皮肉なことに、据え置き型ゲームの性能がよく、あまりに普及したことが一因だ。海外のeスポーツで主流のパソコンのオンラインゲームに目が向かず、据え置き型ゲーム機でのオンライン機能の追加も遅れた。ただ、いまではネット上で他のプレーヤーと対戦する様子を動画配信サイトなどで見るという楽しみ方も広まっている。

今後、日本はeスポーツ大国となるか。「スポーツとしてゲームが認識されるかどうかだ」と慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科の中村伊知哉教授は指摘する。

現在、eスポーツを楽しむ人の数は世界で3億人余りと推計され、21年には5億人を超えるとされる。今後、新興国でも爆発的に広まれば、サッカーなどと並ぶ世界的なスポーツに育つ可能性もある。イベントも目白押しで、8~9月にインドネシアのジャカルタで開催されるアジア競技大会(アジア大会)では、eスポーツも公開競技としてプログラムに入っている。コナミデジタルエンタテインメント(東京・港)のサッカーゲーム「ウイニングイレブン(ウイイレ)2018」が競技ゲームの一つに選ばれ、話題となった。日の丸を背負った日本代表選手が選ばれるなどイベントを重ねることで認知度も高まる。

アジア大会では、22年の中国・杭州大会から正式種目となる。日本でも19年の国民体育大会(国体)で、文化プログラムの枠でeスポーツの競技会を開く予定。将来は、オリンピックの正式種目への採用も期待されており、21年には市場は16億ドルに広がるとの見方もある。

しかし現状ではまだ趣味や遊びどまりととらえられ、プロゲーマーを目指したくても親に反対される若者は多い。「ゲームで育った世代が親になり、これからは理解が進む」と専門家らはみる。20年度には小学校でのプログラミング教育が必修化され、ゲームをするだけではなく作ることもより身近に感じる若者が増えてくれば、裾野が広がる好循環が期待されている。

カリフォルニア大アーバイン校 「eスポーツ」担当者に聞く

学内に専用アリーナ、奨学金も

カリフォルニア大アーバイン校(UCI)は2015年に「eスポーツプログラム」を開設した。16年にはeスポーツ専用アリーナもオープンし、学術界におけるeスポーツ分野の先駆者を自負する。同プログラム代表代理のマーク・デップさんに聞いた。

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「UCIは世界的なエリート大学間の競争を生き抜いていかないといけない。eスポーツ専門のプログラムがあることで『革新的な大学』という立場を明確にすることが、開設の動機だ。もともとUCIはコンピューターサイエンスの分野が強く、専攻分野にコンピューターゲーム・サイエンスもあったことも大きい」

「10年からは、STEM(サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、数学の頭文字を合わせたもの)分野でのキャリアに関心を持ってもらうため、地域で高校生向けの活動をしてきた。その一貫で高校生向けのeスポーツ・リーグの創設にもかかわってきた。好きなことから専門分野へと興味を広げていく。それが我々の考える教育だ」

「専攻は学生の自由だが、コンピューター・サイエンス、コンピューター・エンジニアリング、ビジネス経済学が人気。大学教授陣、ゲーム関連企業、卒業生とも密接に連携し、学術的な研究だけでなく、ビデオゲーム、eスポーツ業界への就職も積極的に応援している」

「18、19年度には60人が、プログラムに参加する予定だ。UCIを代表して試合に出るチームの学生には年6000ドル(約65万円)、その下のチームには年1000ドルの奨学金が出る。大学eスポーツの競争は年々激しくなっているが、UCIチームはセミプロレベル。もちろん、学校の成績もエリートクラスであることを求めている」

(渡辺岳史、桜井芳野、原真子)

[日本経済新聞朝刊2018年6月14日付を再構成]