ひまわり畑、東京都内でも楽しめる 夏にインスタ映え
照りつける夏の日差しによく似合う大輪のひまわり。この花が何万本、何十万本と咲き誇るひまわり畑が、インスタグラム映えする夏のレジャースポットとして人気を集めている。全国的には北海道名寄市や宮城県大崎市、兵庫県佐用町などの広大なひまわり畑が知られているが、実は東京都内でもひまわりの絶景を体験できる。
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東京の花の名所として知られる昭和記念公園。立川市と昭島市にまたがる同公園では近年、園内の「花の丘」近くのひまわり畑が急に人気を集め始めた。真夏の最盛期には約4万本が咲き乱れる。
スマホ片手、女性客が増加
「ひまわりは数年前まで脇役的存在で、必ずしも毎年植えていたわけではなかった」と話すのは昭和記念公園管理センター広報リーダーの鈴木剛之さん。「ここ数年、スマホを片手に持った若い女性を中心に、ひまわり畑を見に来る客が増えた。そこで私たちもひまわり育成に力を入れるようになった」と続ける。
昭和記念公園のひまわりの今年の満開時期は7月27日から8月2日と予想される。この時期には珍しい「サギソウ」の花も楽しめるほか、花火大会(7月28日)や夏休みのイベントも多数開催されており楽しみは広がる。
名所は昭和記念公園だけではない。多摩都市モノレール終点の上北台駅から徒歩10分の場所に、毎年7月中旬から8月上旬まで「ひまわりガーデン武蔵村山」が出現する。広さは近隣のメットライフドーム(西武ドーム)2個分で都内最大級。もともとは都営団地の建て替えで発生した広大な空き地で、東京都武蔵村山市が都から借りている。
観光地に変身、50万輪咲く
「市民の憩いの場としての利用を模索していたが、やがて市民の協働の場として利用できないかと考えるようになった」と武蔵村山市協働推進部観光課の岡野佳子課長は話す。市長や職員らの意見交換の中から出てきたアイデアが、観光名所としてのひまわり畑だった。
「当初は団地を解体した後のがれきが埋まっていて、ひまわりの生育が良くなかった。そこで春に咲く菜の花を植えるなど土壌改善を図ったところ、4年目ぐらいから目に見えてひまわりが良く育つようになった」と岡野課長。今や11品種50万輪が見事に咲き誇るようになった。ひまわりの生育とともに集客も向上した。初年度の2012年で5170人だった期間中来場者が、17年は約6倍の3万人を超えた。
種まきから開催時の案内や交通整理まで、多くの市民ボランティアに支えられ運営されており、地元の農家や商工会も協力して夏のイベントを盛り上げている。
昭和記念公園や、ひまわりガーデン武蔵村山の花が少なくなる月遅れ盆過ぎにオープンするのが、西武池袋線沿線の東京都清瀬市で開催されている「清瀬ひまわりフェスティバル」だ。地元の農家の人々が中心になって運営されており、2万4000平方メートルの農地に約10万本のひまわりが咲き誇る。
月遅れ盆までは農家はなにかと忙しい。そこで種まき時期を遅くして、あえて他のひまわり畑より開花時期を遅らせている。
清瀬市役所産業振興課の中野正明係長は「農家の有志の方々が小麦収穫後の畑を活用した地域振興イベントとして発案したもの。市はあくまでもサポート役に徹している」と話す。種まきは近隣の小学生が協力し、会場付近の交通整理や安全管理はシルバー人材センターのメンバーが担当するなど、武蔵村山市同様に市民協働の場になっている。17年は西武鉄道のキャンペーンもあり、期間中に予想を大幅に超える12万人以上が訪れた。
清瀬市と武蔵村山市は17年7月「ひまわりフレンドシップ協定」を結び、お互いのひまわり畑事業のPRなどで協力していくことになった。2市共同でのひまわりの写真集や動画制作の構想も進んでいるという。
地域の人をつなぎ、街と街をつなぐひまわり。花言葉は「愛慕」「あなただけを見つめる」「あなたを幸福にする」だ。この夏、近くのひまわり畑に足を運んで、家族や友人、恋人同士の絆をあらためて確かめてみてはいかがだろう。
(ライター 大谷 新)
[日本経済新聞夕刊2018年6月23日付]
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