間一髪! サファリパークでチーターに追われる家族
オランダのベークセ・ベルゲン・サファリパークで、小さな子どものいる家族が2頭のチーターに追われ、命からがら車に逃げ戻った。幸い、チーターは空腹だったわけではなく、縄張りを守ろうとしただけだったと、サファリパークの管理者ニールス・デ・ヴィルト氏はオランダのラジオ局に語った。
動画からは、幼い子どもを含む5人家族が、チーターが自由に歩き回るエリアで車を止め、30メートルほど先の土手の上に立っていたことがわかる。家族は日陰で休むチーターの群れの横を通り過ぎたすぐ後に車を降り、この大型ネコ科動物に背を向けて、何かほかのものを見ようと小高くなった場所に向かって歩いているところだった。すぐにチーターがこれに気づき、攻撃的なうなり声を上げて駆け寄ると、家族は大慌てで車に逃げ戻った。
「私も親なので、動画の子どもを見たときは、どうなることかとぞっとしました」と話すのは、米カトーバ大学の保全生物学者で、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーでもあるルーク・ダラー氏だ。大型のネコ科動物は最強の捕食者であり、彼らにとって私たちは獲物なのだということが忘れられていると指摘する。
けが人は幸い出なかったものの、これが別の種の大型ネコ科動物であれば、まったく違う結果になった可能性がある。「チーター保護基金(CCF)」の創設者で常任理事のローリー・マーカー氏は、チーターはライオン、ヒョウ、トラなどと違い、攻撃的な種ではないと説明する。「チーターは好奇心が強く、生息地に異変があると調べに来るのです」。マーカー氏によれば、このようなことをした家族が無事に済んだのは、単に運が良かったからだ。
中国では、北京近郊にあるサファリパーク「八達嶺野生動物世界」で、車から降りた女性がトラに襲われた。この女性は動物を近くで見ようとしたわけではなかったが、大けがを負い、彼女を助けようとした母親は別のトラに殺された。
サファリパークには、車の外に出てはならないと数カ国語で書いた看板がいくつも立っている。それでも警告を無視する人が後を絶たず、毎年何人もの人が、サファリパークや野生生物公園でけがをしたり命を落としたりする。その多くが良い写真や自撮り写真を撮ろうとしてのことだ。
野生動物には常にしかるべき敬意を払うべきだとダラー氏は訴える。ベークセ・ベルゲン・サファリパークの家族が怖い思いをしただけで逃げられたのは、運が良かったからにすぎない、と。
(日経ナショナル ジオグラフィック社)
[ナショナル ジオグラフィック 2018年5月16日付記事を再構成]
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