堂本光一君の挑む力『ナイツ・テイル』(井上芳雄)第24回

日経エンタテインメント!

光一君と最初に会ったのは3年前くらいでしょうか。東宝の方やファンの方から「光一さんと芳雄さんは、似てるんじゃないですか」と言われることが多く、興味が湧いて引き合わせてもらいました。どうやらファンの人をいじってみたりするところや、ちょっと毒舌なところが似ていたみたいですけど(笑)。

光一君と話していくうちに、他の舞台もよく見ているし、本当に舞台が大好きなことがわかってとても楽しく、親近感を覚えました。そして何回か会ううちに「いつか共演できたらいいね」という話になり、今回の話が固まってきました。だから、昨日今日に出てきた話じゃなくて、長い時間をかけてきたものがようやく機が熟したという感じです。

稽古が始まってからも、光一君には自分と近いものを感じます。普段のテンションがそう高くないところも、僕と似たような温度なのかな。お互いに変に気をつかわないし、気をつかうときは、あからさまではなく、さっと自然にという気持ちもわかります。

心意気に共感と尊敬

光一君と僕は同い年なので、同世代という部分でもわかりあえるのでしょう。しかも帝劇デビューが同じ2000年。光一君は『SHOCK』の初演、僕は『エリザベート』のルドルフ役でした。その後も、それぞれ帝劇の舞台に立ち続けてきたのですが、こうして一緒にやれるようになるまで17年かかりました。続けるって、大切なことですね。

その2000年の初演以来、光一君は『SHOCK』に1630回主演して、ミュージカル単独主演の記録を打ち立てる偉業を成し遂げました。今は演出にもかかわっています。歌にしても映像にしても素晴らしい成果を収めていて、現状のままで活動を続けていっても何の問題もないという立場です。

ところが、光一君は同じ道を行こうとせず、大きなチャレンジの一歩を踏み出しました。オリジナルの新作で外国人による演出や振り付け、初めての共演者にも囲まれるとあって、長く続けてきた『SHOCK』の舞台とは勝手がまるで違うはず。リスクも大きいでしょう。にもかかわらず、あえて挑んだのが素晴らしい。その心意気に共感するし、尊敬もしています。

でも、新しいことに挑戦しないと人生は面白くないし、それが生きている意味でもある、と僕も思うのです。だから光一君が、今回『ナイツ・テイル』で一歩踏み出してよかった、と思えるように、その力のひとつになりたい。そんな気持ちで、毎日の稽古に臨んでいます。

井上芳雄
1979年7月6日生まれ。福岡県出身。東京藝術大学音楽学部声楽科卒業。大学在学中の2000年に、ミュージカル『エリザベート』の皇太子ルドルフ役でデビュー。以降、ミュージカル、ストレートプレイの舞台を中心に活躍。CD制作、コンサートなどの音楽活動にも取り組む一方、テレビ、映画など映像にも活動の幅を広げている。著書に『ミュージカル俳優という仕事』(日経BP社)。

「井上芳雄 エンタメ通信」は毎月第1、第3土曜に掲載。第25回は7月7日(土)の予定です。

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