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World Food Watch

ナス料理だけで180種類 世界三大料理のトルコ料理

2018/6/7

東京・阿佐ヶ谷の人気トルコ料理店「イズミル」のオーナーシェフ、エリフ・アガフルさん トルコ料理の名門組織、トルコ調理師協会の日本代表として腕をふるう

 東京大学の本郷キャンパスの学食にこの4月、トルコ料理のドネル・ケバブが登場し、話題を呼んでいる。ドネルは回転する、ケバブは焼いた肉のこと。長い串に牛や羊などの薄切り肉を刺して回転させながら焼くもので、東京の街角でもこれを売る店や移動販売車をよく見かける。東大のケバブは、新設されたイスラム教の戒律に沿って処理・調理したハラル食を提供するコーナーで出すもので、すこぶる人気らしい。

 トルコ料理といえば、フランス料理、中華料理と並ぶ世界三大料理の一つ。歴史的経緯から中央アジアから地中海沿岸まで東西の食文化が融合する。かつてビザンツ帝国(東ローマ帝国)やオスマン帝国の首都が置かれたイスタンブールでは、宮廷文化が栄え、手の込んだ料理の数々も生み出されてきた。

 ところが、ドネル・ケバブ人気とは裏腹に、日本ではあまりトルコの食が知られていない。ケバブ以外に思い付く料理を挙げて、と言われたらおそらく多くの人が挙げるのはカップアイスにもなった、トルコの伸びるアイスぐらいじゃないだろうか。三大料理の一角をよく知らないなんて、なんともったいない。そこで、トルコ料理の神髄を聞こうと、駐日トルコ大使夫人インジ・メルジャンさんを訪ねた。

最近は日本でもドネル・ケバブ店をよく目にする 昨年11月には新宿で「ケバブグランプリ」が行われ、日本のケバブ店が腕を競った 写真は出展した「ケバブカフェ エルトゥールル」(東京・中野)

「トルコ料理は過小評価されているんです」と口火を切った大使夫人がまず話してくれたのは料理のバラエティーの豊かさだ。

「ナス料理一つとっても180種はあります。朝食だって、色々な種類のペイストリーやパンがあり、やはり種類豊富なチーズや、オリーブ、卵、フルーツ、野菜、ソーセージなどを食べる。週末には家族でレストランにブランチを食べに出たりしますが、100種類を超える選択肢があったりするんですよ」と説明する。

 日本では、ブルガリアが「ヨーグルトの国」として知られているが、実は起源はトルコという説もある。ヨーグルトという言葉の語源はトルコ語でこれを意味する「ヨウルト」とも言われ、同国ではこの食材を使った料理も多彩なのだ。

 これまで50カ国を訪れたという大使夫人だが、「トルコの主婦は、他国では見たことがないくらいの料理上手」と胸を張る。「トルコでは、『料理なんて全然知らない』と言う主婦でも、最低50種類の料理ができます」と言うのだ。大使夫人自身、トルコの食について聞くと、目の前にあるレシピを見ているかのように、様々な料理の材料や調理の方法をすらすらと教えてくれる。

「日本の食はすばらしいと思いますが、ナスを買いに行くと、数本パッケージにして売っている。形も全部そろっていて、『これ、お人形遊び用かしら?』と思います。トルコでは、キロ単位で野菜や果物を買いますから」。それだけ、皆が家庭で腕をふるい料理を作るということなのだろう。

 大使夫人のお薦めのトルコ料理を食べるべく、東京・阿佐ヶ谷のトルコ料理店「イズミル」を訪れた。腕をふるうのは、オーナーシェフのエリフ・アガフルさん、トルコ料理の名門組織、トルコ調理師協会の日本代表である。2002年に板橋で店をオープン、ほどなく移転して今年で15年目になる。

 実はアガフルさんは、調理師学校で勉強をした料理人ではない。店で出す料理は、料理上手のお母さんや知人に教わったり、自らレシピを研究したりしたものだ。お母さんは、たった30分で6種類もの料理を作ってくれるほどの腕前だという。大使夫人に「イズミル」を薦めてくれた理由を聞くと「女性シェフが手がけていて、作りたての家庭料理のようなんです」と話していた。トルコの人にとっておいしい家庭料理の作り手は、プロの料理人に肩を並べる存在なのだろう。

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