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まず20m全力で逃げる 夏休みの子を犯罪者から守る

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日経DUAL

わいせつ目的の誘拐未遂など子どもを狙った犯罪は後を絶ちません。子どもの安全研究活動を手掛けているステップ総合研究所の清永奈穂さんは、「20m先をしっかり見て歩く、危ないと思ったらすぐに20m全力で逃げる、そして声を出す」ことを子どもに教えることが大切と話します。

「いたずらにこわがるのではなく、まず悪いことをしようとする人の気質や心理、行動を知ってください」と言います。子どもを狙う人はどんな人なのか、また、犯罪者の心理状態、行動のパターンはどのようなものなのか、犯罪者の5つの特徴からあやしい人を見分ける「はちみつじまん」という防犯標語と併せて清永さんに話を聞きました。

◇  ◇  ◇

子どもを狙う犯罪者は犯行時におびえている

2018年4月、新潟県新潟市の小2の女の子が1人で下校中に自宅付近で行方不明になり、遺体がJR越後線の線路に遺棄された事件は、子どもを持つ日本中の親を震撼させました。親をはじめとする大人がスクラムを組み、この地域の子どもを一人も被害者にさせない。その強い意志をもって、子どもを守るためにはどうすればいいのでしょうか。

「子どもを狙う者をはじめとする犯罪者は、実行にうつすときには『捕まらないだろうか』『失敗しないだろうか』という気持ちが隣り合わせにあり、実はおびえていることがほとんどです。大人のみなさんはまずこの心理を覚えておいてください」。清永さんはそう言います。

犯罪者の気質:6つの一般的特徴
(1)いかなる犯罪者でも犯行時はおびえている
(2)プロになるほど高い知能・技術・豊富な情報をもっている(常時学習)
(3)高い偏執性・妄想性
(4)社会や周辺への強い被害意識ー復讐心
(5)巧みな自己弁護ー強い中和の精神
(6)あきらめ悪く、隙あれば何度でも繰り返し襲い、みえはり

「文部科学省「質の高い教員養成GP研究」(日本女子大学清永研究室)での元犯罪者261名への調査分析と実際に路上で元犯罪者と行った実験から、(1)犯罪者はターゲットから20m離れたところから狙っている、(2)犯罪者は20m追いかけてもターゲットに追い付かなければあきらめるということが分かったそうです。

「犯罪者は走り始めの4mまでは最初の『やる気』が続きますが、8mを過ぎると『無理かな』という気持ちが生じ、さらに10mを超えると『がくっ』とやる気が落ち、16m前後で『駄目かな?』と思い、20mで完全にあきらめます。つまり、20m先まで逃げることが必要になります。犯罪者は、ターゲットを追いかけていくうちに『誰かに見つかって捕まるのではないか』という心理が働いてくる、その気持ちになる20mまで一生懸命走ること。逆に言うと、どこまでも走らなければならないのかと、子どもたちに最初から逃げることをあきらめさせないためにもこの距離は教えてあげてほしいのです」

危ないと思ったら、声を出す、抵抗する、逃げる

また、ランドセルを背負っている場合は犯罪者の6m手前から、何も持っていない場合でも4m手前から走り出さなければ、20m逃げ切れないことも実験からわかりました。いずれにせよ、犯罪者の手が届く直前に逃げ始めたのでは、もう遅いのです。

「ですから、まずは20m先をしっかり見て歩く。そして、危ないと思ったら、すぐに逃げることが大事です。お子さんにいざという時は、かばんを捨ててでも逃げていいと教えてあげてください」と清永さん。「それからもう一つ教えてほしいことがあります」

「それは声を出すことです」

子どもを狙っている人は『音』を嫌います。これも警察に捕まりたくないからです。そのため彼らは声をかけられたり、声を出されたりするのを非常に嫌がります。そしてただ声を出すだけではなく、身振り手振りをつけて全身で危機を知らせること。声には威嚇効果もありますし、また周囲に危機を知らせる大きな武器になります」

「子どもは非力で、大人には太刀打ちできないように思うかもしれません。悪意を持って近づいてくるあやしい人には、大人でさえひるむかもしれません。けれども『声を出す』ことで相手の弱点をつき、抵抗したり、逃げたりすれば、自分の力でピンチを断ち切ることも可能です。もちろん周囲にいる大人に助けを求めることも大切です」

子どもは一人になったときに狙われる

清永さんによると、子どもを狙って悪さをしようとしている人は、『捕まらないだろうか』『失敗しないだろうか』という心理が働いているので、そのリスクを減らしたいがために入念な下調べをするといいます。

