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ナス料理だけで180種類 世界三大料理のトルコ料理

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東京大学の本郷キャンパスの学食にこの4月、トルコ料理のドネル・ケバブが登場し、話題を呼んでいる。ドネルは回転する、ケバブは焼いた肉のこと。長い串に牛や羊などの薄切り肉を刺して回転させながら焼くもので、東京の街角でもこれを売る店や移動販売車をよく見かける。東大のケバブは、新設されたイスラム教の戒律に沿って処理・調理したハラル食を提供するコーナーで出すもので、すこぶる人気らしい。

トルコ料理といえば、フランス料理、中華料理と並ぶ世界三大料理の一つ。歴史的経緯から中央アジアから地中海沿岸まで東西の食文化が融合する。かつてビザンツ帝国(東ローマ帝国)やオスマン帝国の首都が置かれたイスタンブールでは、宮廷文化が栄え、手の込んだ料理の数々も生み出されてきた。

ところが、ドネル・ケバブ人気とは裏腹に、日本ではあまりトルコの食が知られていない。ケバブ以外に思い付く料理を挙げて、と言われたらおそらく多くの人が挙げるのはカップアイスにもなった、トルコの伸びるアイスぐらいじゃないだろうか。三大料理の一角をよく知らないなんて、なんともったいない。そこで、トルコ料理の神髄を聞こうと、駐日トルコ大使夫人インジ・メルジャンさんを訪ねた。

「トルコ料理は過小評価されているんです」と口火を切った大使夫人がまず話してくれたのは料理のバラエティーの豊かさだ。

「ナス料理一つとっても180種はあります。朝食だって、色々な種類のペイストリーやパンがあり、やはり種類豊富なチーズや、オリーブ、卵、フルーツ、野菜、ソーセージなどを食べる。週末には家族でレストランにブランチを食べに出たりしますが、100種類を超える選択肢があったりするんですよ」と説明する。

日本では、ブルガリアが「ヨーグルトの国」として知られているが、実は起源はトルコという説もある。ヨーグルトという言葉の語源はトルコ語でこれを意味する「ヨウルト」とも言われ、同国ではこの食材を使った料理も多彩なのだ。

これまで50カ国を訪れたという大使夫人だが、「トルコの主婦は、他国では見たことがないくらいの料理上手」と胸を張る。「トルコでは、『料理なんて全然知らない』と言う主婦でも、最低50種類の料理ができます」と言うのだ。大使夫人自身、トルコの食について聞くと、目の前にあるレシピを見ているかのように、様々な料理の材料や調理の方法をすらすらと教えてくれる。

「日本の食はすばらしいと思いますが、ナスを買いに行くと、数本パッケージにして売っている。形も全部そろっていて、『これ、お人形遊び用かしら?』と思います。トルコでは、キロ単位で野菜や果物を買いますから」。それだけ、皆が家庭で腕をふるい料理を作るということなのだろう。

大使夫人のお薦めのトルコ料理を食べるべく、東京・阿佐ヶ谷のトルコ料理店「イズミル」を訪れた。腕をふるうのは、オーナーシェフのエリフ・アガフルさん、トルコ料理の名門組織、トルコ調理師協会の日本代表である。2002年に板橋で店をオープン、ほどなく移転して今年で15年目になる。

実はアガフルさんは、調理師学校で勉強をした料理人ではない。店で出す料理は、料理上手のお母さんや知人に教わったり、自らレシピを研究したりしたものだ。お母さんは、たった30分で6種類もの料理を作ってくれるほどの腕前だという。大使夫人に「イズミル」を薦めてくれた理由を聞くと「女性シェフが手がけていて、作りたての家庭料理のようなんです」と話していた。トルコの人にとっておいしい家庭料理の作り手は、プロの料理人に肩を並べる存在なのだろう。

店で大使夫人に教えてもらったナス料理の豊かさについて聞くと、「トルコはナスの種類も豊富で200品種もあるんですよ」とアガフルさん。「イズミル」には、大使夫人が好きだと聞いたナス料理の一つ「イマム・バユルドゥ」があった。

イマムはお坊さん、バユルドゥは卒倒するという意味で、お坊さんが卒倒するほどおいしい料理というわけ。揚げナスにナイフで切れ目を入れ、そこにオリーブオイルでソテーしたタマネギなどを詰めてから、上にシシトウ、トマトを載せオーブンで焼いた料理。「イズミル」のこれには、爽やかな風味の香草ディルがトッピングされている。

野菜料理なのにボリューム感があり、じゅんわり複雑な野菜の甘みが口の中に広がる。イマム・バユルドゥは前菜だが、揚げナスに様々なスパイスで味付けしたひき肉やタマネギのソテーを詰めた料理もトルコで人気のナス料理。こちらは、バターライスを添えて出すメイン料理だ。

