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11年ぶり高値のイオン株 何が起きたか(窪田真之) 楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジスト

2018/6/12

同社のビジネスの中核はずっと総合スーパーでしたが、今はそこが稼ぎ頭ではありません。現在の収益をけん引しているのは青い部分で示した、総合金融やデベロッパー(不動産)といった事業です。

イオンのショッピングセンターに行けばわかりますが、もはや総合スーパーのように自前の売り場だけで稼ぐビジネスモデルではないのです。競争力の高い専門店を誘致し、魅力的な空間をつくって、テナント料や金融業の収益で稼ぐ体制ができあがっています。

総合金融はクレジットカードやイオン銀行などを展開しています。デベロッパーは主にイオンのショッピングセンターに専門店を誘致してテナント料を稼いでいます。

■テナント料を稼ぎつつ魅力を高める

イオンはもはや専門店と戦う存在でもありません。むしろ専門店を中に取り込んで、テナント料を稼ぎつつ、ショッピングセンター全体の魅力を高める戦略をとっています。

自前の売り場にしても、競争力のある生鮮食品やプライベートブランド(PB)商品を販売の中心にし、絞り込んでいます。このようにしてイオンは総合スーパーを衰退ビジネスから再び成長するビジネスに変えたのだと思います。

ただし、総合スーパーにはまだ天敵がいます。過去10年で、コンビニは大手スーパーの顧客にどんどん食い込んできました。かつてコンビニの顧客の中心は若年層で、品ぞろえも手軽な食べ物が中心でしたが、40~50歳の女性顧客を増やすべく、次々と魅力的な総菜や食材を開発し、大手スーパーの客を奪っていきました。

イオンは、コンビニを撃退するビジネスモデルも徐々につくりつつあります。それが小型スーパーやドラッグ・ファーマシーです。ドラッグ・ファーマシーは「ウエルシア」ブランドでドラッグストアを展開しており、コンビニとはやや品ぞろえが異なりますが、重複する部分もかなりあります。

■セブン&アイとともに業界の変化に期待

コンビニとの競争では、依然としてコンビニのほうが優位ですが、一方的にやられるだけでなく、いい勝負になってきていると感じます。

イオンの課題は国際事業です。ようやく黒字化したとはいってもまだ収益力は低いまま。アジアで成長していくビジネスモデルを確立したとはいえません。この分野で成長モデルをつくることができれば、さらに評価が高まりますが、長い目でみていく必要があるでしょう。

イオン株の予想PER(株価収益率)は50倍台を大きく超え、割高感を指摘する声も出始めました。しかしながら、私は数年先までの利益回復が続く前提なら、まだ買える水準だと判断しています。

イオンが示した総合スーパーの生き残りの形は他社にも大いに刺激になるはずです。同業態のライバルといえるセブン&アイ・ホールディングスは19年2月期に8期連続の連結営業最高益となる見通しです。同社は営業益の6割をセブン―イレブン・ジャパンが稼ぎ、イオンとは収益構造が違いますが、総合スーパー事業をどう立て直していくかが注目されます。今後もこの業界の変化に期待したいと思います。

プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムで、原則火曜日掲載です。
窪田真之
楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジスト。1961年生まれ。84年慶応義塾大学経済学部卒業後、住友銀行(当時)入行。99年大和住銀投信投資顧問日本株シニア・ファンドマネジャー。2014年楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジスト、15年所長。大和住銀では日本株運用歴25年のファンドマネジャーとして活躍した。

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