・子どもが一人になる時間帯や場所を調べる

・確実にまわりの人目がなくなる時間帯や場所を調べる

・逃走経路を確保する

代表的なのが以上の3つです。実際に子どもを狙った過去の事件を振り返ると、子どもが一人になるほんのわずかな時間や場所を狙って犯行に及んでいるケースが大半です。犯罪者は、誰かを連れ去ろうと計画し、その計画を実行しようと思いながら町を下見します。そして、(1)好みの子どもが現れた、(2)逃げ道が確保できる、(3)ちょうど誰も見ておらず、近づきやすい、と思ったら、「今だ!」と一気に犯行に及ぶのです。

「一方で、特定の子どもが狙われ、襲われることもあります。例えば、『いつもは親が迎えに行っていたのに、連れ去られた日は下の子が熱を出して、どうしても迎えに行くことができなかった』というようなケースもありました。ほんの少しの隙を狙われるのです」子どもを守る側の大人としては死角をつかれたような気持ちになりますが、清永さんはこう言います。「このような事件は、偶然に起こったというより、ある子どもに狙いを定めたら念入りに準備を重ね、その子どもが一人になる瞬間(機会)をじっと待ち続けていた結果です。何日もチャンスを待ち続け、よし、今日は親がいないぞ、『今だ!』と、犯行に踏み切ったのでしょう」

犯罪者は、常に情報をキャッチアップしている

清永さんによると、子どもを狙う者はベテランになればなるほど、声かけや連れ去りに関する高い知識、技術、情報を持っていて、極めて合理的に犯行に及ぶと言います。「以前は、現場に足を運び車や徒歩で下見をしている者がほとんどでしたが、最近は、インターネットを駆使して、犯行の準備をするケースも増えています。インターネットの地図情報を使い、どこで子どもを連れ去るかを調べたり、SNSを通して、子どもと知り合いになっておくというケースも増えてきました。道ばたで子どもに声をかけて仲良くなるよりも、SNSを使って知り合いになり、子どもから会いに来させて連れ出すほうが、人に見られるリスクが少ないというわけです」

親は24時間体制で子どもに付き添うわけにいきません。しかもSNSを使い、親の知り得ないところで子どもが見知らぬ人と接触している可能性さえあるのです。もうお手上げのように思えますが、どうしたらよいのでしょうか。

「大人の見守りにも限界があるということを踏まえなくてはいけません。だからこそ、子ども自身が自分で自分を守る力をつけていくことが大切です」

接点ができると、子どもの力だけでは逃げることが難しくなる

清永さんによると、子どもを狙った犯罪は突然起きることは少なく、いくつかの段階を踏み、子どもとの距離が縮まって、気持ちが高まってくることで起こることが多いそう。実際にあった「距離の縮め方」にはこんな例があります。

1日目

小学生の女の子が犬の散歩をするために一人で自宅マンションを出ると、電信柱の近くに「一人でお散歩? えらいね」と声をかけてくれる優しそうな青年がいた。「夕方だから、着いて行ってあげようか?」と言われたが、女の子は「いえ、いいです」と断った。青年はそれ以上、何も言わなかったので、女の子は1人で散歩に出かけた。

2日目

翌日も女の子が1人で犬の散歩に出かけると、昨日の青年がいて、「今日もお散歩? えらいね。おうちはすぐそこなの? 帰り道だけ一緒に行こうか?」と声をかけてきた。昨日は「いいです」と断ったが、悪い人ではないのかなと思い、帰り道だけマンションの前まで青年に送ってもらった。

3日目

女の子が一人で犬の散歩へ出かけると、やはり同じ場所に青年がいた。青年はこの日も帰り道だけ一緒に来てくれたが、昨日と違ってマンションのエントランスに入り、エレベーターも一緒に乗って、家の前まで送ってきた。女の子がこのとき初めて母親に「そこまで青年に送ってもらったよ」と言ったことから、心配になった母親が110番した。

ここまでの状況だけなら「つきまとい」ですが、もしも家に母親がいなければ侵入されていたかもしれません。この青年は女の子に狙いを定め、おそらく、毎日犬の散歩に出かけることを突き止めたのでしょう。そして、マンションの出入り口でじっと待ち、話しかけたり、近づく機会を待っていたのです。

「豊富な情報量と手口を駆使した彼らは、このようにごく自然に子どもに接近してきます。この子にはどういう声掛けと接近方法が良いのか、下準備を十分しています」と、清永さんは言います。だんだんと距離がちぢまったことで、知らない青年だったはずの人が、顔見知りの青年になっていく。知らない人に着いていってはいけないとわかっている子でも、その青年はもう知らない人ではありません。いつも犬の散歩に着いてきてくれる、やさしい青年です。

「このように子どもに狙いを定め、意図的にやさしくしてくる人といったん接触してしまうと、子ども自身の力で逃げることがどんどん難しくなります」と清永さん。「その距離を縮められないようにするには、子ども自身がそのことをしっかり意識して、外を歩くことが大事です」といいます。

あやしい人を見分ける標語「はちみつじまん」

あやしい人を見分ける標語があります。それがステップ総合研究所が考案した「はちみつじまん(あやしい人の5つの特徴)」です。5つの特徴はまさに、上記の事件に当てはまると思いませんか?

