とことん実地調査 コンサルと文化人類学の意外な接点本徳亜矢子アクセンチュア・マネジング・ディレクターが語る(下)

経済や経営はもちろん、ITの専門知識など皆無だったのによく採用されたなと、今でも思います。志望動機などすっかり忘れてしまいましたが、今でも覚えているのは、数回の面接がいずれも面接時間をオーバーするほど盛り上がったことです。クジラのことしか話すことがないので、研究の話を一生懸命しましたが、それがよかったのでしょうか。

現在は、マネジング・ディレクターとして、通信会社やメディア、電機メーカー向けの組織・人材変革のコンサルティング専門チームを束ねる。

文化人類学とコンサルティングは、一見共通点が皆無のようで実は非常に似ています。一つは、いずれも対象を単純化することで課題を解決しようとしている点です。

文化人類学は、人間の根本行動は不変であるとの前提に基づき、アフリカの遊牧民など素朴な社会で生きる人たちを研究して、現代人の社会的行動を理解する手掛かりを得ようとします。なぜ素朴な社会を研究対象にするかというと、現代人は人間関係をはじめとして非常に複雑な環境の中で生きており、そうした複雑な条件下では、人間の根本行動を正確に分析するのが非常に困難だからです。つまり、文化人類学は余計な物を削ぎ落として人間の本質を見ようとする学問なのです。

コンサルティングも同じです。クライアントが抱える課題は一見非常に複雑ですが、私たちはできるだけ余計なものを取り除いて課題の本質をとらえようとします。まさに文化人類学の目指すところと一緒です。

もう一つ共通しているのは、方法論がフィールドワークという点。文化人類学ではフィールドワークが重要だと説明しましたが、コンサルティングの仕事もある意味フィールドワーク。クライアントから課題を投げかけられたら、そこから先はすべて、データ収集にしてもヒアリングにしても、自分で考え自分から行動を起こさなければなりません。もっとも、コンサルティングの仕事はクライアントからの協力を得られますが、文化人類学の調査は相手が必ずしも協力的とは限らない。その意味では、クジラの調査は結構難易度が高かったかもしれないですね(笑)。

私はコンサルタントとしては変わり種です。大学時代にクジラの研究をしていたことは、自分からは話題にしませんが、聞かれれば話します。就活中の学生からは、アクセンチュアに入るには経営学とか情報工学とかを勉強していないとダメですかという質問をよく受けますが、そんな時は「全然大丈夫ですよ。私なんかクジラですよ」と答えています。

今の学生は、わりと早いうちからやりたいことを決めなければいけないというプレッシャーがあり、もったいないなと思うことがあります。私なんか将来のことは何も考えずに自分のやりたいことに打ち込んでいましたが、それでも今、何とかなっています。好きなことをとことんやれば道は開けるということを筑波大学で学びました。

(ライター 猪瀬聖)

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