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芋焼酎・日本酒・ビール…食後の血糖値を抑えるのは?

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

芋焼酎といえば、鹿児島などの南九州を代表するお酒だ。鹿児島県民だけでなく、日本全国の多くの左党に愛されている。「糖質ゼロ」ということもあり愛飲している人も少なくないだろう。そんな芋焼酎にうれしい健康効果があるという論文が2016年に鹿児島大学から発表された。そこで今回は、この研究を統括した鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 特任教授の乾明夫さんに話を聞いた。

芋焼酎に新たな健康効果が!?

「鹿児島といえば芋焼酎」――。

左党であれば、多くの方がこう考えるほど、鹿児島と芋焼酎の関係性は深い。鹿児島で「酒」といったら日本酒ではなく、芋焼酎のこと。以前鹿児島で行われた結婚式に出席した際、円卓に置かれた徳利の中には、日本酒ではなく、芋焼酎が入っていて、たまげたことがあった。まさに「地酒」とはこういうことを指すんだろうなあと思ったものだ。

薩摩隼人たちの飲みっぷりのよさにも驚いた。とにかくよく飲む。最初はビールからと思いきや、いきなり芋焼酎という方も珍しくない。3人も集まれば、あっという間に4合瓶(720mL)が空になる。芋焼酎はもちろん、食事もガッツリ食べるし、とにかく豪快。さすが西郷どんを生んだ鹿児島の男たちである。

西郷どんのイメージがあってか、ガタイのいい、どちらかというとBMI(Body Mass Index)高めの方が多いのかと思いきや、私が知る本格焼酎の蔵元たちは、いずれもスマート。やっぱり本格焼酎は「糖質ゼロ」[注1]だからだろうか? そういえばドクターの中には「肥満が気になる方は、日本酒より本格焼酎を飲みなさい」と勧める方もいる。

そんな芋焼酎にうれしい健康効果があるという研究結果が、2016年に地元・鹿児島大学から発表された(PeerJ. 2016; DOI 10.7717/peerj.1853.)。「食中酒として飲む芋焼酎は、他のお酒より食後の血糖値の上昇を抑制する」というのだ。本格焼酎に血栓を溶解させる働きがあることは、以前の記事でも紹介しているが、この話は初耳である。

ご存じの方も多いと思うが、血糖値とは血液中のブドウ糖の濃度を指す。血糖値が高い状態が続くのが糖尿病だ。インスリン[注2]の働きが悪くなり、血糖を細胞へ取り込むことが阻害されるため、血糖が高い状態が続く。こうなると、体内の大小の血管がダメージを受け、多くの合併症を罹患するリスクを負うことになる。

最近では、食後に一時的に高血糖になる、いわゆる「食後高血糖」のリスクも知られるようになってきた。糖尿病と診断されていなくても、食後高血糖になる人は心筋梗塞などの死亡リスクが上昇するという報告も出ている(Diabetes Care. 1999;22:920-924.)。

高血糖の人は左党にも多い。食中酒として優秀な芋焼酎が、食後の血糖値の上昇を抑えてくれるなんて、朗報以外の何ものでもない。

そこで事実を確かめるべく、今回の研究を統括した鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 漢方薬理学講座 特任教授の乾明夫さんに話を伺った。

[注1]焼酎に含まれる糖質は0g。同じ蒸留酒のウイスキーやウオッカも糖質0g。

[注2]インスリンは血糖値を下げるホルモン。

鹿児島は糖尿病死亡率が高く、肥満も多い

乾さんは、糖尿病や肥満、痩せ(やせ)が専門で、同時に鹿児島の食文化や、本格焼酎の健康効果などの研究を積極的に行っている。まずは研究の背景について聞いてみた。

先生、鹿児島大学は"芋焼酎のおひざ元"というのもありますが、なぜこのような研究をされようと思ったのでしょう?

「鹿児島大学は全国唯一の"焼酎学講座"が開設された大学で(現在は「焼酎・発酵学教育研究センター」)、焼酎についての研究も盛んに行われています。そして、私が糖尿病、肥満などを専門としていたことから、芋焼酎の健康面での機能性に注目しました。特に糖代謝にいい影響があるのではないかと考えたわけです。鹿児島は何を食べてもおいしいので、つい食べ過ぎてしまいます。さらに、車社会で慢性的に運動不足になりがちなので、実は肥満の方が多いのです」(乾さん)

確かに鹿児島の料理は基本的に甘い味付けのものが多い。名物のさつま揚げも甘いし、そもそも醤油自体が甘い。それでもって肉も魚もおいしくって(ご存じの通り鹿児島は畜産王国)、運動しないとなれば、そりゃ気を付けなければ太る。厚生労働省が2017年に発表した糖尿病の死亡率(人口10万人対)を見ると、何と鹿児島はワースト6位となっている(※2016年の人口動態統計のデータ)。こうしたバックグラウンドがあり、乾さんたちは芋焼酎の健康効果について研究を始めたわけだ。

大学のスタッフが郷土の宝・芋焼酎のために立ち上がる

まず、乾さんたちが行った研究の内容を説明しよう。今回の実験の被験者は30~50代の男女6人。「郷土の宝」である芋焼酎のため、鹿児島大学のスタッフが被験者となった。

