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右手にヘラ、左手におたまの二刀流 パラパラへの極意

男のチャーハン道(2)

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NIKKEI STYLE

日本経済新聞出版社の新書、日経プレミアシリーズ『男のチャーハン道』からの第2回目。著者は試行錯誤を重ね、パラパラチャーハンへの道を突き進んでいる。そこから最終レシピを目指していく奮闘ぶりをお伝えする。

◇  ◇  ◇

パラパラチャーハンへの道も、だいぶ先が見通せるようになってきた。現時点で確定していることをまとめておこう。それぞれがパラパラに近づく技法になっているはずなので、ここから微調整をかさねつつ最終レシピを完成させたい。

・ご飯230グラム、卵1個、ネギ20グラムのバランスにする。

・ご飯は炊きたてではなく、炊飯器で5時間ほど保温したものを使う。

・ネギは粗みじん切りにする。

・太白ごま油23ミリリットル(小さじ4~5)を使用。

・42センチの鉄製中華鍋を使用。

・コンロの火は最初から最後まで最大火力。

・鍋の温度が350度になったところでスタートする。先に溶き卵を入れ、固まりきる前にご飯を投入する方式。

・鍋はあおらず、置いたまま。中華ヘラで切るように混ぜ、平たくならし、鍋肌に押しつけ、裏返す動作をくり返す。

まだ確定していないことを決めていこう。ここまで味つけについては、まったくコメントしてこなかった。本書では醤油(しょうゆ)は使わず、シンプルに塩だけで味つけしたい。

では、どんな塩を使えばいいのか? もちろん家庭にある塩でもいいのだが、最高のチャーハンに仕上げるためには、可能なら旨味(うまみ)の強い塩を使いたい。

『男のパスタ道』(日本経済新聞出版社)では「粟国の塩」という、強い旨味をもちながら、まろやかで品のある塩を紹介した。品のいい塩のほうが、ペペロンチーノのストイックさとマッチすると考えたからである。

しかし、チャーハンは繊細さや透明感を追求する料理ではないので、さらに強い旨味が感じられるもののほうが、しっくりくる。やはり強い旨味がチャーハンには合うのだ。

おすすめは、海外の昔ながらも製法で作られた海塩。舐(な)めると海で溺れかけことを思い出すような、海由来の旨味がたっぷりの天日塩だ。天日塩は釜で炊くこともなく、太陽の力だけでじっくり塩にするので、実に複雑で強い旨味が生まれてくる。

手に入りやすいところでは、フランスのゲランドの塩はどうだろう。短時間の調理でもよくなじむよう、粗塩でなく細粒塩を選ぶといい。

分量は、多くの料理がそうであるように「全重量の0.8~1%」が基準になる。ご飯を230グラムにして作ると、完成したチャーハンは約255グラムだった。つまり塩は2.1~2.6グラムが適量だろう。

手元のゲランドの細粒塩を計量スプーンですくってみると、小さじ半分がちょうど2.4グラムだった。通常の精製塩で小さじ半分は2.5~3グラムぐらい。ゲランドの塩は細粒塩といえども、普通の精製塩よりは粗い。スプーンですくったときにすき間ができるぶん、精製塩より少なくなるのだ。

塩を入れるタイミングは、炒(いた)め終わる30秒前ぐらいか。鍋をあおらないぶん、塩がまんべんなく混ざるのに時間がかかるので、少し早めに入れている。

炒め方についても微調整したい。実は、何度も中華ヘラを使っているうち、「ご飯を平らにしにくい」という難点を克服する方法を発見した。

左手に中華鍋を握って、あおってみたり、前後に激しくゆすってみたりしたが、あまり意味はないとわかって却下した。中華鍋はコンロに置いたっきりだから、左手が完全にフリー状態で、なんとも心もとない気分になる。そこで、左手に中華おたまを握ってみたのである。

右手に中華ヘラ、左手に中華おたま、の二刀流だ。中華ヘラは「面で押す」ので、ご飯を鍋肌に押しつけやすいが、薄く広げにくい。一方、中華おたまは「点で押す」ので、ご飯を薄く広げやすいが、鍋肌に押しつけにくい。ならば、両方使えば、どちらの得意技も生かせるではないか。面と点のコラボレーションである。

右手の中華ヘラで混ぜつつ、ときどき左手の中華おたまの底でトントンと叩き、ご飯を平たくしていく。ご飯が平たく薄くなったら、すかさず右手の中華ヘラで、ジューッと音がするまで押しつける。中華ヘラで裏返しつつまた混ぜ、中華おたまで広げ、中華ヘラで押しつける……。という動作をくり返す。鍋をあおらないどころか、鍋にふれもしないでチャーハンを作っていくわけだ。

中華ヘラだけより二刀流のほうが、よく混ざり、手早くパラパラにできるように思う。左手の中華おたまでトントンし、右手の中華ヘラで押しつけて混ぜるだけなので、動きとしては簡単だ。ただ、塩やネギを投入するときに、いったん中華おたまを置かなければならない点だけは少し不便かもしれない。

お皿に移す作業は、中華ヘラのほうが一粒も残さずできるので便利だ。ただ、もし中華料理店のように丸く盛りたいという人がいれば、中華おたまの中に、中華ヘラでチャーハンを押し込めばいい。皿で中華おたまにふたをしてクルリとひっくり返せば、こんもりと丸いチャーハンとなる。二刀流、あなどれない。

