映画を天井に投影 Ankerのモバイルプロジェクター
戸田覚のデジモノ深掘りレポート
ケーブルやバッテリーで定評があるAnkerが、取り扱う製品を拡大し始めている。最近はスピーカーに力を入れていて、AVにも強いメーカーへと転身しそうな勢いだ。そんな中で、今回は円筒形のモバイルプロジェクター「Anker Nebula Capsule」をリリースしたので、試してみた。
Anker Nebula Capsuleはクラウドファンディングで出資を募った製品だ。価格は3万9800円と、モバイルプロジェクターとしては一般的かちょっと安い程度だ。サイズは直径が68mm、高さが120mmでちょうど350mlの缶ジュースくらい。このサイズが実に微妙で、モバイルプロジェクターとしては全く持ち運びやすくない。鞄に入れることを考えるなら、他の多くの製品同様、同じ容積でも薄型の四角形が好ましい。しかも、470gとちょっと重い。
製品をテストするまではかなり懐疑的だったのだが、実際に使ってみるとこれが実に良いことに気が付いた。
さほど明るくないが夜なら実用的
この手の小型プロジェクターで気になるのが明るさだ。スペックでは100ルーメンと、かなり暗い。プレゼンなどで使う一般的なプロジェクターは、3000ルーメンくらいが当たり前だ。ただ、モバイルプロジェクターの中には、30~50ルーメン程度のモデルもあるので、それらと比べれば実用性は高いといえるだろう。僕の感覚では、部屋を真っ暗にすれば、それなりに使えると思う。
投影サイズは、最大で100インチ相当となっている。60~80インチ程度なら部屋を暗くすれば十分に使える。ただ、解像度は854×480ドットと高くないので、細かな文字を読むのは苦痛。映画の字幕程度なら、どうにかなるだろう。
オートフォーカス機能はないので、ピント合わせは本体横のダイヤルを回す。これはやや面倒だが、モバイルプロジェクターにはぜひ欲しい台形補正(キーストーン補正)機能を搭載しているのは素晴らしいと思う。
予想外にスピーカーがいい
実際に使ってみて、予想外にいいと感じたのがスピーカーだ。5Wのスピーカーを内蔵しているので、一般的なモバイルプロジェクターとは比べものにならない音質だ。コンパクトなBluetoothスピーカーと同等の音質を期待していい。このあたりは、スピーカーを開発した技術が生きているのだろう。単体でスピーカーとして利用するモードも搭載する。
さらに、バッテリーも5200mAhと大容量で、動画再生は4時間(Wi-Fi接続時は3時間)と十分な駆動時間だ。フル充電しておけば、映画1本は見られる。
一般的なモバイルプロジェクターは音が良くないので、「これならテレビ+スマホで見たほうがいいや」と思ってしまう。Anker Nebula Capsuleは、十分に見る気にさせてくれる。モバイルプロジェクターとしては持ちにくい形になったのも、円筒形のスピーカー+大容量バッテリーを搭載するためだろう。なお、本体の裏には三脚に固定するネジがある。少し丈夫な三脚と組み合わせれば、天井に投影できる。
Androidを搭載し単体でも利用可能
パソコンとの接続には、一般的なプロジェクターと同じく、HDMIケーブルを使用する。また、ミラキャストにも対応するので、ワイヤレスでの接続も可能。これも、最近のモバイルプロジェクターに備わっている機能だ。
ただ、最大の特徴は、本体にOS(Android 7.1)を搭載し、単体でコンテンツを投影できること。動画配信サービスなどは、スマホからプロジェクターにミラーリング/キャストができないが、本体に配信サービスのアプリをダウンロードして使えばいい。Amazon(アマゾン)プライム・ビデオとYouTubeをダウンロードして利用してみたが、どちらも問題なく再生できた。他にも、ネットフリックスやTEDが利用できる。
いろいろ試してみたのだが、動画を見るなら、スマホからプロジェクターにわざわざ出力する意味があまりないと感じた。アプリを本体にダウンロードして使うほうがずっと便利だ。付属のリモコンでの操作もいまひとつ。操作用のスマホアプリが用意されており、インストールするとスマホをタッチパッド+キーボードとして利用できるのでこちらのほうがいいだろう。パスワードや映画名の入力なども楽だ。
家庭向けのプロジェクターとして暗くした部屋で使ったり、旅行先に持ち出すなら最高の製品だ。たまに仕事で使う時には、HDMIケーブルでパソコンとつなぐ――そんな使い方をするなら超おすすめ。僕も欲しくなってきた。
1963年生まれのビジネス書作家。著書は120冊以上に上る。パソコンなどのデジタル製品にも造詣が深く、多数の連載記事も持つ。ユーザー視点の辛口評価が好評。近著に、『ここで差がつく! 仕事がデキる人の最速パソコン仕事術』(インプレス)がある。
[日経トレンディネット 2018年6月11日付の記事を再構成]
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