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ピアニスト須関裕子 ソロCDデビューで新境地

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NIKKEI STYLE

室内楽の共演で定評のあるピアニスト須関裕子さんがソロCDデビューした。リスト編曲のシューマン「献呈」を弾きながら、ソロで新境地を開く抱負を語る。

須関さんは2001年、桐朋女子高校2年の時に第2回チェルニー=ステファンスカ国際ピアノコンクールで第1位になった逸材。ショパン弾きとして鳴らしたポーランドの世界的ピアニスト、ハリーナ・チェルニー=ステファンスカさん(1922~2001年)を審査員にして日本で開かれる国際コンクールだった。だが第2回大会を前にこの巨匠は亡くなり、彼女の娘が審査員を務めた。須関さんは優勝後、ポーランド各地で記念リサイタルを開き、10代で欧州デビューを飾った。桐朋学園大学音楽学部を卒業し、同研究科を首席で修了。室内楽や歌曲のピアノ伴奏でも高い評価を受け、共演者として引く手あまたの状況が続いている。バイオリニストの徳永二男氏やチェリストの堤剛氏ら大御所との共演が多い。

歌心あふれるロマン派ピアノ音楽の傑作選

中でも桐朋学園大学の前学長でサントリーホール館長でもある堤氏からの信望は厚い。2012年には堤氏と須関さんとの共演でアルバムCD「オリオン」(発売元マイスター・ミュージック)を出した。こうした実績を背景に、満を持して2月にリリースしたソロCDが「ラ・カンパネッラ」(同)だ。

「ソロとしては初めてのCDなので感慨深い。多くの方々に支えられて一枚の形になり、感謝の気持ちでいっぱいです」と須関さんは語る。経験豊富な実力派でありながら、こうした謙虚な姿勢が、多くの一流アーティストから共演者として声をかけられる理由の一つなのだろう。

ソロでのデビューCDとはいっても、揺るぎない演奏技術、音楽の自然な流れ、満ちあふれるほどの歌心を確かに聴ける一枚だ。CDの内容はロマン派ピアノ音楽の傑作選といったところ。リストの「パガニーニによる大練習曲第3番『ラ・カンパネッラ』」や「愛の夢 第3番」、ショパンの「ポロネーズ第6番変イ長調作品53『英雄』」や「スケルツォ第2番変ロ短調作品31」、シューマンの「アラベスクハ長調作品18」をはじめ、ピアノの詩人たちの名曲がずらり9曲も並ぶ。それぞれの曲によって叙情と情熱、気品と躍動の詩的世界が次々に繰り広げられていく。「学生の頃からの思い出の曲や、今弾きたいと思った曲、コンサートの際にリクエストの多かった曲を入れていったら、このようなピアノ名曲集みたいになった」と言って笑う。

 しかし「名曲集」であるがゆえの難しさもある。「有名な曲には名録音もたくさんあるので、演奏には勇気が要る。今の自分にできること、今感じていることを演奏に出すようにという気持ちでレコーディングに臨んだ」と語る。

軽やかさと躍動感のあるダンサブルな表現

CDを最初に聴いた印象としては、どの曲も丁寧に弾いているが、どこか控えめな雰囲気ということだ。端正に仕上げられているが、驚きは少ない気がした。しかし繰り返し聴いているうちに、彼女の演奏が各曲をいかに自然体で浮かび上がらせているかが分かってくる。奇をてらった演奏とは対極にある。繊細な音色による細部の描写と、曲全体への一貫したアプローチを両立させ、作品の本質を浮き彫りにする姿勢だ。「非常に素直な演奏。しかも曲を深く追求している」とレコーディングを担当したマイスター・ミュージック(横浜市)社長で、ドイツ国家資格「ディプロム・トーンマイスター(音楽音響の最高責任者)」を持つプロデューサーの平井義也氏は指摘する。

さらに感じられてくるのは、構造的には打楽器の一種であるピアノをまさにリズム楽器として捉え、間合いの取り方やリズムの刻み方を楽しんでいるようなダンサブルな表現だ。それはショパンの作品で顕著だ。「バラード第3番変イ長調作品47」や「舟歌嬰ヘ長調作品60」はダンス音楽と思えるほどだ。軽やかでしなやかなリズムのタッチが聴き手を穏やかで楽しげな舞踏会へといざなう。

