転職で本当に年収増? 額面と手取りの差をチェック
知って得するお金のギモン
景気回復に伴って、転職マーケットは活性化しています。
求職者数に対する企業の求人数の割合を「有効求人倍率」といいますが、2017年度の有効求人倍率は1.54倍と、前年度の1.39倍を上回っています。求職者数よりも求人数のほうが多いということですから、転職を考えている人には、チャンス到来です。
リクルートキャリアの調査によると、17年度の転職者のうち、転職後の賃金が1割以上増えた人が全体の約3割に上り、02年度以降、最も高い水準とのこと。こちらもうれしいニュースです。
転職を考えるきっかけは人それぞれでしょうが、「お金」も重要なポイントのひとつ。好きな仕事に就き、さらに収入もアップできる転職が実現したらハッピーですね。
皆さんが転職をするなら、「欲しい年収」をどのように計算しますか?「今の月給より2万円くらい多いとうれしいな」などといった、「なんとなくの希望額」ではイケマセンよ。キャリアアップを実現しつつ、転職後の生活をよりよいものにするためには、戦略的に希望年収を算出することが大事です。
手順は次の通り。まず、「支出に回るお金」+「貯蓄したいお金」の合計額を「年間」で求めます。
例えば、年間支出額が230万円で、転職後に貯蓄したい額が年間80万円だとすると、合わせて310万円のお金が必要ということ。
でも、この310万円は「手取り」であって、いわゆる「年収(額面年収)」ではありません。手取り年収は、額面年収から所得税・住民税、社会保険料を差し引いたものです。
転職先企業と条件交渉をするときには、「額面」で話をするのが一般的。ですから、「欲しい手取り年収」だけではなく、「額面年収」も導き出さなくてはいけないのです。
手取り年収の計算はなかなか面倒なので、私のほうでいくつかの例を出しますね。
350万円→279万円
400万円→317万円
450万円→354万円
500万円→390万円
※いずれも40歳未満で税務上の扶養家族がいないケース
例に挙げた年収帯だと、手取りは額面に対して78~80%くらいです。年収が高くなると、所得税の税率がアップするので、手取りの割合は小さくなります。
年間で自分がいくら使っているのか把握しよう
前述の「支出額が230万円で、80万円くらい貯蓄したい」ケースなら、必要な手取り額は310万円。額面年収だと400万円です。手取りと額面の差は大きいですね。
自分のリアルな生活に基づいた「欲しい手取り額」と、そこから算出した「額面」の両方で考えておくのが「戦略的希望年収」の把握方法です。転職後に「貯めたい額」をあらかじめ折り込んでおくのがキモです。
そもそも多くの人は、暮らしていくのに必要な支出額を「月単位」で分かっていても、「年単位」で考えていないものです。年間支出額とは、1カ月の支出を12倍した額に、帰省費用、冠婚葬祭費、旅行費用など「1年を通じて数回発生する支出」を足したものです。
転職を機会に年間支出額を振り返ってみるといいでしょう。書き出してみると、ムダな支出を発見できて、一石二鳥ですよ。
収入アップしたいなと思っている人は、今より年収水準の高い会社に転職することで実現できます。この絶好のチャンスを逃さないで!
今月の回答者
ファイナンシャルプランナー。株式会社生活設計塾クルー取締役。外資系電機メーカー勤務を経て、1996年にFPに転身。現在は、特定の金融商品を販売しない独立系FP会社生活設計塾クルーのメンバーとしてコンサルティング業務を行うほか、雑誌等の原稿執筆、講演などを手がける。近著は「サラリーマンのための『手取り』が増えるワザ65」(ダイヤモンド社)。
[日経ウーマン 2018年7月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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