きっかけは犯罪調査 ベスビオ噴火で埋まった馬を発見
イタリア南部、ポンペイ遺跡ほど近くの古代の住宅跡で、火山灰に埋まった馬の痕が1頭見つかった。この発見は2018年5月に公表されたが、このたび、同じ場所に馬が3頭はいたことも発表された。
2頭には馬具がつけられており、紀元79年の夏、古代ローマの都市を地中に埋めたベスビオ火山の大噴火で、真夜中過ぎにポンペイとその周辺を襲った火砕流から、人々が避難しようとしていたことをうかがわせる。
映像のような馬1頭の完全な石膏像が作られたのは、ポンペイ遺跡では初めてだ。火山が噴火したとき、この都市の住人と動物の多くは非常に高熱の有毒ガスと火山灰にのみ込まれ、その場に倒れた。埋もれた遺骸はやがて朽ちてなくなり、固まった火山灰の中に空洞だけが残る。19世紀後半、考古学者はこの空洞に石膏を流し込み、死者の姿を詳細に再現する方法を考案したのだ。
発掘チームは、近くで発見された別の馬の脚2本の石膏像も作った。しかし、この馬の残りの部分の空洞は、すでに盗掘人によって破壊されていた。現地で「トンバロリ」と呼ばれる盗掘人は、闇市場で売れそうな遺物を盗み出すため、屋敷を囲む壁の回りにトンネルを掘っていたようだ。
馬が見つかったチヴィタ・ジュリアーナ地区にある屋敷跡は、古都ポンペイの近くで20世紀初頭に発見された。1950年代に一部が発掘されたが、その後は封印され放置されていた。17年夏にトンバロリによって掘られたトンネルが捜査員によって見つかり、知らせをきいたポンペイ考古学公園の学者が、それまで知られていなかった馬小屋付近の発掘を行った。
イタリア当局は、その後ナショナル ジオグラフィックの問い合わせに対して、今回の発見が「アルテミス作戦」として知られる、イタリアの国家憲兵「カラビニエリ」による大規模な犯罪捜査がきっかけだったことを認めた。
2015年前半までに、この作戦では22の県で、早朝に強制捜査が一斉に行われ、トンバロリ、違法な美術商、マフィアなど、140人を超す被疑者が逮捕された。捜査チームは、違法に発掘された壺、硬貨、建築物の一部など、約2000点の古代遺物を回収している。
(日経ナショナル ジオグラフィック社)
[ナショナル ジオグラフィック 2018年5月29日付記事を再構成]
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