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カリスマの直言

米朝首脳会談 それでも市場は揺れ続ける(藤田勉) 一橋大学大学院特任教授

2018/6/11

米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩委員長は6月12日、初の米朝首脳会談に臨む=ロイター
「史上初の米朝首脳会談にもかかわらず、北朝鮮問題が解決する可能性は当面低いと考えられる」

 米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩委員長が6月12日に会談する。史上初の首脳会談により、米朝関係改善、そして北朝鮮の非核化の実現を期待したいところだが、筆者は当面、北朝鮮問題が完全に解決する可能性は低いと考える。国際金融市場が同問題に振り回される展開も長期にわたって続くだろう。その理由は、以下の通り3つある。

■北朝鮮は中国の安全保障上、最も重要

 第1は、中国が北朝鮮の金政権を全面的に支援しているからだ。自国の安全保障のためには、北朝鮮を現体制のまま維持することが最善だからだ。19世紀以降、中国は欧米列強や日本に侵攻され続けた。そこで戦後、中国はモンゴル、北朝鮮、ベトナム戦争における北ベトナムなどの衛星国をその影響下に置いた。特に、国境が首都北京から約1000キロしか離れていない北朝鮮は、中国にとって最も重要である。

 もし、金政権が崩壊し、韓国主導で南北が統一されたら、1953年に結んだ米韓相互防衛条約が存在するため、米軍が北朝鮮に駐屯することがあるかもしれない。中国国境近くの米軍基地に核兵器が配備されることもあり得ない話ではない。中国にとっては到底受け入れがたいことだ。つまり、金政権が続くことが中国の利益にかなうのである。

 第2は、北朝鮮が核開発を直ちに放棄する可能性は低いと思われるからだ。北朝鮮にとって核兵器は米国との唯一最大の交渉道具である。

 北朝鮮のミサイルと核開発の技術水準は実はたいへん高い。世界初の軍事用弾道ミサイルは、第2次世界大戦中にドイツが開発したV2ロケットである。そのドイツのロケット技術者は戦後、ソ連に連れて行かれ、ミサイル開発が始まった。1961年に、ソ連は世界初の有人宇宙飛行を成功させるなど、当時、その技術力は米国をしのぐものであった。

 このソ連のロケット技術が、北朝鮮が使うスカッドミサイルの原型である。さらに、旧ソ連時代から軍事産業が発達したウクライナは、2010年代に入って内戦状態にある。混乱に乗じて、ウクライナのミサイル技術が北朝鮮に提供されたといわれている。

 核開発の技術もソ連から供与された。1956年に、北朝鮮はソ連と原子力開発協定を結び、原子力発電の開発を始めた。これが、ウラン濃縮技術を可能とし、核兵器に転用された。さらに、90年代のソ連崩壊・ロシア危機などの混乱期に、北朝鮮がソ連の核技術を導入したとされている。

■ロシアは北朝鮮支援で米軍事力の分断を狙う

 北朝鮮はロシアと国境を接している。ロシアにとって、安全保障上、太平洋艦隊の基地であるウラジオストクは重要な拠点なので、隣接する北朝鮮が米国の影響下に置かれることはどうしても避けたい。また、ロシアが北朝鮮を適度に支援すれば、米国の軍事力を中東とアジアに二分させることができるため、戦略上、効果が高い。

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