五輪が広げる「禁煙ドミノ」 都周辺も国より厳しく従業員雇う飲食店、千葉市が規制する方向で検討

幕張メッセが東京五輪・パラリンピックの競技会場となっている千葉市は、東京都と同様の禁煙条例を検討している
幕張メッセが東京五輪・パラリンピックの競技会場となっている千葉市は、東京都と同様の禁煙条例を検討している

東京都が条例で制定した国より厳しい喫煙規制が、2020年東京五輪・パラリンピックの競技会場がある周辺の自治体に広がる可能性が出てきた。千葉市は都と同様に、従業員を雇う飲食店を原則屋内禁煙にする方向で検討に入った。早ければ9月議会に条例案を提出する。五輪開催地として求められる基準を満たすためで、横浜市やさいたま市などの判断にも影響を与えそうだ。

千葉市内では条例に先んじて、受動喫煙対策を取り始めた飲食店も

千葉市が検討に入った受動喫煙防止条例案では、従業員のいる飲食店は原則屋内禁煙とする。政府が国会に提出した健康増進法改正案では、客席面積100平方メートル以下は店内喫煙が可能だが、千葉市の条例案は面積にかかわらず禁煙とする方向。煙を遮断するブース内での紙巻きたばこの喫煙は認めるものの、飲食はできない方向で調整する。加熱式たばこについては屋内禁煙の対象外とするほか、ブースの設置費用について市独自の助成も検討する。

主な規制内容は、東京都の6月議会で成立した受動喫煙防止条例と同様だ。20年東京五輪の開催地として足並みをそろえることで、国際オリンピック委員会(IOC)が掲げる「たばこのない五輪」実現を自治体レベルで推進する。設置費用の助成規模や、違反した場合の過料などは今後詰める。

熊谷俊人市長は17年12月の市議会本会議で、受動喫煙防止条例を制定する方針を表明。18年6月15日の市議会本会議では、「未成年者や労働者を守る視点で対策を検討する」と強調した。関係者によると、熊谷市長は都が条例案を公表する前から「客席面積での線引きは難しい。人に着目した規制にすべきだ」と市幹部に伝え、従業員の労働環境などを考慮した条例案の内容を議論してきたという。

20年東京五輪・パラリンピックでは、千葉市の幕張メッセが競技会場となる。フェンシング、レスリング、テコンドーの五輪3競技と、車いすフェンシング、テコンドー、ゴールボール、シッティングバレーボールのパラ4競技が予定されている。熊谷市長は市議会で「(受動喫煙対策は)五輪・パラリンピックの開催都市として環境を整備するために重要」と述べた。

市議会では全会派が、国の対策が不十分で実効性のある市独自の対策を求める申し入れ書を熊谷市長に提出している。条例案が提出されれば成立する公算が大きい。

市内には飲食店や喫茶店が約1万店あるが、すでに対策を取る飲食店もある。市内で7店を営業する回転すし店「すし銚子丸」は10年ほど前から全店舗を屋内全面禁煙とする。「個室がなく、すしの風味をたばこの煙で損ねてしまう」との判断があり、条例制定も「影響はない」と冷静だ。

今後は、五輪・パラリンピックの開催地となっているほかの自治体の対応に注目が集まる。サーフィンの会場である千葉県一宮町は「国や他の開催都市の動向を見ながら、取り入れられる所は取り入れる」(オリンピック推進課)方針。ただ、同町には小規模な飲食店が多く一律の規制は経営への打撃が大きいため「事業主の判断に委ねるしかない」とする。横浜市やさいたま市も五輪の競技会場を抱えている。

[日本経済新聞朝刊2018年6月15日付、16日付を再構成]