株式投資というと、個人投資家には株主優待銘柄が人気です。特に消費者に身近な小売り関連の銘柄は、株主がお得に買い物できるようにするなど優待サービスを競い合っています。
イオンもそうした銘柄の一つです。同社は100株以上で買い物金額の3%をキャッシュバックする「オーナーズカード」を発行。持ち株が増えるとキャッシュバックの割合も上がる(最高7%)などの優待サービスを提供しており、個人投資家に根強い人気があります。本決算は2月なので、2月と8月の権利付き売買最終日までに株券を購入しておけば、こうしたサービスが受けられます。
イオンは今期2期連続の営業最高益の見通し
ただ、同社はこれまでいつも業績に不安がありました。主力のGMS(総合スーパー)事業が「ユニクロ」などの専門店やコンビニエンスストアなどに売り上げを奪われて、衰退していくイメージを払拭できなかったからです。
ところが、そんなイオンに変化が見られます。2018年2月期の連結決算は営業利益が前の期比14%増の2102億円となり、12年2月期以来、6年ぶりに最高益を更新したのです。続く19年2月期の連結営業利益も前期比14%増の2400億円との予想を示しており、連続で最高益を更新する見通しです。
グループ会社の再編にコストがかかり、特別損失が出るので、前期の連結純利益は前の期比2.2倍の245億円に拡大しましたが、最高益には届いていません。今期の連結純利益も前期比43%増の350億円と、営業利益(2400億円)と比較して、かなり低い水準にとどまります。
買収したダイエーなどの不採算店の整理を含めグループ会社の再編にはまだ3~4年かかると予想されます。ただし、再編が完了すれば、いずれ純利益も最高益を更新するでしょう。
4月中旬の決算発表後、株価は急ピッチで上昇。6月11日までに8営業日続伸し、07年3月以来、約11年ぶりの高値を付けました。現在も高値圏にあります。その背景には機関投資家の買いがあるとみられます。多くの機関投資家は小売業では、専門店やコンビニはポートフォリオに組み入れても、イオンなどの総合スーパーは避けてきました。つまり、優待狙いの個人以外は買い手がいなかったわけです。今は、機関投資家がポートフォリオに入れてもいい銘柄になったと考えます。
総合スーパー中心の事業構造は変化
それでは一体、イオンにどんな変化が起きたのか。前期決算を詳しく見てみましょう。実は、イオンの前期決算は大手スーパーがコンビニに対抗して成長するビジネスモデルを完成したと思わせる内容でした。要するに、事業構造が変化したのです。