家業を継ぐ意志は全くなかった

歴史ある酒蔵の長男として生まれた佐藤氏だが、「家業を継ぐ考えは全くなかった」。地元を離れたくて県立秋田高校を卒業後、明治大学商学部に入学。しかし、授業に興味がわかず、だんだん大学に行かなくなった。

1つだけ面白いと感じた授業がマルクス経済学の授業。「腹に落ち、『資本論』を食い入るように読んだ」。そのころから読書の虫になり、知的障害を持つ青年を描いた米SF作家ダニエル・キイスの「アルジャーノンに花束を」を読んだのがきっかけで、心理学を学ぼうと決意。1年で明大を自主退学した。

東京大学にはほとんど独学で合格した。写真はイメージ(東大の赤門)

1年間の浪人生活を経て、東京大学文学部に入学。浪人中は駿台予備学校に籍を置いたが、授業にはあまり出ず、ほとんど1人で勉強した。

浪人時代に気付いた自分の強み

それ以前から「自分は普通じゃない」「自分は頭がおかしいんじゃないか」と薄々感じていた。興味のないことに対しては、全く興味が持てず、やってもすぐに集中力が切れる。前日たっぷり寝ても、授業中に寝てしまうこともしばしばあった。飽きっぽい。物忘れが激しい。スケジュール管理ができない。ダブルブッキングは日常茶飯事だった。

半面、興味やこだわりを持ったことに対しては、自分でも驚くほどの集中力や記憶力を発揮。大好きなビートルズの歌詞はすべて暗記し、他の洋楽も気に入れば丸暗記。好きな音楽に触れていられるならば、徹夜も苦ではなかった。

浪人時代の勉強法もまさにそうだった。嫌いな理数系科目は一切やらず、好きな文系科目ばかりやった。「興味やこだわりのあることを自分のやり方でやることでしか、自分は成果を上げられない」と気付いたからだ。

例えば、英単語は、参考書の語呂合わせでは覚えられず、自分で語呂合わせを作って丸暗記。東大2次試験の論文は、「文学的な音楽の歌詞をたくさん暗記していたので、それをうまく引用すれば簡単だった」。心理学が学べれば大学はどこでもよかったが、たまたま東大に受かったので東大に行くことにした。

「振り返れば、この浪人時代が今の自分の原点だった」と話す。「それまでは何をやるにも人と合わせようとしてきた。その結果うまくいかず、いつも悩んでいた。それが自分の勉強法を見つけ、成功したことで、何かが吹っ切れた」。

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