トルコ料理の前菜は「メゼ」と呼ばれ種類が豊富で、やはりナスを使った「パトルジャン・エズメ」も定番料理の一つ。焼いたナスの皮をむき、オリーブオイル、ニンニク、塩、レモンと合わせたメゼで、ナスは細かく切ってペースト状にする店もあるが、「イズミル」では素材の味がより感じられるよう大きく切っているため食感がいい。焼いたナスの香ばしい香りが鼻をくすぐり食欲をそそる一品だ。

ホウレンソウとヨーグルトを使った「ウスパナック・タラマ」、トマト、赤ピーマン、青ピーマン、キュウリ、タマネギを刻んで混ぜ、トウガラシを入れてピリ辛に仕上げた「アジュル・エズメ」などのディップもあり、色彩も鮮やか。店のメニューを見ていると、メイン料理に行きつくまでに前菜だけで目移りしてしまい、世界三大料理と言われるトルコの実力を実感する。

一方、大使夫人に「イズミル」のお薦め料理を聞いたときに、真っ先に挙がったのは、「ラフマージュン」と呼ばれる「トルコ風ピザ」だった。「イズミル」でも人気の料理だ。夫人によれば、小さなサイズのものはメゼにもなるらしい。

同店のラフマージュンはサイズが大きなメイン料理で、小麦粉で作った薄い生地の上に牛ひき肉(ラム肉の合びきを使うこともある)や細かく刻んだトマト、タマネギ、青ピーマンを載せて焼く。これでトマトとルッコラを巻いて食べるのだが、カリカリに焼かれた生地とフレッシュ野菜の組み合わせがやみつきになりそう。

イタリアのピザはそれだけでお腹がいっぱいになるので実はあまり得意ではないのだが、ラフマージュンは軽くお腹に入り、ほんのりピリ辛の味付けで、お酒がすすむ一品。アガフルさんは、「トルコ風ピザではなく、『ラフマージュン』と覚えて欲しい」と念を押した。確かにピザとは別感覚で食べる料理だ。

最後に出してもらった大使夫人のお薦めは、ドネル・ケバブ。「移動販売店とレストランで食べるドネル・ケバブは違います。それを味わってみてください」と言っていた。ドネル・ケバブはトルコ人もよく食べる料理で、家庭では作らない外食料理。大使夫人お墨付きの「イズミル」の味の秘けつはその手間にあるようだ。

まず、3ミリ程度に薄切りにした牛肉の周囲の脂を切り取り、大きなトレイに肉を並べてソースに漬け込み一晩寝かせる。それから適宜切り取った脂を挟みながら、薄切り肉を串に刺していく。串に刺した肉の塊ができたら、最後にその上にまた脂を載せてから焼く。こうすると、脂っぽくならずバランスのいい味わいになるという。

レストランのドネル・ケバブの定番の付け合わせは、バターライス、タマネギのスライスと焼きトマト。タマネギには、日本のゆかりのような酸味のある実を乾燥させた中東でポピュラーなスパイスであるスマックをあえる。

「肉と一緒に食べて」とアガフルさんに勧められるままこれらを合わせて食べると、スマックの酸味がいいアクセントになり、牛肉の肉々しい味わいを楽しみながら、口の中はさっぱり。よく見ると、付け合わせのバターライスには、ムギを使ったコメのような形のパスタが混ざっていて、コメ文化とムギ文化が出合った世界の縮図のよう。こんなところにも広大な土地を支配してきたトルコの文化の片りんがのぞく。

ちなみにドネル・ケバブと同じ肉を使った料理には、トルコ北西部のブルサという町の名物である「イスケンデル・ケバブ」というものもある。これは、小さく切ったパンの上に肉を載せヨーグルトとトマトソースをかけた料理で、最後に熱々のバターをかけて出す。

以前、これを食べたときはバターの香りが立ち上がり食欲をかきたてられた上、ヨーグルトの酸味でボリュームがある肉料理なのに「いくらでもお腹に入るかも」思ったものだ。

「どんな料理でも、おいしさの決め手は『愛情』です」とアガフルさんは言う。ただ料理を出すだけではなく、客が満足したかどうかを常に気にかけ、料理を残すようなことがあれば理由をたずねる。そして、日本に伝えたいトルコの「本物の味」を変えることはなくても、店の料理を楽しんでもらうためできる範囲でのことをするのがアガフルさんのこだわりだ。家庭の味にこもる愛情。それこそが、トルコ料理の最大のスパイスなのかもしれない。

(フリーライター メレンダ千春)

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