「ショパンの音楽は甘美といわれるが、実は芯が強い。舞踏のリズム、美しさと力強さ、それにポーランドの民族色が好きだ」。そして「ショパンとシューマン」の2人を特に好きな作曲家として挙げる。須関さんは幼少時にバレエも習っていた。桐朋女子高校と桐朋学園大の講師を務めるが、そこでは「ナンバリズミック」という一種の体操も教えている。「体の使い方で音も変わる。曲や音色のイメージによってどんな体の使い方をしたらいいか考えている」。曲とピアノの性格に応じて、鍵盤に向かうピアニストの「舞踏」の形も変わってくるのだ。

軽やかさ、しなやかさと躍動感を併せ持つ須関さんのピアノ演奏をチェリストの堤氏が絶賛するのも分かる気がする。堤氏のライフワークの一つがJ・S・バッハの「無伴奏チェロ組曲第1~6番」全曲演奏であることと関係しているかもしれない。バッハの「無伴奏チェロ組曲」こそ、穏やかで和やかな雰囲気の中で舞踏のリズムの妙を楽しむ音楽であるからだ。

 今回の映像では、東京都調布市の桐朋学園大学仙川キャンパスの一室で須関さんがリスト編曲のシューマン「献呈」(作品25の1)を練習する様子が捉えられている。「大学を卒業してから演奏をリクエストされて、それから譜読みを始めて、コンサートで何度か弾いてきた曲」と言う。シューマンが結婚の前日に、妻となるクララに「献呈」した歌曲が原曲だ。「(ショパンに比べて)シューマンの音楽はより人間的に感情をそのまま吐露する。リュッケルトの詩もロマンチックで愛にあふれている。やっとクララと結婚できるというシューマンの喜びや幸福感をリュッケルトの詩に重ね合わせて作曲した」と須関さんは解説する。

幸福感を増すリスト編曲のシューマン「献呈」

ドイツの詩人で東洋学者でもあったフリードリヒ・リュッケルト(1788~1866年)は、例えば岩波文庫の「ドイツ名詩選」(生野幸吉・檜山哲彦編)にも登場しないほど文学史ではあまり重視されていない。しかしクラシック音楽史上では欠かせない詩人である。特にロマン派の作曲家たちが自らの歌曲にリュッケルトの詩を好んで使った。19世紀前半のシューベルトやシューマンから始まり、20世紀前半のリヒャルト・シュトラウスに至るまで、リュッケルトの歌の世界が広がっている。マーラーの2つの歌曲集「亡き子をしのぶ歌」「リュッケルトの詩による5つの歌」は特に有名だ。

「献呈」は愛する人への思いをストレートに歌い上げた詩だ。この歌曲をリストが編曲したピアノ独奏曲はどんな音楽だろうか。「リストらしいピアニスティックで、華やかできらびやかなパッセージがたくさんあり、シューマンの幸福感がさらに増幅されている」と須関さんは弾いていて感じるようだ。CDにも収録した「献呈」は、明るく穏やかな歌の旋律を繰り返すうちに、幸福感が増していくピアノ曲だ。さらに最後にはシューベルトの「アヴェ・マリア」のメロディーが2回登場する。「シューマンの神聖な気持ちも表している」と指摘する須関さんは、この曲の持つ高揚感を力むことなく、自然な流れで気品を持って描いている。

今後はソロと室内楽の双方に精力的に取り組んでいく構えだ。「ソロとアンサンブルの両方で弾くとどちらにもいい影響が出る。一人の作曲家を別の視点で見ることができる」。6月16日にソフィアザールサロン駒込(東京・北)、同28日には紀尾井町サロンホール(東京・千代田)でソロリサイタルを開く。

8月17日には堤氏とも縁の深い軽井沢大賀ホール(長野県軽井沢町)での「軽井沢国際音楽祭」にも参加し、バリトンの河野克典氏とシューベルトの連作歌曲集「冬の旅」でピアノ伴奏者として共演する。「自分では選ばないような作曲家や作品も共演者と一緒に学べる。アンサンブルで経験したことをソロに生かしたい」と歌曲や室内楽への取り組みの利点を語る。ソロと室内楽を両翼にして彼女のピアノが歌い舞う。

(映像報道部シニア・エディター 池上輝彦)

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