日経DUAL

2018/6/21

DUALプレミアム

「疲労臭」は、しじみの味噌汁でやっつけろ

もう一方の疲労臭はアンモニアが原因です。疲れやストレスがたまったときにアンモニア臭を放ちます。いわば尿のような臭いです。

アンモニアが出やすくなる要因は、主に「腸内環境が悪い(動物性脂肪の摂り過ぎなど)」「筋肉が疲労している(営業の外回りなど)」「肝機能が落ちている(お酒の飲み過ぎなど)」の3つがあります。

対策としては、上記3項目の習慣を改善することに加え、アンモニアを肝臓で無毒化することで臭いを抑えることができます。そこで効果的なのが、しじみの味噌汁です。アンモニアは毒性が強いのですが、しじみに含まれるオルニチンが解毒を助けてくれるのです。

しじみの味噌汁を作るのが面倒であれば、インスタントのしじみの味噌汁や、オルニチンのサプリメントでも大丈夫です。この疲労臭と先述のミドル脂臭は、発生する場所は違っていても、どちらも「疲れ」が原因。併せて対策を取るようにしましょう。

●ポイント3
・「疲労臭」は疲れが原因
・しじみの味噌汁(オルニチン)で、アンモニアを解毒しよう

ミョウバン、重曹で作れる消臭スプレー

体臭は、皮膚から服をフィルターにして他人に伝わります。

そこで、消臭効果がある服を着れば、臭いを軽減させることができます。今では、ユニクロなどでも消臭機能があるインナーシャツや靴下が販売されています。こうしたものを積極的に活用するといいでしょう。

ただ、いつも消臭機能がある服を着られるわけではなかったり、もっと服で臭いを防ぎたいと思ったりすることもあるでしょう。その場合、ミョウバンか重曹を水に溶いて、霧吹きにして洋服に直接スプレーすれば、あらゆる服に消臭効果を付加することができます。

ミョウバンと重曹は、臭いに応じて使い分けてください。ミョウバンは酸性なので、疲労臭の原因になるアルカリ性のアンモニアに効き、重曹はアルカリ性なので、ミドル脂臭の原因となる酸性の乳酸に効きます。

実は怖い加齢臭。30~40代で臭うと病気の恐れ

さて、最後はよく知られる「加齢臭」です。これは、化粧品メーカーの資生堂がにおいの原因物質「ノネナール」を発見したことがきっかけで認知されるようになりました。臭いは、ミドル脂臭のような強烈なものではなく、ロウソクや図書館(古い本)のような臭いで、実はそれほど不快なものではありません。年配者と一緒にいる際、ほのかに感じたことがある方は多いでしょう。

さて、ここが重要なポイント。注意すべきは、30~40代で加齢臭が出た場合です。

加齢臭はその名の通り、本来「加齢」により臭うようになります。皮脂腺の中に、パルミトレイン酸と過酸化脂質という物質が増え始め、それが皮脂を酸化させて加齢臭の原因物質ノネナールが作られるのです。

しかし、比較的若い30~40代で加齢臭が感じられる場合、体内で生活習慣病が進んでいる恐れがあります。脂質の酸化が血管の中でも起きていると考えられるからです。

この場合は、臭いそのものより病気の心配をすることが重要になります。血液中のコレステロールや中性脂肪などの脂質が高いと、それらが酸化され過酸化脂質を増加させます。この過酸化脂質は動脈硬化を引き起こし、高血圧、心筋梗塞、脳梗塞などの生活習慣病を発病させるのです。

ちなみに加齢臭は、別名「メタボ臭」とも呼ばれています。そのため、30~40代の加齢臭対策はメタボ対策と全く同じ。暴飲暴食を防ぐ、運動不足にならないといったことが基本です。

食生活は、「動物性の脂肪を摂り過ぎない」「抗酸化作用のある食品を摂る」ように心掛けること。脂っこい肉を控え、野菜や果物を積極的に食べるといいでしょう。また、腸内環境を整えるため、毎日ヨーグルトを食べて善玉菌を増やすのも効果的。さらにオリゴ糖も併せて摂ると、腸内の善玉菌を育ててくれます。

【抗酸化作用のある食品】キャベツ、ゴマ、ショウガ、大豆(豆腐、納豆)、緑茶、など

【オリゴ糖を含む食品】ゴボウ、アスパラガス、タマネギ、ワカメ、ハチミツ、など

●ポイント4
・「加齢臭」はそれほど不快な臭いではない
・若い年代の「加齢臭」には生活習慣病の疑いが
・抗酸化作用のある食品、オリゴ糖を含む食品を摂るなど食生活の改善を

―― 体臭は、健康状態と密接に関わっていることが分かりました。30~40代男性が陥りやすいのは、「食生活の乱れ」と「運動不足」。両者の解消には、臭い対策に加え、健康維持のためにも積極的に取り組んでいきたいですね。

五味常明
 体臭・多汗研究所所長、五味クリニック院長。1949年、長野県生まれ。一橋大学商学部、昭和大学医学部卒業。昭和大学形成外科等で形成外科学、および多摩病院精神科等で精神医学を専攻。患者の心のケアを基本にしながら外科的手法を組み合わせる「心療外科」を新しい医学分野として提唱。ワキガ・体臭・多汗治療の現場で実践。ワキガの治療法として、患者が手術結果を確認できる「直視下はく離法(五味法)」を確立。『なぜ一流の男は匂いまでマネジメントするのか?』(かんき出版)など著書多数。

(ライター 北野啓太郎、写真 川田雅宏)

[日経DUAL 2018年5月15日付記事を再構成]