優雅なキャンプ 進化型カプセルホテル、女心つかむ
浴槽充実、高い天井などでイメージ一新
カプセルホテルが進化している。「格安だが狭い」や「終電を逃したときの避難先」などの従来のイメージを覆すニュータイプが登場し、ビジネスの利用層のみならず、女性や観光客の心もつかんでいる。
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2017年10月、東京・千代田にオープンした「GLANSIT AKIHABARA(グランジットアキハバラ)」。都内でダーツバーなどを展開するバグース(東京・港)が手がけたカプセルホテルだ。
異性を気にせず、寝具も快適に
グランジットは、グランピングとトランジットを組み合わせた造語。同ホテル統括マネージャーの小林拓さんは「目的地への中継点に、ぜいたくなキャンプの優雅さをプラスしたような拠点を目指した」と説明する。
木目にグリーンをあしらったエントランスには木々の香りが流れる。「従来のカプセルは無機質な感じだが、ここではスタイリッシュな空間を提供したい」と小林さん。
宿泊、大浴場とも男女は別フロア。異性を気にせず過ごせる。寝具にもこだわった。2層構造で体圧を分散するマットレスは、寝具メーカーと共同開発したオリジナルだ。
よりプライベート感を求める人に向けては「プライベートカプセル」を用意した。サイドデスクと専用ロッカーを備え、外部と扉で仕切られている。同タイプで、上下2つのベッドを備えた「ツインカプセル」は、友達同士や親子に好評という。
大浴場には、シャンプーやボディーソープはもちろん、女性向けに化粧水や乳液、ヘアアイロンまで用意してある。仕事帰りに立ち寄った10代の女性は「自宅は神奈川だが、都内で用事があるので、休憩がてら利用した。お風呂がきれいだし、ゆっくりできる」と、ヘアアイロンで髪を整えながら話していた。
全国に18施設を展開するファーストキャビン(東京・千代田)の客室も従来のカプセルのイメージを覆す。「ビジネスクラスキャビン」は、上下2段式ではなく、天井高が210センチメートルあるため、閉塞感が少なく、のびのび過ごせる。
飛行機のファーストクラスをイメージしている。同社ブランドマネジメント室の大和田雅子さんは「客室部分をコンパクトにして価格を抑えた分、風呂やラウンジなど共用部分を充実させた。しかたなしにカプセル、ではなく、快適さであえて選ばれる空間を提供したい」と意気込む。
平日のビジネス利用に加え、週末は観光目的の利用も多いという。
女性専用で安心感高く
「既存施設でここ1、2年、女性の利用が増えてきたことから、思い切って女性専用で開業した」と話すのは秋葉原BAY HOTEL(ベイホテル、東京・千代田)支配人の川崎久代さん。同ホテルグループ初の女性専用施設だ。
こだわりは「おうちにいるような感覚でくつろげること」(川崎さん)。内装は白を基調に、淡いパステルカラーが中心。ラウンジには、電子レンジやポットを設置して、飲食しながら友達同士でゆっくりおしゃべりを楽しめる。
スタッフも女性だけ。川崎さんは「男性に会う心配がないので、館内のどこでも、すっぴん、パジャマ姿でくつろげる点が好評」と話す。
宿泊客の年齢は20代から70代までと幅広く、約4割がリピーターだ。「女性の場合、宿泊費を抑えたくても、セキュリティーは譲れない。その点、女性専用だと安心感も高い」(川崎さん)
上海から一人旅の20代女性は「セキュリティーの不安もないし、宿泊としては十分。アメニティーの充実などに心遣いを感じる」と満足そうだった。川崎さんは「利用目的は、ビジネスや観光のほか、ライブやイベントへの参加、就職活動の拠点など様々。安心してくつろげる空間を安価に利用して、浮いた分で本来の目的を充実させてもらえれば」と話していた。
各ホテルは1泊5000円前後と比較的安価で、時間利用できる施設もある。単なる宿泊だけではなく、用途に応じた柔軟な使い方ができることで、可能性が広がっているようだ。
(ライター 李 香)
[日本経済新聞夕刊2018年6月9日付]
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