不足栄養を抹茶カプセルで ネスレ健康サービスの威力

日経トレンディ

本格展開から約8カ月で会員9万人突破
本格展開から約8カ月で会員9万人突破
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2017年10月からネスレ日本が本格展開を始めた、栄養素入りの抹茶やミルクのカプセルの定期購入サービス「ネスレ ウェルネス アンバサダー」。簡単な質問に答えるだけで自分に足りない栄養素が分かる仕組みを整え、僅か8カ月で累計9万会員を突破している。2018年の「マーケター・オブ・ザ・イヤー」で大賞を受賞したネスレ日本の津田匡保氏に同サービスの仕組みや今後の展望を聞いた。

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津田匡保Eコマース本部ダイレクト&デジタル推進事業部部長。2002年、ネスレ日本に入社。営業などを経て、12年に「ネスカフェ アンバサダー」を立ち上げ。現在はネスレ通販の運営や「ウェルネス アンバサダー」などの新規事業を担当

専用カプセルなどの定期購入を条件に、1杯抽出型のコーヒーマシンを職場などに無料で貸し出す「ネスカフェ アンバサダー」。2012年のサービス開始から、18年3月までで累計40万会員を突破しており、「マーケティング巧者」として知られるネスレ日本を代表する成功モデルとなった。

この定期購入サービスをベースに、健康軸を新たに打ち出したのが、「ネスレ ウェルネス アンバサダー」だ。ビタミンやミネラル、コラーゲンなどがそれぞれ入った抹茶やミルクの専用カプセルを定期購入することで、抽出用マシン「ネスカフェ ドルチェ グスト」が無料で使える仕組み。17年10月からファンケルとの共同プロジェクトとして本格展開を始めると、こちらは一般家庭も対象とあって、僅か8カ月で累計9万会員を集める好スタートを切った。

健康ジャンルに切り込むに当たって、ネスレは仕掛けを用意した。同社のサイトや、ネスレ会員IDと連係させたLINE上で、食事や生活習慣に関する簡単な質問に答えるだけで、自分に不足しがちな栄養素を含むカプセルがレコメンドされる。また、LINEトークに食事の写真を送ると、管理栄養士のアドバイスを受けられ、ここでも推奨カプセルがわかる。

「食事チェック」は、肉や魚の摂取量など6つの質問、生活習慣は普段の運動量など28の質問に答えると、抹茶など8 ~ 11種類から最適なカプセルを推奨
カロリミットは「食べたい気持ちを応援する」ファンケルの人気商品コラボ。REDは肉、魚、卵、大豆などの主菜の摂取が少ない人向け。YELLOWは主菜、副菜、果物の摂取が少ない人向けなど

これまで多くの人が、「自分に足りない栄養素は何か」が判然としないままサプリメントや特定保健用食品(トクホ)などに頼ってきた。それに対し、ウェルネス アンバサダーは、その日に足りない栄養素を「見える化」し、個々人の健康にかなうようにしたわけだ。「日本人の健康意識は高まっていても、日常生活を問題なく過ごせる健康寿命はあまり延びていない。この問題に解決策を提示したことが響いた」(津田氏)という。

これに、まず反応したのは健康を気にする40~50代の男女で、個人会員が4割程度を占める。コーヒーカプセルなどを追加する人も多く、通常のアンバサダーに比べて1人当たりの購入額は約1.5倍に跳ね上がった。

そして実は、ネスレが狙うのは「ど真ん中」の中高年だけではない。健康に関心を持ち始める20~30代も取り込もうと5月末から始めたのが、各種健康サービスの無料化だ。例えば、前出のLINEを使った食事分析サービスを会員以外にも開放。従来は送られた画像の栄養分析やアドバイスの入力は人間が行っていたが、ソニーの画像解析技術を用いて瞬時に届ける。ダイエットや美容など、最初にユーザーが設定した目的に応じてアドバイスを行い、「データを蓄積して数百万通りに達する組み合わせのなかから、商品のレコメンド精度も高めていく」(津田氏)構えだ。

18年5月末からは、入り口となる健康サービスを無料化。LINEアカウントで食事の写真を送ると、自動解析で瞬時に食事のアドバイスと栄養分析が届き、自分に合ったネスレ商品もわかる
LINE上で足りない栄養素を確認可能

さらに、外部の健康サービス企業との連携も進める。遺伝子解析で国内トップの実績を持つジェネシスヘルスケアや、自宅でできる血液検査キットの「おうちでドック」を展開するハルメク・ベンチャーズと協力。ウェルネス アンバサダーにそれぞれの「特別定期コース」を設け、加入者は各検査を実質無料で受けられる。「糖尿病や肥満のリスクなど、会員はより詳しく自分の健康状態を把握できる。ネスレが細かなデータを握るわけではないが、おおよその傾向からでも食事指導などでより的確なアプローチが可能」(津田氏)という。

さらに、ネスレ日本はアクサ生命保険とも提携。両社の協力によりウェルネス アンバサダー会員の増大を目指す他、膨大な健康データを生かして新たな医療保険やヘルスケアサービスの創出につなげたい構え。「今後も健康軸で提携企業を増やす予定」(津田氏)という。つまり、ウェルネス アンバサダーは従来モデルの単なる派生形ではなく、新しい健康プラットフォームでパーソナル化を窮めようとしている。

(日経クロストレンド 勝俣哲生)

[日経トレンディ2018年7月号の記事を再構成]

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