問題があるとすれば、作業している自分の姿を想像すると、なんだかバカみたいに思えてくることだろう。右手に中華ヘラ、左手に中華おたまという姿は、なんとも大げさで滑稽に見える。エプロンの代わりにマントをはおれば、まるでヒーローごっこだ。真剣に料理に取り組む姿を、妻や子どもに笑われる覚悟が必要だ。

しかし、そこに非日常感が生まれるからこそ、「特別すごいチャーハンを作ってやる」と気合が入るのだ。

さて、中華鍋の使い方についても、少しだけ留意点を書いておきたい。

煙がたつまで鍋を熱したあと、油を入れるべきか。それとも、鍋に油を入れたあと、火をつけるべきか。試してみたところ、どちらのやり方で作っても、チャーハンの出来に区別がつけられなかった。

ただ、いずれの場合も、鉄製の中華鍋を使う場合は「油慣らし」という作業が必要になる。

フッ素樹脂加工のフライパンには必要のない工程なので、初耳の人がいるかもしれない。あらかじめ鍋に大量の油をそそいで、鍋肌に油の被膜を作っておくのだ。これをやらないと具材が鍋肌にくっついてしまう可能性がある。

プロの料理人の仕事を見ていると、油ポットから使用済みの油を大量に鍋へ流し込み、鍋肌になじませ、それをすべて油ポットに戻したあと、新たに調理用の油を入れて、炒めに入っている。

料理人のように毎日、大量の油を使う人なら、そういうことができるのだが、一般家庭ではまず無理だろう。そこで本書では最初から規定量23ミリリットルの油を入れ、温度が上がってサラサラになってきたところで、中華ヘラでかきまぜて直径30センチぐらいの範囲に広げ、鍋肌になじませる方法をとることにする。

要は、炒めるのに使う油で、油慣らしもすませてしまうということだ。

さて、ここで最大の課題に取り組むことにしよう。「具材を入れても230~250度以上をたもてるなら、パラパラにできる可能性がある」という考えをもつも、いまだ実現できていない。

事前に材料の温度を上げておけば、鍋に投入したときの温度低下は改善するはずだ。冷やご飯よりも、炊きたてのご飯や、保温しておいたご飯を使うほうが、温度低下は少なかった。

炊きたてご飯と保温ご飯を比べると、水分が飛んでいるぶん、保温ご飯のほうがパラリと仕上がる。悩ましいのは、保温ご飯の温度は70度、炊きたてご飯の温度は100度近くと、かなり差があることである。そのぶん鍋は温度低下するのだから。

だとすれば、保温ご飯の温度を、炊きたてご飯の温度ぐらいまで上げてやればいいのではないか? 電子レンジを使うのである。周富徳は「冷や飯がほぐれやすくなるよう」電子レンジを使えといっていたが、本論では、保温ご飯の温度をさらに上げるために電子レンジを使うわけだ。

電子レンジにかければ、温度が上がるだけではない。水分もさらに飛ぶから、一石二鳥である

5時間保温したご飯230グラムを皿に広げ、600ワットの電子レンジにかけた。いろいろな時間で試したが、炊きたてのご飯と同じ100度近くまでもっていくには、1分40秒でいいとわかった。さらに長い時間かけても、温度はそれ以上に上がらず、部分的に乾いて食感も悪くなるだけだった。

チンしたご飯の重さをはかると218グラム。水分が5%減った計算になる。この数字ならパラパラに貢献するに違いない。

実際に炒めてみる。卵を入れ、ひと呼吸おいてご飯を入れても、温度は180度までしか下がらない。炊きたてのご飯を入れたときと同じだ(まあ、電子レンジで同じ温度にしたのだから、当然だが)。

ただ、水分たっぷりの炊きたてご飯と違い、保温の過程で1%、チンする過程で5%の水分が飛んでいる。これまででいちばんパラリと仕上がった。

もちろん、180度という温度は、目標とする230~250度にとうてい届かない。とはいえ、電子レンジでご飯の温度をこれ以上は上げられないのだから、仕方がない。また別の方法を考えるとして、とりあえずは20度の改善で満足しておこう。

次回は、チャーハンのパラパラ具合を左右する卵の扱いについてお伝えする。

土屋 敦 著 『男のチャーハン道』(日本経済新聞出版社、2018年)第6章「パラパラの邪魔をするのは誰だ」から
土屋 敦(つちや あつし)
ライター 
1969年東京都生まれ。慶応大学経済学部卒業。出版社で週刊誌編集ののち寿退社。京都での主夫生活を経て、中米各国に滞在、ホンジュラスで災害支援NGOを立ち上げる。その後佐渡島で半農生活を送りつつ、情報サイト・オールアバウトの「男の料理」ガイドを務め、雑誌等で書評の執筆を開始。現在は山梨に暮らしながら執筆活動を行うほか、小中学生の教育にも携わる。著書に『なんたって豚の角煮』『男のパスタ道』『男のハンバーグ道』『家飲みを極める』などがある

男のチャーハン道 (日経プレミアシリーズ)

著者 : 土屋 敦
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 918円 (税込み)

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