今回測定したのは、食事(夕食)とともにお酒を飲んだ際の、食後の血糖値の変化だ。食事をすれば当然、食後に血糖値は上昇する。一緒に飲んだお酒の種類によって、これがどう変化するかを調べた。つまり、食中酒としての効果の違いを見ていこうというものだ。

芋焼酎との比較対象は、水、ビール、日本酒の3種。飲酒量は、芋焼酎(アルコール度数15%)は333mL、ビール(同5%)は1000 mL、日本酒(同15%)は333mLで、純アルコール量はいずれも40gと同等になるように調整してある。ちなみに、1日当たりの推奨飲酒量は、純アルコール量で20gなので、今回の飲酒量はほぼ倍と、ややアルコール量が多い印象だが、そこは酒豪が多い鹿児島ならではだろう。

飲酒後の血糖値の測定は1週間に1度実施した。検査日は鹿児島大学病院に入院してもらい、食事(約710kcal)とともにそれぞれのお酒を飲んでもらった。そして、食事前(空腹時)、食事1時間後、同2時間後、同12時間後の血糖値、インスリンの分泌量を測定した。同時に被験者の脳波も12時間計測した。

その結果が、右のグラフである。食事摂取後の血糖値の上昇は、ビールが最も高く、次に水、日本酒となり、芋焼酎が最も低くなった。乾さんは、「芋焼酎は、糖質・カロリーともにゼロの"水"より、血糖値の上昇が抑えられているのがポイントです。特に、食事1時間後という比較的早い時期での血糖値の上昇を抑えています」と話す。

「インスリンの分泌量を見ると、芋焼酎を飲んだ際のインスリン分泌量は最も少ないという結果になりました。この結果から、芋焼酎に含まれる何らかの成分により、インスリンの感受性がよくなり、糖の取り込みを促進させているのではないかと考えられるわけです」(乾さん)

乾さんは現在、血糖値抑制に関与していると思われる芋焼酎の成分の特定を進めている。複数の有効成分が考えられるそうだが、「研究途中で、現段階では特定できていません。特に、インスリンの感受性を高めると考えられる成分についてはまだ分かっていない」(乾さん)という。残念ながらその仕組みについてはまだ明らかになっていないわけだ。

どのくらい飲めば効果が出るのか?

なお、最近乾さんが注目している芋焼酎の成分の一つに、芋焼酎の香気成分の一つであるゲラニオールという成分がある。ゲラニオールは、植物のゼラニウムから発見された香気成分でバラのような香りがある。「ゲラニオールは、消化管ホルモンの一種であるGLP-1[注3]の分泌を介し、インスリンの分泌を促している可能性があります」(乾さん)

[注3]GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)は消化管ホルモンの一種で、インスリンの分泌を促す働きを持つ。さらに、胃からの排出を遅らせる働きがある。

芋焼酎の香気成分にはさまざまな効果が期待できそうだ。以前、本連載でも紹介したように、本格焼酎の香気成分であるβフェニルエチルアルコールが、血栓の溶解を促進させることも分かっている。また、乾さんの実験によると、芋焼酎の香気成分の一つであるリナロールは痛みを和らげる効果も期待できるという。

まだまだ分からないことが多いとはいえ、芋焼酎にはいろいろな面で健康効果が期待できそうだ。これで、安心して芋焼酎を飲むことができるというものだ。

しかし、左党として気になるのは、「どのくらい飲めば効果が出るのか?」ということである。

「やはり純アルコールにして20g(アルコール度数25度の本格焼酎に換算して100mL程度)、いわゆる適量をお勧めします。本格焼酎は低カロリーで糖質ゼロですが、やはり過ぎたるはなんとやら…です」(乾さん)

またしても「適量」か。実験での飲酒量は"多め"だったので期待していたが、現実は期待通りにはいかないようである(がっかり)。

◇  ◇  ◇

今後、乾さんは、芋焼酎に含まれる有効成分の特定を進めるとともに、蒸留方法、原材料など芋焼酎についてより詳しく検証し、機能性をより高めるための研究をしていく計画だと話す。

健康効果を考えなくても芋焼酎はおいしいものだが、有効成分が特定されたら今よりもっと飲むのが楽しくなりそうだ。今後の研究に期待したい。今宵(こよい)は早速、さつま揚げと芋焼酎で一杯やろう。もちろん「適量」を守って。

(エッセイスト・酒ジャーナリスト 葉石かおり)

乾明夫さん
 鹿児島大学大学院医 歯学総合研究科 漢方薬理学講座 特任教授。1978年、神戸大学医学部卒業。神戸大学医学部・大学院応用分子講座消化器代謝病学分野で講師、助教授、診療科長などを経て、2005年、鹿児島大学大学院、鹿児島大学病院教授。国際統合生命科学研究センター長、呼吸器・ストレスケアセンター長、漢方診療センター長を歴任。第3回日本肥満学会賞、第1回日本心身医学会池見賞、第10回米国消化器病学会ヤンセン賞などを受賞。

[日経Gooday2018年6月5日付記事を再構成]

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