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年金、繰り下げ受給の心得 「基礎のみ」が得な場合も 妻が年下、夫が厚年繰り下げで「加給」消失

2018/6/17

 私は関係ないのね。

幸子 社会保険労務士の相川裕里子さんは「妻が基礎年金を繰り下げている間は振替加算も消え、やはり増額なし。金額の大きい妻は自分が基礎年金を繰り下げるかどうかの判断材料にすべきだ」と話しているわ。

良男 なんだか複雑だな。

筧幸子(かけい・さちこ、48=上) 筧良男(かけい・よしお、52=中)  筧恵(かけい・めぐみ、25) 

幸子 手取りで考えることも大事よ。年金には税金や社会保険料がかかるわ。FPの深田晶恵さんが東京都の江戸川区の例で計算すると、基礎年金と厚生年金の総額が200万円の男性が5年繰り下げで受給額が42%増の284万円になっても、社会保険料などの負担増で手取りは240万円強にとどまるの。

 するとさっきの損益分岐年齢も変わってくるわね。

幸子 深田さんによると、この例だと87歳まで生きれば取り戻せるわ。税金や社会保険料は自治体により大きく変わるので一概には言えないけど……。

良男 だいぶ違うんだな。

幸子 加給年金がもらえなくなるのを防ぐために基礎年金のみを繰り下げる場合、税や社会保険料の増え方も小さいので、損益分岐年齢は「81歳超」から数年しか上がらないけどね。

 いろいろ注意点があるのね。

幸子 公的年金の最大の利点は、ある程度インフレについていけるし、終身でもらえること。つまり長生きリスクに備える最も有効な手段なのよ。何歳まで生きれば得をするかも大事だけど、長生きリスクに備えるという観点を考えれば、やはり繰り下げはお薦めといえるわ。

 特に女性は長生きだから、繰り下げが男性よりずっと有利になりやすいわよね。

■妻の厚年、夫の死後を考慮
社会保険労務士 相川裕里子さん
妻は夫が亡くなると自分の基礎年金に加えて(1)妻の厚生年金(2)夫の厚生年金の4分の3(3)妻と夫の厚生年金の半分ずつ――の最多の金額が支給されます。厚生年金が夫は年120万円、妻は30万円なら、妻が自分の厚生年金を5年繰り下げて1.42倍に増やした後に夫が死亡しても最多は(2)の90万円。繰り下げなかった場合と変わりません。妻の厚生年金が少なければ、せっかく繰り下げても夫の死後は金額が増えないこともあるので要注意です。
妻の厚生年金が多ければ別。夫が年120万円、妻が100万円なら、厚生年金を繰り下げなかった場合は(3)が最多で110万円。5年繰り下げなら(1)が最多で142万円と増額の状態が続きます。一方、老齢基礎年金の繰り下げはこうした調整がないので、基礎のみ繰り下げるのも手です。
(聞き手は編集委員 田村正之)

[日本経済新聞夕刊2018年6月13日付]

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