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パラリンピアンの宿はどこ? 車いす客室嫌うホテル マセソン美季さんのパラフレーズ

2018/6/14 日本経済新聞 朝刊

マセソン美季さん

東京パラリンピックまであと約2年。海外のチームは競技会場の視察に訪れたり、事前キャンプ地を決めたりと、着々と準備を進めている。その関係者が口をそろえたようにぼやくのが、ホテル探しの難しさだ。

例えば、立派なトレーニング施設が見つかっても、その近隣に車いすユーザー5人が同時に宿泊できる施設が見つからないという。自治体に相談すると、改修工事にかかる費用を誰が負担するのか決められないと言われ、提示された妥協案が「分泊」。5つのホテルに分散宿泊し、1室ずつある車いす用客室を使う方法だ。

現行の国土交通省の設置基準では、客室が50以上ある宿泊施設では車いす用の客室を1つ以上設ける義務がある。ただし、総客室数に対する割合ではないので、客室が50室でも2千室を超えても、車いす用客室は1室あればいい。

実際、大手のホテルでも車いす用客室は1つしかない場合がほとんどで、中にはその部屋が喫煙フロアに設けられていることも少なくない。たばこのにおいを我慢するか、使い勝手の悪い部屋で我慢するか。究極の選択を迫られる。

ある国のパラリンピック委員会は、改修に必要な費用を負担すると申し出たそうだ。車いすで使いやすい部屋が増えることで、他に合宿先を探す苦労がなくなる。これを機に、障害のある人たちの旅行機会も増えれば素晴らしいとも考えたという。

ところが、違う国のパラリンピック関係者が同じような提案を別の施設にしたところ、改修は許されたが、大会後に施設を復元するための費用も請求されていると聞いた。耳を疑うような話だ。

せっかく改修した部屋が元の姿に戻されてしまわないよう、その客室の稼働率を上げる方法を考えることはできないものだろうか。車いす用の広い部屋を利用するのは、障害のある人に限らないはずだ。例えば今まで窮屈な思いをしていた体の大きな人のために大きめのベッドがある部屋だと宣伝したり、2段ベッドを入れて家族4人で泊まれることをうたったり。日本独自の斬新な工夫に期待したい。

マセソン美季
1973年生まれ。大学1年時に交通事故で車いす生活に。98年長野パラリンピックのアイススレッジ・スピードレースで金メダル3個、銀メダル1個を獲得。カナダのアイススレッジホッケー選手と結婚し、カナダ在住。2016年から日本財団パラリンピックサポートセンター勤務。

[日本経済新聞朝刊2018年6月14日付]

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