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宇都宮の小さな蔵が世界SAKE評価で輝き 虎屋本店 ぶらり日本酒蔵めぐり(1)

2018/6/21

生産する銘柄を絞り込み、質を追求している虎屋本店

栃木県庁のすぐそばに、ビルに囲まれてたたずむ、創業230年の酒蔵、虎屋本店がある。近江の五個荘(現・滋賀県東近江市)にルーツを持つ近江商人が、かつては宿場町でもあり、いまは県都としてにぎわう宇都宮で、酒造りの伝統をつないできた。

大きなコイたちがすみつく小さな水路に面した簡素な門構えのこの蔵は、ここ数年、全国新酒鑑評会や国際的なワイン品評会で高い評価を受けるなど、上質の日本酒を世に送り出す造り手として輝きを放っている。

ビルに囲まれてたたずむ虎屋本店

2018年5月、虎屋本店は相次ぐ朗報に沸いた。まず国際ワイン品評会、インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)の審査結果。出品した「七水55 純米吟醸」「菊 純米大吟醸~栃木の紅菊」「菊 純米大吟醸」のすべてが金メダルに輝いた。下旬には平成29酒造年度全国新酒鑑評会の結果がもたらされ、3年ぶりに金賞を獲得した。

IWCは1984年からロンドンで開かれている世界最大規模のワイン品評会。2007年から「SAKE部門」が設けられた。純米、純米大吟醸、本醸造、スパークリングなど9つのカテゴリーに分けて審査し、トロフィー、金、銀、銅などに格付けして表彰する。審査には世界のワインの専門家も参加、国内の品評会に比べて出品酒の持つ長所に焦点を当てるのが特徴とされる。

年間にいくつもある品評会の中で、虎屋本店は今、IWCに特に力を入れているのだという。IWCには昨年度、初めて出品。純米大吟醸のカテゴリーで最高賞の「トロフィー」を受賞した。営業部長の小堀敦さんは「宣伝効果は絶大だった」と振り返る。

受賞がきっかけとなり、ドバイの高級レストランから引き合いが来た。外務省からも発注が舞い込んだ。ポーランドとアンゴラの在外公館に配備するという。「シンガポールや台湾の商社からもオファーがある。IWCへの注目度を身をもって知った」(小堀さん)

虎屋本店の生産量は200~250石(一升瓶で2万~2万5000本)。小規模な蔵だ。付加価値の高い吟醸酒などの生産に注力する。東京都や神奈川県、関西圏にそれぞれ5~10軒の特約店があり出荷しているが、大半は地元消費に回る。

輸出はまだ「(出荷量の)5%程度」(小堀さん)という。それでも社長の松井保夫さんは「輸出はおもしろい」と力を込める。新しい販路や取引先ができてゆくさまには、成熟が進んだ国内市場にはない躍動感がある。

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