写真はイメージ=123RF一人で暮らす高齢者、いわゆる「お一人さま老後」は増えているようです。これは生涯未婚率の上昇という現象にも表れています。生涯未婚率とは50歳までに一度も結婚したことのない男女を指しますが、2015年の国勢調査では男性で23.37%、女性で14.06%となっています。
つまり、およそ男性の4人に1人、女性の7人に1人が一度も結婚をしていないということであり、10年に比べても男女ともに3%強増加しています。仮に結婚していても、長寿化が進む現在においてはどちらかに先立たれてお一人さまになるというケースも増えるでしょう。
「一人暮らしの老人」という言葉からは寂しげな語感が漂いますが、必ずしもそういうわけではありません。実際に単身世帯の高齢者の方とお話をする機会もありますが、案外元気に楽しくやっている方が多いことに驚きます。特に女性の方が楽しそうです。女性の一人暮らしの方は夫と暮らしていたときより元気になるとよくいわれます。これには理由があると私は思っています。
■男性はヨコ社会でのコミュニケーションが苦手
元気に暮らしているお年寄りには共通点があります。それは人とのつながりを大切にしているということです。一人暮らしの高齢女性が元気なのはこの人とのつながり、すなわちコミュニケーション力が優れているからではないでしょうか。女性は子どもを通じて知り合いになるママ友など、男性にはないつながりの場があるからです。
男性の場合、個人差はあるものの一般的には女性に比べるとコミュニケーション能力はかなり劣っているといわざるを得ません。特に会社の組織のようなタテ社会でのコミュニケーションはともかく、ヨコ社会となると非常に苦手な人が多いように思います。男性がお一人さま老後に備えるには、ヨコ社会でのコミュニケーション力を身につける必要があるでしょう。
会社以外の交遊関係を増やすのはいうに及びませんが、発想の転換も必要です。一人を「孤独」とか「寂しい」と考えるのではなく、「気楽に過ごせる」と気持ちを切り替えましょう。もちろん、長年にわたって持ち続けてきた自分の価値観を変えるというのは大変かもしれません。
かくいう私もいわゆる熟年離婚経験者で、子供たちが独立した後、50代の大半をお一人さまで過ごしました。一人暮らしというのは慣れてくるとそれなりの過ごし方が身に付いてきて気楽で楽しいものです。
以前に「定年後のシニアなら 独りで過ごす時間が多くてもいい」(18年2月8日付)で書いたように、一人でいることと孤独であることは違います。仮にお一人さまであったとしても楽しく付き合える関係が多ければ、それはきわめて充実したシニアライフといえるでしょう。
■寿命が長い女性は老後資金づくりに励む必要
一方で、女性のお一人さまも問題がないわけではありません。よく老後の三大不安は「お金」「健康」「孤独」といわれますが、このうち健康は共通の不安でしょうから、男女の差はないと思います。前述のように私は男性にとっての不安は「孤独」、女性にとっての不安は「お金」と考えています。
長く会社勤めをしていた男性なら、お一人さまでも年金も退職金もありますから、生活に困窮するということはあまりないでしょう。しかしながら、女性のお一人さまの場合は男性ほどは年金などを受け取れないケースが多いものです。男性ほどは生涯賃金が高くないことなどが理由です。しかも、女性は男性より平均寿命が長いため、老後費用は余計にかかると思います。
65歳以上で配偶者がいない人の割合は男性は約2割、女性は約5割とシングル女性の比率が倍以上になります(15年の国勢調査のデータから筆者が算出)。これは夫に先立たれた女性が多いということを示していますが、女性は結婚していてもしていなくても最後はお一人さまになる可能性が高いのです。子育てを終えた後は共働きをしたりして、老後資金づくりに励むなど、女性はお一人さまの老後への備えをしておくことが大切です。
大江英樹野村証券で確定拠出年金加入者40万人以上の投資教育に携わる。退職後の2012年にオフィス・リベルタスを設立。著書に「定年男子 定年女子 45歳から始める『金持ち老後』入門!」(共著、日経BP)など。http://www.officelibertas.co.jp/ 本コンテンツの無断転載、配信、共有利用を禁止します。