緩和終了に向かう欧州、債券投資のチャンス到来か世界のどこに投資する?(22)欧州債券

2018/6/22
欧州中央銀行は6月14日、量的緩和政策を2018年中に終了する方針を決めた=AP
欧州中央銀行は6月14日、量的緩和政策を2018年中に終了する方針を決めた=AP

長く続いた欧州の金融緩和政策が転機を迎えている。欧州中央銀行(ECB)は量的緩和の年内終了を打ち出し、その先には利上げの可能性も現実味を帯びる。一方、イタリアの政局混乱で、同国の長期金利が5月下旬と6月上旬に一時3%を突破する場面があり、欧州の政治情勢は無視できない。欧州経済は世界全体の約2割の規模があり、相場動向には個人は無縁でない。HSBCグローバル・アセット・マネジメントでの欧州債券を運用するシニア・プロダクト・スペシャリスト、パスカル・ヒュアード氏に見通しを聞いた。

――ユーロ圏の経済動向をどう見ますか。

「2011~13年の国債危機を受け、ユーロ圏経済は米国に比べて回復が遅れていた。その後の回復はスピードも含めて順調だ。フランスやスペイン、イタリアでは雇用改革が進み、失業率は低下した。消費環境は良好だ」

――イタリアでの政局混乱の影響をどう見ますか。

「国債利回りの上昇は落ち着いたものの、中期的には不透明感が残る。だが大枠では投資戦略は変えておらず、ユーロ圏の強さを前提に債券の保有を持続する」

HSBCグローバル・アセット・マネジメントで欧州債券を運用するシニア・プロダクト・スペシャリスト、パスカル・ヒュアード氏は「ECBの量的緩和縮小はグッドニュース」と語る

――ECBは年内に量的緩和政策を終了する方針です。

「金融緩和の縮小は続く。ECBは国債などの購入額を月800億ユーロから600億ユーロに減らし、さらに18年1月に300億ユーロに減らした。ECBが国債購入をやめるテーパリング(量的緩和縮小)を進めても、市場環境は変化しないだろう。テーパリングの開始はゲームチェンジャーではなくグッドニュースだ」

――債券投資についてどんな運用方針を立てていますか。

「年初は、イタリア国債を割高と評価し、比率を低めにしていた。それが利回りが上昇(債券価格は下落)したので、運用比率を戻している。政治安定に向けた次のプラス材料を待ち、基本的には保有維持の姿勢を維持する」

「欧州の金利の正常化は進む。ドイツ10年物国債利回りは長期で見て下がり続けているが、後に上昇すると見ている。景気循環的なインフレも起こるだろう」

――欧州企業の発行する社債への投資は。

「社債は信用力の差で利回りが分かれる傾向が鮮明だ。スプレッド(国債との利回り差)は全般に縮小しているが、シングルA格とトリプルB格との差は開いている。ボラティリティーが上昇していき、積極投資で利回りを稼ぐ投資家には好都合だ。リスクをとりつつ、レバレッジをかけられ、戦略的な投資がしやすくなっている」

「欧州企業の収益は良好さを取り戻しつつある。営業利益の伸びは米国に追い付きはじめ、差は縮まる。一方、米国企業の借入比率は高いが、欧州は米国ほどではない。キャッシュフローは潤沢で、負債比率は低下し、インタレスト・カバレッジ・レシオ(金融費用に対する事業利益の比率)は改善している。格上げ企業の割合も高い」

――欧州債券の投資魅力は長続きしますか。

「ユーロは低利回りといわれてきたが、今年末以降、金融緩和の縮小が進めば環境は変わる。欧州債券、特に社債市場は企業のデフォルト(債務不履行)率が低いので、投資を始めるのに良い環境といえる。積極的にリスクをとる相場となり、アクティブ運用者にとって柔軟な戦略がとれる。欧州の債券を投資対象として検討すべき時期だ」

記者の目

欧州の金利がゼロに近くなり、米国や新興国に比べた投資妙味が薄れて久しい。外貨預金金利はゼロに近く、外貨建てMMF(マネー・マーケット・ファンド)も運用難に陥っている。

だがヒュアードさんのようなプロは、金融緩和縮小・利上げ開始を前に早くも動き出しているようだ。2010年代初頭からギリシャ危機などの欧州不安が報じられ、今回のイタリアの政局混乱による一時の市場混乱も「また欧州不安か」と受け止められがちだが、欧州の経済指標や政府債務を冷静に見極める目が必要だろう。

(マネー報道部 南毅)

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