いずれは「プロの育成コースはもちろん、海外の大学と提携してeスポーツ留学も考えたい」と土屋正義キャンパス長は話す。若者が将来を思い描く新分野として期待を寄せている。全国から生徒たちの問い合わせが相次ぐ。

将来はゲーマーから医師が誕生?

小学生が就きたい職業の上位に「ユーチューバー」があがる時代。早晩「プロゲーマー」もランクインする。世界には賞金総額が27億円に達する大会があり、韓国では年収3億円以上という猛者もいる。日本eスポーツ連合の浜村弘一副会長は、業界の社会的地位を高めるため、日本のスター選手を切望している。

米国ではすでにゲームのプロも生まれ、学校間で有望選手を激しく奪い合う。野球やサッカーの優秀な選手と同じ扱いだ。公立のカリフォルニア大学アーバイン校ではeスポーツで優秀な学生に奨学金制度を設けた。ゲームを大学の売り物として知名度を高めることで科学分野に明るい学生を集める狙いだ。

アジア競技大会でeスポーツが公開競技に採用されたことを受け、日本代表選手の選考会が5月に開かれた(東京都豊島区)

プロゲーマーが活躍する世界は、あらゆるモノがネットにつながるIoT全盛期だ。野村総合研究所によれば、18年に1兆円超になる国内のIoT市場は、23年には4兆円を超えるまで急拡大するという。

読み、書き、ゲーム――。ゲームが、IT(情報技術)時代の義務教育となり、身を立てるスキルとして重視される。プロになる夢は破れても、ゲームの達人は有能な人材として重宝される。

例えばゲームで鍛えた細やかで正確な指先の動き、画面全体を捉えて戦略を立てるといった目の使い方は、メスをじかに握らず画像を見ながら遠隔手術をする医者の育成につながりそうだ。無医村でも一流の医療をだれもが享受できる世界がぐっと近づく。

選ぶ事象で結末が異なるシミュレーションゲームなどの延長では、豊かな発想が農産物の品種改良や新薬の創出、斬新な料理の開発など幅広い分野で活躍するエンジニアを生み出すかもしれない。

ゲームとは勝敗を決めるものという意味があるという。負ける悔しさが刺激になり、挑戦する心や乗り越える力をもたらす。ゲームはヒトを進化させる可能性を秘める。

世界のeスポーツ市場は韓国や米国を主軸に急成長している。オランダの調査会社ニューズーは、2018年の世界のeスポーツ市場は前年比38%増の9億560万ドル(約990億円)と予測する。高騰する大会の賞金額も話題をさらい、市場を盛り上げる。米エピック・ゲームズはシューティングゲーム「フォートナイトバトルロイヤル」のeスポーツに総額1億ドル(約110億円)の賞金を用意すると発表した。

日本が出遅れた皮肉な事情

世界の盛り上がりに比べると、日本は出遅れている。Gzブレインの調査によると17年の国内のeスポーツ市場の規模は5億円未満と寂しい限りだ。任天堂の「ファミリーコンピュータ」やソニーの「プレイステーション」といった大ヒット機器を生み出してきたゲーム大国日本で、なぜeスポーツの普及が遅れたのか。

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学内に専用アリーナ、奨学金も