同じ100度近くまでもっていくには、1分40秒でいいとわかった。さらに長い時間かけても、温度はそれ以上に上がらず、部分的に乾いて食感も悪くなるだけだった。

チンしたご飯の重さをはかると218グラム。水分が5%減った計算になる。この数字ならパラパラに貢献するに違いない。

実際に炒めてみる。卵を入れ、ひと呼吸おいてご飯を入れても、温度は180度までしか下がらない。炊きたてのご飯を入れたときと同じだ(まあ、電子レンジで同じ温度にしたのだから、当然だが)。

ただ、水分たっぷりの炊きたてご飯と違い、保温の過程で1%、チンする過程で5%の水分が飛んでいる。これまででいちばんパラリと仕上がった。

もちろん、180度という温度は、目標とする230~250度にとうてい届かない。とはいえ、電子レンジでご飯の温度をこれ以上は上げられないのだから、仕方がない。また別の方法を考えるとして、とりあえずは20度の改善で満足しておこう。

次回は、チャーハンのパラパラ具合を左右する卵の扱いについてお伝えする。

土屋 敦 著 『男のチャーハン道』(日本経済新聞出版社、2018年)第6章「パラパラの邪魔をするのは誰だ」から
土屋 敦(つちや あつし)
ライター 
1969年東京都生まれ。慶応大学経済学部卒業。出版社で週刊誌編集ののち寿退社。京都での主夫生活を経て、中米各国に滞在、ホンジュラスで災害支援NGOを立ち上げる。その後佐渡島で半農生活を送りつつ、情報サイト・オールアバウトの「男の料理」ガイドを務め、雑誌等で書評の執筆を開始。現在は山梨に暮らしながら執筆活動を行うほか、小中学生の教育にも携わる。著書に『なんたって豚の角煮』『男のパスタ道』『男のハンバーグ道』『家飲みを極める』などがある

男のチャーハン道 (日経プレミアシリーズ)

著者 : 土屋 敦
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 918円 (税込み)


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