認知症700万人時代の到来といわれる中、認知症を保障する保険が注目されています。ここでは代表的な2つの商品を取り上げます。
「ひまわり認知症治療保険」は、持病があっても入りやすい緩和型医療保険をベースに、認知症の保障が付加されています。所定の認知症状態が180日間継続した時に一時金(認知症治療給付金)を受け取れます。これを受け取ると認知症の保障契約は消滅し、以降は医療保険部分に対応する保険料を払い続けます。一般的な緩和型医療保険と同様に、契約後1年間は給付金が半額。医療保険がベースにあるので、認知症の保障だけを求める人や、健康状態には問題がない人にとっては保険料が割高です。
一方の「あんしん介護 認知症保険」は認知症保障のみに特化した保険で、保険金の受け取り方を一時金または年金から選べ、要介護1以上に認定されると保険料が免除されます。一時金タイプは、支払い要件に該当すると介護一時金が受け取れ、契約は消滅します。「ひまわり認知症治療保険」のような医療保険が付かない分、保険料は割安です。年金タイプは、支払い要件に該当している限り介護年金を継続して受け取れます。
まずは、認知症の保障だけを目的にするのか、医療保険部分も欲しいのかを考えるといいでしょう。
若くして認知症を発症すると収入のダウンや治療の長期化で家計への影響は大きく、保険は確かに頼りになります。ただし数十年先を想定する場合、将来の医療介護体制や介護認定基準、貨幣価値などの不確定要素が多くなるため、貯蓄での備えも併せて行うのが良策でしょう。また、認知症リスクの最小化という視点も大切です。予防・早期発見・早期治療に取り組めばトータルコストを下げられ、何よりも生活の質を保てます。
生活設計塾クルー。13年間の大手生命保険会社勤務の後、FPとして独立。生活設計塾クルー取締役を務める。『医療保険はすぐやめなさい』(ダイヤモンド社)など著書多数。一般社団法人FP&コミュニティ・カフェ代表。
[日経マネー2018年7月号の記事を再構成]