『チコちゃんに叱られる!』 毒舌の5歳児が人気者に

『チコちゃんに叱られる!』(NHK総合)は毒舌な5歳の女の子・チコちゃんが、普段見過ごしている「素朴なギモン」で大人を不意打ちしていくバラエティー。ゲストたちは、「人と別れるときに手を振るのはなぜ」「セピア色のセピアって何?」など、当たり前に受け入れてきたことを聞かれ、答えられないと「ボーっと生きてんじゃねえよ!」と叱られてしまう。2017年に3回特番で放送し、今年4月にレギュラー化された。

CG合成の新手法でチコちゃんの眉毛や目、口元が表情豊かに変わる(金曜午後7時57分、土曜午前8時15分/NHK総合)

ジャンルでいえば雑学クイズだが、知識量で差がつく問題ではないのが特徴。制作統括の水高満氏は、「素朴な疑問に答えられない大人たちを5歳の女の子が叱り飛ばしていったら面白いのではということで、企画が生まれました」と話す。

特番放送時から注目されたのが、正体不明のチコの姿。動きに合わせて表情が変わるため、どのような技術を使っているのかとネットで話題になった。「映像や着ぐるみ、CGなどの案があったなかで、NHKアートの技術担当者やNHK放送技術研究所にも相談して、通常のバラエティーでどこまでできるのかを試していった感じです」

眉毛や目、口元が表情豊かに変わるだけでなく、瞳に映り込むライトや、頭の照り返しなども、動きにぴったりと合っている。NHKアートが開発したCG合成の新しい手法を使っているとのこと。「『あれはどうなっているんだ?』と刺さってくれて、僕らもうれしくて。膨大な時間はかけていないですが、通常よりは早めに収録をして、チコの仕上げというか、メイクの時間を設けています」

MCは岡村隆史、チコちゃんの声は木村祐一が担当

MCは岡村隆史。意外にもNHKのレギュラーは初となる。「大人と子どもの間に立って違和感がない人ということで、初期の段階から岡村さんをイメージしていました。指名して聞いていくので、ともすると一問一答になってしまいますが、クロストークになるのは岡村さんのおかげ。番組の意図を理解して、スタジオを盛り上げてくれています」

ボイスチェンジで女の子の声になっているが、チコの声は木村祐一が担当している。「ぶっつけ本番で問題を出すので、臨機応変に対応できる方が条件でした。毒舌な女の子だけど、思い切りオジサンというギャップも決め手になりました。ゲストの茂木健一郎さんを『ねぇねぇ脳科学』と呼んだり、大竹まことさんとケンカのようにやり合ったり(笑)。木村さんのアドリブもとても楽しいです」

苦労するのは問題の設定。子どもに聞かれても答えられないものをと、スタッフみんなで持ち寄って検討している。「小学校高学年と、その親世代の家族視聴を想定していましたが、チコと同じくらいの子からの反応も良くて。回答VTRはどちらかというと大人向けなのですが、背伸びして見てくれているようです。チコ宛に『髪の毛ってどうして伸びるの?』とか、僕らが考えるよりもっと素朴な疑問が届いています」

フジテレビで「笑う犬」シリーズなどを手掛けた共同テレビの小松純也氏がプロデューサーに名を連ねる。「民放バラエティーのキワを知っている方たちと、企画をはじめ、番組作りすべての過程を共にしました。僕らも勉強になるし、一緒にやってみましょうという実験でもあります」

まずはチコというキャラクターが浸透することを目指す。将来的には、イベントなど、番組の枠を超えて活躍できるよう、技術面も向上させたいと考えているそうだ。

(「日経エンタテインメント」6月号の記事を再構成 文/内藤悦子)

[日経MJ2018年6月22日付]