女性役員が語る「女性がつくる未来の働き方」
WOMAN EXPO TOKYO 2018
女性のための総合イベント「WOMAN EXPO TOKYO 2018」(日本経済新聞社、日経BP社主催)が5月19~20日、東京都内で開かれた。キャリアや教養、健康・美容をテーマに講演などを開催。19日の基調講演では、グーグル日本法人専務執行役員でCMO(最高マーケティング責任者)の岩村水樹さんとカルビーの上級執行役員事業開発本部本部長の鎌田由美子さんが「女性がつくる未来の働き方」について語り合った。
(文中敬称略)
司会 まず、ご自身のキャリアでの転機は。
鎌田 大学卒業後、JR東日本に入社。同社が初めて文系女性を採用した年だった。最初の転機は35歳。(自身が仕掛け人となったことで知られる)「エキナカ」の前身となるプロジェクトのチームが発足し、コンセプトから考えた。寝食を忘れて仕事に没頭する日々で学びが多かった。次は39歳で子会社の社長をやったこと。さらに42歳で異動し地域活性化の仕事にのめり込んだ経験や、48歳でカルチャーが全く違うカルビーに初めて転職したのも大きなターニングポイントだ。
岩村 小学校高学年から中学生までドイツで過ごし欧州の文化に触れた体験から、情報や知識の流通が大切と考え、電通に入社。その後、インターネットが普及し米国に留学したことが大きな転機になった。さらに変化の海を泳ぎ続けたいと高級ブランドの最高経営責任者(CEO)、ネットベンチャーなどを経験。面白かったが、人生半ばぐらいになり、もう一度もともと持っていた情報や知識の流通への関心に突き動かされ、グーグルの扉をたたいた。
司会 お二人とも働き方改革の先進企業で働いています。働き方は以前とどう変わってきていますか。
鎌田 カルビーでは管理職でも「どうしても商品開発をやりたい」など希望があれば、役職を外れ異動できる。部長だった人が翌年、肩書がないこともある。反対にポストアップに若手がチャレンジすることも。人事が非常に面白い。
岩村 グーグルには技術を活用して柔軟で効率の良い働き方を支援する「ウーマンウィル」という活動がある。目指すのは日本の働き方を「ワークハード」から「ワーク・スマート&リブ・ハッピー」にすること。いつでもどこでも集団作業も含めてこなせるようにすることで、多様な生き方、働き方が可能になり、社内の女性の産後復帰は100%になった。
隙間時間の活用で効率も上がり、この活動に賛同するサポーター企業は約1100社に広がった。さらに働き方改革の方法を広める狙いで実証実験「未来の働き方トライアル」も実施。これは在宅勤務、業務の効率化、退社時間を計画することが3本柱だ。インターネットを通じ「働き方改革実践トレーニング」も公開中なので活用してほしい。
鎌田 カルビーにもテレワーク制度があり、職場は個人の固定席がないフリーアドレス制だ。導入の狙いは、社外に出て交流し新しいビジネスを構築しようということ。一方、上司と部下は期首に成果目標について契約書を結ぶ非常に厳しい制度もある。管理職以上は全社に結果が公開され、事業部として結果が出せないと一蓮托生(いちれんたくしょう)で査定が下がる。ギリギリとくる部分はあるが、働き方は自由だ。
司会 これからの働き方について、女性に助言を。
岩村 働き方を変えるには職場のカルチャーも重要。職場のリーダーなど影響力を持つ女性には、誰もが安心して自分らしく発言できる心理的安全性のある職場づくりを目指してほしい。そうした環境にするために、自らも少しだけ弱みを見せてみよう。すると分からないことは聞いてもいいんだという雰囲気が生まれる。子育て中の人は職場で共有するスケジュール表に「保育園に迎えに行く」と堂々と書こう。同様に育児のことも書いていいんだとなって少しずつ変化が生まれていく。皆さんの小さな一歩が働き方改革につながる。
鎌田 悩むことや迷うこともあると思うが、焦らず目の前のことをしっかりやってほしい。絶対結果はついてくる。加えて疑問を感じることをやめないでほしい。おかしいと思うことはやはりおかしいはず。慣れが一番怖い。仲間を増やしながら一歩ずつ変えていってもらいたい。自分の歩みに自信を持ちながら挑戦し続けてほしい。
[日本経済新聞朝刊2018年6月19日付]
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