2018/6/20

子どもの学び

実は、人間の体では毎日、目に見えない小さいがんがいくつもできているんだ。それでもすぐに体がおかしくならないのは、遺伝子の傷(きず)を元通りに治す力が、体にもともとあるからなんだ。だけど、傷が多すぎると治しきれず、遺伝子がおかしなままになり、がんができる。年をとるほど遺伝子の傷を治しきれなくなって、がんになる可能性が高まるんだ。

がんのなりやすさには、いろいろな原因が関係しているよ。たばこやお酒、塩分をたくさん体に入れたりすると、遺伝子に傷が付きやすくなる。放射線(ほうしゃせん)や紫外線(しがいせん)も悪い影響(えいきょう)があるよ。特に場所によっては深く関係するものが分かっているんだ。胃がんはピロリ菌(きん)という細菌によって起こる場合がほとんど。女性がなる子宮けいがんは「ヒトパピローマウイルス」というウイルスが大きな原因なんだ。

日ごろの生活習慣も影響しているよ。まず悪いのはたばこ。自分がすわなくても、他の人がすったたばこの煙(けむり)をすうだけでも悪影響(あくえいきょう)がある。肺だけでなく胃、すい臓(ぞう)など様々ながんになる可能性を高めてしまうんだ。お酒の飲み過ぎは食道、肝臓(かんぞう)、大腸のがんにつながる。塩からい食べ物をひかえることも大事だよ。

がんを治すときには、がんを取りのぞく手術をしたり、抗(こう)がん剤(ざい)や放射線(ほうしゃせん)を利用してがんを攻撃(こうげき)してたおしたりするよ。早いうちに見つかれば治る可能性は高い。

だからできるだけ予防し、早く見つけることが大切なんだ。胃がんを起こすピロリ菌が体にいないか検査し、いたときは退治する治療(ちりょう)を受ける。肝臓に悪影響をおよぼす肝炎(かんえん)ウイルスも調べる。子宮けいがんを起こすウイルスの予防接種もあるよ。

大人になったら、がんの検診(けんしん)を受けよう。子宮けいがんは20歳(さい)以上の女性、乳(にゅう)がんは40歳以上の女性、胃や肺、大腸は40歳以上の男女に、国は検診をすすめている。心配な人はお医者さんに相談するといいよ。インターネットや本などには、がんについて様々な情報がのっている。中にはまちがったものもあるので、複数のお医者さんに話を聞いて確かめるのが大切なんだ。

■遺伝子から最適の治療探る

博士からひとこと 胃や肺など同じ種類のがんでも、患者ごとに薬の効き目は異(こと)なる。がん細胞の遺伝子の変異(へんい)や働き方にわずかな違いがあるからだ。既存(きぞん)の抗がん剤は、遺伝子が作るたんぱく質に働くタイプが多く、遺伝子に変異などが起きれば薬が効きにくくなる。近年、薬を使う前に患者の変異などを調べることが、治療成績を上げるのに重要なことが分かってきた。
 日本でも、がんや血液中の多数の遺伝子の変異などを調べ、その人に合った治療薬を探(さが)す「がんゲノム医療」が始まった。国立がん研究センターは4月から、がん組織の114種類の遺伝子変異を調べる先進医療を開始。開発中の新薬候補や他の病気の薬などから最適の治療薬を探す。早ければ2019年度にも保険適用される可能性がある。企業(きぎょう)では、中外製薬が米企業の検査技術の製造販売(せいぞうはんばい)を国に申請済(しんせいず)みだ。がんゲノム医療が普及(ふきゅう)すれば患者の治療成績が改善(かいぜん)し、医療費抑制(いりょうひよくせい)にもつながると期待されている。

(国立がん研究センター研究所の河野隆志・ゲノム生物学研究分野長に取材しました)

[日本経済新聞夕刊2018年6月9日付]

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