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悩まず相談して「ノー」 セクハラ根絶へできること 有識者2人に聞く

2018/6/19 日本経済新聞 朝刊

NPO法人GEWELアドバイザリーボード主席のアキレス美知子さん(左)と社会学者の水無田気流さん

政府が12日に出した「女性活躍加速のための重点方針」の柱にセクハラ根絶対策の推進が盛り込まれた。日本経済新聞社が6月上旬にインターネットで働く女性らに緊急調査したところ「セクハラは減ると思わない」が4割と依然高かった。根絶には社会全体の意識改革が急務だが、女性自身も自ら行動できることがある。社会学者で詩人の水無田気流さんと外資系企業の経営幹部で、多様な人材の活躍を支援するNPO法人GEWEL(ジュエル、東京・品川)のアドバイザリーボード主席のアキレス美知子さんに話してもらった。(文中敬称略)

◇   ◇   ◇

■部下の不満に気づこう 水無田気流氏

水無田 私も独自に職場のダイバーシティ(人材の多様性)について調査しており、健全な職場環境や働く人の仕事への意欲を大幅に下げかねないセクハラ問題について尋ねている。やはり根絶は難しいという結果になりそうだ。

一因には日本の雇用流動性の低さがある。社員は仲間意識の強いメンバーシップ型の「会社村」の住人。同じ会社で継続雇用される方が収入も上がるため、欧米のように転職して収入が上がっていくような強者(つわもの)は限られる。村八分を恐れるあまり、沈黙を選ぶことも少なくない。セクハラ問題は根深く、相対的な女性の地位の低さも絡み合っていると思う。

外資系企業などで人事・人材開発の要職を務めた後、あおぞら銀行資生堂で執行役員に。現職はSAPジャパン(東京・千代田)のバイスプレジデント

アキレス 女性自身ができることもある。まずは日ごろの防衛策。例えば「宴席は1次会のみ。人数が絞られる2次会は行かない」など自分なりのルールを決めておくといい。飲み会でのお酌についても、若い女性がやってしまうと、そういう役割だと思い込まれる危険性がある。「私、しないので」と表明していい。

随分前だが、会食の席で店の人が私の前にばかり料理を置いていく場面があった。女性は私1人。料理の取り分け役を期待されてのことだ。違和感を覚えながらやろうとすると、上司が察知し「無理しないでいい」と言ってくれた。すると周りの男性たちが「やります」と動いた。上司の一言が無ければ「女性=取り分け役」が根付いていただろう。上司や周囲が「違和感」に気づくことも大切だ。

水無田 私は「ヒラメカレイ型管理職」と呼んでいるが、上しか見ないで下の者の不満に気づかない上司では、今後人材管理に行き詰まる懸念がある。女性や外国人ら多様な人が職場に増えると、男性中心の均質な職場で通用した「お前もいずれ行く道だから背中をみて学べ」は通じなくなる。私の調査でも責任を下に押しつけるなど理不尽な上司に部下は厳しい。ダイバーシティマネジメントでは、部下に対する甘えが許されない。ハラスメントについても、合理的に裁ける能力が今以上に必要となる。

■自分の価値は仕事で示す アキレス美知子氏

アキレス 同感だ。ダイバーシティマネジメントの基本は3つ。相手に対する尊重(Respect)、相手の立場でものをみる想像力(Empathy)、ぶれない誠実さ(Integrity)だ。働く女性自身についていえば、気遣いなど、いわゆる「女子力」ではなく「自分の価値は仕事で示す」を実践してほしい。それには若いうちから一生懸命仕事に取り組み「市場価値の高い人財」になることだろう。

詩人、社会学者。詩集「音速平和」で中原中也賞、「Z境」で晩翠賞受賞。国学院大学経済学部教授。専門は文化社会学・ジェンダー論

水無田 現状では、出世の階段は圧倒的に男性に開かれている。課長職20%割合の達成は、男性の場合だと同じ会社に勤め続けて11~15年以内だが、女性は30年以上という統計もある。しかも同じ職位の男女で比べると、女性の方が男性以上に日常的な長時間労働が出世要件になっているとの指摘もある。この差はとても大きいように思う。

さらに気になることがある。亡くなった電通の若い女性社員は「女子力が低い」と相当に上司から批判されていたという。そんなことがビジネス上のスキルと等価に批判されるような状況がまだある。懸命に仕事をすることで跳ね返そうとして力尽きてしまうのは深刻な問題だ。だが、ハラスメントだと主張する一歩がなかなか踏み出せない。

アキレス セクハラだと感じることを受けたとき、ポイントは3つある。まずは1人で悩まないこと。公的な相談窓口もあり、電話1本で相談できる。次にノーを言う意思表示だ。なぜ相談が先かといえばセクハラかどうか判断がつかないことも多いからだ。相談すれば、専門的な知識を持った人が助言もくれる。その結果、笑って受け流すといった処世術ではなく、確信を持ってノーといえる。3つ目は一連の経緯について記録に残しておくことだ。

以前、コンプライアンスを担当した際、学んだことがある。それはコンプライアンスとは単なる法令順守ではなく環境変化への適切な対応だということ。企業は、健全な職場づくりのためには、法令違反でなくても、社会一般からみて「おかしい」とされることには対応する必要がある。

水無田 健全な対応ができるようになった先に、創造的な未来がある。それは、職場だけでなく家庭や地域社会でも、性別を問わず人間として幸福に協業していく未来だと思う。

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