はちみつじまん(あやしい人の5つの特徴)


・しつこくなにかと「は」なしかける
・理由もないのに「ち」かづいてくる
・あなたが来るのを道のはしや車のかげで じっと「み」つめてくる
・いつまでもどこまでも「つ」いてくる
・あなたがくるのを「じ」っと「ま」っている
・こういう人に会ったら「ん?」と注意

子どもの周りのだれもかれもが犯罪者ではありません。困った時に助けてくれる人はたくさんいます。「でも、『ときどき<はちみつじまん>に当てはまる人がいるかもしれないんだよ』という考え方を基本として教えてあげてください」と清永さんはアドバイスします。「一線を越えてくる怪しい行動に子どもが自分で気づくことができるようにするには、周りをよく見ること、そしてたくさんの親切な人と接することが大切です」と清永さん。

親子間の約束で、逃げる・断る力を育てよう

清永さんは「子どもたちが自分の身を守るために大事なのは、断ち切る力をつけることです」と力説します。「不審な人と接触しないようにするため、万一接触してしまったときのために、親子で次のような約束事を作っておきましょう」と提唱します。

●前の方にあやしい人がいるとき

・来た道を引き返す。

・家がすぐ目の前でも、あやしい人がいたときは学校に戻る、引き返す。

・「間違ったらその人に悪いな」と思うときは、学校に忘れ物をしたふりをして引き返すようにする。

・「おうちの人が心配するから引き返そう」と家族のことを思い出す。

●後ろからついてくる人がいるとき

・なるべく近くの家やお店に「助けて」ととびこむ、または自宅のふりをして「ただいま」と言って門扉をガチャガチャさせるだけでもよい。

●じっと見つめてくる人がいるとき

・すっと目を横にそらしそのままさっさとなるべく早くその場を離れる

●嫌なことをされそうになったり、頼まれ事をされとき

・勇気を出して、「嫌です」「ダメです」「お母さんに聞いてからにします」と言い、きっぱり断る。

・「断ったら悪いかな」と思わなくて大丈夫。自分の「嫌だな」という気持ちを優先し、そういうときは家の人が心配していることを思い出す。

・「一緒にワンちゃんを探してくれる?」「誰々さんの家まで案内してくれる?」「お腹が痛いんだ、トイレまで連れて行ってくれないかな」などと言われたら、その場ですぐに「いいよ」と言わないで、一旦ワンクッションをおく。例えば「今急いでいるのですみません」「大人の人に聞いてください」「大人を呼んできますね」など、自分がその人とともに場所を移動しないようにする。そしてその場をさっさと立ち去る。

・もちろん、本当に困って道を聞く人もいる。もし道を知っていればきちんと教えてあげる。違いはその場で「ありがとう」と去る大人か「じゃあ、案内して」という大人か。自分で自分を守る力が十分ついていないときには、それ以上ついて行ったりしない。

「前のほうの電柱の陰にあやしい人が立っていました。そういう人を見たら、あなたはどうしますか?」

清永さんが小学5年生を対象に、こんな質問したところ、半数以上の子が『引き返せない』と回答したそうです。「その理由の中に『悪い人ではなかったら、その人に悪いから』というのがありました。そのまま歩いて行ったら、自分が危険な目に遭うかもしれないのに、『逃げたら、疑っているみたいで悪いな』、そんなふうに気を使う子がいるのです」と清永さんは子どもたちについて話します。

「いい子、やさしい子は気を遣ってしまい、断ることができずに被害に遭うケースがあります。でも、嫌なことはきっぱり断る勇気が必要です。逃げたら相手に悪いかな、断ったらいけないのかなと思ってしまう子も、断っていいということを知っていて、『これはお母さんとの約束事だから』と思い出すことができれば、『やっぱり自分をしっかり守ろう』と来た道を引き返すことも、断ることも、しやすくなるはずです」

清永奈穂
 ステップ総合研究所所長・NPO法人体験型安全教育支援機構代表理事。元警察庁科学警察研究所犯罪予防研究室長でステップ総合研究所特別顧問の清永賢二氏と共に、犯罪やいじめ、災害からどうやって命を守るかを研究している。子どもが犯罪に巻き込まれた現場に足を運んだり、元犯罪者に話を聞くなどして犯罪がどのように起きたか、どうしたら防げるかを科学的に検証し、全国で行う体験型安全教育に反映させている。海外の安全教育についても詳しい。家庭では一男一女の母。著書に『犯罪からの子どもの安全を科学する―「安全基礎体力」づくりをめざして』(共著・ミネルヴァ書房)など。

(ライター 小山まゆみ、構成 福本千秋=日経DUAL編集部、清永さん撮影 花井智子)

[日経DUAL 2018年6月4日付記事を再構成]

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