一例が、ヤギの解体です。研究室の教授が課外授業のような形で毎年、校内の「野生の森」というエリアに学生を集めて、目の前でヤギを解体してみせるのです。それも、教授の研究対象であるアフリカの遊牧民がやっているような独特のやり方で解体する様子を研究室のメンバーと一緒になって観察し、その後はみんなでヤギの肉を試食して、たき火を囲んで夜を過ごします。他の大学では絶対にできなかった体験だと思います。

もともとクジラの研究をしたかった。

「フィールドワークで調査地を訪ね歩くうち、交渉力やコミュニケーション力がかなりついた」と話す

そもそも筑波大学で文化人類学を専攻したのは、クジラの研究をしたかったからです。私が生まれ育ったのは岡山市で、クジラとは無縁の場所。本物のクジラも大学に入るまで見たことがありませんでした。でも、なぜか子供のころからクジラのキャラクターが大好きで、クジラにはまっていました。

高校時代に大学進学のことを考え始めたとき、大学に入ったら好きなことを思い切り研究しようということを心に決めていました。何の研究をするか。真っ先に浮かんだのが、小さいころから好きだったクジラでした。

クジラの研究には海洋学的なアプローチや生物学的なアプローチもありますが、何かちょっと違うなと感じていました。そんな時、図書館で「くじらの文化人類学」(M・フリーマン編著、海鳴社)という翻訳書に出合ったのです。読んですぐ、「これだ」と思いました。

文化人類学という学問の存在自体、そのときは知りませんでしたが、文化人類学の本を読んだりして調べたら、非常に面白そうな学問だなと思いました。また、当時は文化人類学的なアプローチでクジラの研究をした人はまだ日本にはあまりいなかったこともあり、やってみようという気持ちが強くなりました。こうした研究をするのに一番いい大学はどこか調べたら、筑波大学に面白い研究をしている文化人類学の教授がいて、それが筑波大学を選ぶ決め手となりました。

もう一つ筑波大学を選んだ理由を挙げると、実は、母が筑波の前身の東京教育大学の出身でした。母の同級生の中に現役の筑波大学の教授もいて、筑波には何となく親近感を抱いていました。

フィールドワークでメンタルを鍛えられた。

文化人類学の授業はフィールドワークが中心です。座学もありますが、あくまでフィールドワークの準備のため。研究テーマを決めたら、とにかく現地に行き、そこで課題と答えを見つける。本を読んで学ぶのではなく、人に話を聞いて調べるという学問です。

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